食品会社の社長が知っておきたい「ギブ&テイク」の正しい考え方


食品会社の社長と話していると、よく出てくる悩みが「どうすればバイヤーと良好な関係を築けるか」というものです。
どれだけ品質の高い商品をつくっても、信頼関係がなければ販路は広がりません。
ここで重要になるのが「ギブ&テイク」という考え方です。

ただし、この言葉を間違って理解している方が多くいます。
「こちらが与えたのだから、相手も返すべきだ」と考えてしまうと、かえって関係はこじれてしまいます。
この記事では、食品会社や農家の社長が営業で成果を出すための「ギブ&テイクの正しい考え方」を、実例を交えて解説します。

ギブ&テイクの誤解:「与えたらすぐ返してほしい」

「ギブ&テイク」と聞くと、
「こちらがサンプルを提供したのだから、発注してほしい」
「うちが販促に協力したのだから、売場を広げてほしい」
といった期待を持ってしまいがちです。

営業は貸し借りのやりとりではありません。
相手にすぐリターンを求めると「負担を押しつけられている」と感じさせ、信頼を損ねてしまいます。

正しい「ギブ&テイク」の考え方3つ

販路開拓において大切なのは、短期的な見返りを求めずに「ギブを積み重ねること」です。
具体的には次の3点が基本です。

  1. 見返りを求めない
    与えた瞬間にリターンを期待しないこと。
    たとえば試食サンプルを渡したら、その場で注文を迫るのではなく「ぜひ味を見てください」と
    伝えるだけに留めることです。
  2. 相手に負担をかけない
    バイヤーの仕事を増やさない工夫が信頼につながります。
    「販促ツールはこちらで用意しました」「発注は小ロットから対応できます」といった配慮があるだけで、
    相手は安心して取引を考えられます。
  3. 与え続ける
    ギブは一度だけでは効果が薄いものです。
    定期的に市場情報を伝える、販促の事例を共有する、季節ごとの提案をするなど、長期的に積み重ねることで
    「頼りになる会社」と認識されます。

事例1:北海道の野菜農家の取り組み

北海道のある野菜農家は、地元で採れたトマトやアスパラガスを都市部のスーパーに売り込みたいと考えていました。
最初は「新鮮でおいしいから扱ってほしい」と熱意を伝えましたが、すぐに取引にはつながりませんでした。

そこで農家の社長は発想を変えました。
「売ってください」というお願いではなく、バイヤーにとって役立つ情報や提案をギブすることに集中したのです。

  • スーパーの販売データを研究し、「夏場にアスパラの需要が高まる時期」を伝える
  • 店頭での試食イベントを自分たちで準備し、農業体験を絡めたストーリーを提供する
  • 収穫の様子を写真や動画にして、POPやSNS販促に使える素材を渡す

このように「相手の負担を減らす」「与え続ける」姿勢を貫いた結果、少しずつ信頼が積み上がりました。
最終的には「この農家の野菜なら安心して仕入れられる」と評価され、北海道から都市部への定期出荷が
実現したのです。

事例2:洋菓子メーカーの展示会

ある洋菓子メーカーは展示会に3年連続で出展しました。
最初の2回はほとんど成果が出ませんでしたが、3回目にようやく大手百貨店のバイヤーから声を
かけてもらいました。

洋菓子メーカーの社長が心がけたのは「ギブの継続」です。
毎回ていねいに試食を提供し、商品の改良点を説明し続けました。
「一度きりの出展では信頼は生まれない」と考え、長期戦を覚悟して挑んだ結果、百貨店での催事出店に
つながりました。

バイヤーは「与えられた安心感」で動く

食品バイヤーは常に多くの商談を抱えています。
その中で選ばれる会社は「安心して取引できる」と思わせてくれる存在です。

  • 納期を守る
  • クレームに迅速に対応する
  • 追加販促を自ら提案する
  • 小さな要望でも誠実に応える

こうした行動はすべて「ギブ」であり、相手にとって安心材料となります。

今すぐ実践できる「小さなギブ」

食品会社の社長がすぐに取り入れられる「ギブ」の例を挙げてみます。

  • 季節商品の売場提案を、バイヤーが動く前に先回りして出す
  • 取引先の店頭を視察し、「お客様の声」を簡単にまとめて共有する
  • 自社の商品を使ったレシピを提案し、SNSで発信してもらいやすい形で渡す
  • 新商品の開発段階から試食会を開き、取引先の意見を反映させる

これらはどれも大きなコストをかけるものではありません。
こうした小さなギブの積み重ねが、長期的な信頼と販路拡大につながります。

短期的な成果よりも「関係性の蓄積」

食品会社や農家の社長にとって、すぐに成果を出したい気持ちは当然です。
営業で本当に価値を持つのは「関係性の蓄積」です。

ギブを続けることで、相手の中に「この会社は信用できる」というイメージが少しずつ根づきます。
1回の商談で決まらなくても、将来の取引や新しい販路のチャンスは必ずやってきます。

まとめ

食品会社の社長が販路を広げるためには、「ギブ&テイク」を正しく理解し実践することが欠かせません。

  • 見返りを求めない
  • 相手に負担をかけない
  • 与え続ける

この3つを心がければ、自然と信頼関係が育ち、売上や新しい販路拡大につながります。
「まずは与える」という姿勢こそ、食品会社や農家が未来を切り開く第一歩なのです。


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