営業現場で何度も見てきたことがある。社長自身の振る舞いが商談の成否を左右する場面だ。
商品は素晴らしい。品質も高い。にもかかわらず商談で信頼を得られない話を何度も聞いた。
営業は商品を売る場である前に人が人を判断する場だ。第一印象の積み重ねが将来の取引を決める。
そもそもマナーとは形式の話ではない。相手に安心感を与え、信頼を積み重ねるための行動だ。
この考え方を軸にすれば、すぐに改善できる項目がいくつも見えてくる。
まず名刺の扱い方だ。
名刺は相手の分身と考えると扱いが丁寧になる。相手から名刺を受け取ったらすぐにしまわずに、
机の上に置き相手の名前を口に出して確認する。その一言で場の空気が変わる。
受け取った名刺を大事に扱う姿勢は、その後の会話に現れる。
身だしなみは簡単に整えられる改善点だ。
現場の作業着のまま訪問することもあるだろう。現場感を示すことは良い。
だが商談では経営者として見られていることを忘れてはならない。清潔感のあるジャケット一枚で印象は大きく変わる。
見た目は商品以前に人としての信頼を築く道具になる。
時間の扱い方は信頼に直結する。
約束の10分前に到着する(自分は30分前行動ですよ)。会議室での待ち時間はスマホを見ずに資料を静かに確認する。
商談は短めに区切ると効果的だ。集中が高まり内容がまとまりやすい。相手の時間を大切にする姿勢は評価に繋がる。
話し方は聞く力がすべてを変える。
社長は自分の商品への思いが強いから話が長くなる傾向がある。だが商談で優先すべきは相手の話を引き出すことだ。
担当売場の特徴や最近の売れ筋を尋ねるだけで、相手の表情は変わる。相手が話すほど提案の精度は上がる。
聞く力は社長の最も強い武器になる。
声のトーンと話すテンポも調整してほしい。
声が大きすぎると圧に感じられることがある。相手の声に合わせてトーンを少し抑えると距離感が縮まる。
バイヤーは一日に多くの商談をこなす。心地よいペースで話す社長は印象に残る。
言葉遣いは丁寧さを忘れないことだ。
初対面では敬意を示す表現が役に立つ。自己主張よりも相手を立てる言い回しを選ぶと会話がスムーズになる。
柔らかい言葉は信頼を作りやすい。
食品業界特有のマナーとしてサンプルの扱い方がある。
サンプルを渡すときは相手の手元にそっと差し出す。開封が必要な場合は一言確認してから開ける。
試食を勧める際は相手に選択肢を与える表現にする。押しつけに感じさせないことが重要だ。
商談での資料は相手の状況に合わせて簡潔にする。
資料をただ見せるだけなら効果は薄い。売場の傾向や価格帯に触れ、相手が求める情報を最初に提示する。
具体的な導入イメージを伝えると検討が早くなる。
フォローの方法も勝負を分ける部分だ。
商談後のメールや電話は早めがよい。提案から一週間以内の連絡が理想だ。
検討期限や次のステップを明確に伝えておくと相手は判断しやすくなる。返信が遅いと案件は埋もれてしまう。
担当者の対応は会社の評価に直結する。
社長の振る舞いだけでなく、社員教育も欠かせない。名刺の扱い方や電話の受け答えは基本中の基本だ。
現場での所作が普段から備わっている会社は信頼を得やすい。
商談に行く前の準備は実務の差を生む。
相手の取り扱い商品や価格帯、決裁者の構成を事前に調べておく。取り扱い棚や過去の発注パターンが
わかれば提案の角度が変わる。準備量がそのまま提案の精度に跳ね返る。
クレーム対応もマナーの一部だ。
商品に問題が出たときの初動が信頼を守る。迅速に連絡を入れ、原因と対策を明確に示す。
責任を回避する姿勢は信用を失う。問題は誠実に受け止め、解決に向けた行動を示すことが重要だ。
商談で使う言葉は過度に専門的にしない方が良い。
技術的な話は相手の理解度を確認しながら進める。専門用語で相手を置いてきぼりにすると信頼は生まれない。
わかりやすさを優先する姿勢が安心感を生む。
商談の終わり方も大切だ。
名残惜しさを残さない。要点を短くまとめ、次の行動を確認する。そして笑顔で見送る。
見送りの一礼は心の余裕を示す。最後の印象は次回につながる。
日常のマナーは習慣で変わる。
毎朝のミーティングで一つだけマナーを確認する。名刺交換の手順や電話応対の基準を短時間で共有するだけで、
現場の対応は確実に変わる。継続が力になる。
マナーは売上に直結する投資だ。
見た目や所作にかける時間は無駄ではない。短期的には目に見えにくいが長期的には信頼とリピートを生む。
店頭での扱い方と同じように、社長の所作は商品価値を引き上げる。
今日からできるチェックリストを紹介です。
相手より先に座っていないか
相手が名刺を差し出す前に自分の名刺を出していないか
相手の話を最後まで聞いているか
笑顔で見送っているか
この四つを日常的に意識するだけで印象は変わる。簡単な行動の積み重ねが、商談を気持ちよく終わらせる習慣を作る。
店頭で商品が丁寧に並べられていると買いたくなる。
商談でも同じ。社長の所作が整っている会社は、相手にとって取り引きしやすい相手になる。
マナーは商品を守る盾であり、信頼を育てる土壌でもある。
営業マナーは難しいルールではない。
相手を立てるという基本姿勢を日々の行動に反映するだけでよい。できることから一つずつ取り入れてほしい。
今日の商談から一つだけ試してほしい。
名刺を受け取ったら相手の名前を声に出して確認すること。
たったそれだけで場の空気が変わる。
マナーの積み重ねが取引の継続を生む。
静かな力だが確実に結果を変える。まずは自分の動作を見直すことから始めよう。
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