2025年の夏、日本各地で記録的な暑さが観測されている。7月下旬には北海道の北見市で39.0℃、帯広市で38.8℃と、これまでの常識を覆す気温が記録された。関東や関西でも猛暑日(35℃以上)が連日続き、熱帯夜(25℃以上)も増加。都市部ではヒートアイランド現象も加わり、日中はもちろん夜も暑い状態が続いている。
この暑さは、食品業界にとって逆風になることもある。配送現場の温度管理、人手不足、営業活動の制限など、どれも悩ましい問題だ。ここで一歩立ち止まりたい。この異常な暑さは、販路開拓にとって大きなチャンスでもある。
猛暑が生み出す「新たな需要」は見逃せない
暑さは人々の購買行動に大きな影響を与える。たとえば、食欲がない、火を使いたくない、冷たいものを食べたいといったニーズは、暑い夏だからこそ高まる。これは単なる感覚ではない。実際に消費動向を見ても、冷やして食べる食品、常温でも美味しい惣菜、夏バテ対策の健康食品などが、夏場に売上を伸ばしている。
ある東北地方の水産加工会社では、これまで煮魚や炊き込みご飯用の加工食品を主力としていたが、冷やしてそのまま食べられる酢漬けセットを開発。これが地元の道の駅でヒットし、前年比170%の売上増につながった。特別な広告は打っていない。ただ、冷やして食べられる、夏にぴったりという言葉が、売れる理由になったのだ。
また、九州の漬物メーカーでは、冷凍してシャーベット状で提供できる甘酢大根の新商品を開発。冷たくてさっぱりしていると評判になり、SNSでの拡散によって県外からの注文が急増した。猛暑はマイナス要因ではなく、むしろ企画の切り口として有効に機能している。
営業が動けない今こそ、差がつく販路開拓の好機
暑さは営業現場にも影響を与える。日中の商談は減り、訪問活動は最小限にする企業も多い。展示会でも来場者が少ないといった声もある。これは一見マイナスに思えるが、他社が止まっている今こそ、自社が一歩動けば目立つという意味でもある。
北海道のある漬物メーカーでは、営業担当が移動を最小限にしつつも、ZoomやLINEを活用したオンライン商談に切り替えた。冷やし浅漬け特集の資料を事前に送付し、取引先との接点を継続した結果、夏季限定品の新規取り扱いが全国5店舗で決定。暑さを逆手に取った動きが、販路開拓につながった。
中小企業にとって、こうした暑さの中でもアプローチを工夫しながら継続できるかどうかが、大手との差を縮める鍵になる。営業が止まりがちな今だからこそ、一通のメール、一枚の企画書が大きな成果につながる可能性がある。
売り手と買い手、両方が「理由」を欲している
販路開拓では、味がいい、素材がいいだけでは決め手にならない。特に、バイヤーは常に売れる理由を探している。つまり、いま、なぜこれが売れるのかという背景が重要になる。
今年の夏は、その背景がはっきりしている。
・この暑さで食欲が落ちた方におすすめ
・冷やして食べてもおいしい
・電子レンジを使わずすぐ食べられる
・水分・塩分補給にもなる
こうしたフレーズがあるだけで、商品の魅力が倍増する。バイヤーにとっても売り場での打ち出しがしやすい、チラシやSNS投稿に使いやすいといった判断材料になり、採用されやすくなる。
ある関西圏のスーパーでは、「冷やして食べる」コーナーを店舗内に常設し、全国のメーカーから集めた「涼感食品」の売上が前年比1.4倍になった。そこに並んでいたのは、大手メーカーだけでなく、地方の中小食品メーカーの個性的な商品も多かった。文脈と打ち出し方さえしっかりしていれば、バイヤーは前向きに動くのだ。
気温と販促を連動させるという考え方
近年、広告やマーケティングの現場では気温連動型の販促が注目されている。気温が一定以上になるとキャンペーンが発動する仕組みで、コンビニや飲料メーカー、チェーン飲食店でも導入が進んでいる。
食品メーカーにとっても、この考え方は大きなヒントになる。
たとえば、気温30℃以上の日は冷やしておいしい商品をSNSで紹介したり、熱中症アラートが出たタイミングで水分補給・塩分補給食品のセットを特集したり、店頭POPを天気や気温に応じて切り替えるといった仕掛けが可能になる。
実際に、気温と連動した売り方は、消費者の共感を得やすく、購買行動につながりやすい。商品を変えずとも、「この時期に買うべき理由」が明確になるのだ。
暑い夏は販路を切り拓く起点になる
2025年の夏は、異常な暑さにより、従来の営業スタイルや売れ筋が大きく変化している。だがその一方で、暑さをきっかけに販路開拓に成功している企業も増えている。
・商品開発においては、冷たい、軽い、簡単といった視点
・営業活動では、オンライン商談や温度に応じたアプローチの導入
・提案文や販促物には、今年の暑さを売れる理由として明記する
こうした工夫を重ねることで、猛暑はむしろ味方になる。
暑いからこそ動かない選択もあるが、暑いからこそ売れる理由をつくるという視点に立てば、新しい販路はきっと開けてくる。2025年のこの夏を、「売れない言い訳」ではなく「売れるきっかけ」に変えていこう。
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