「ランチェスター戦略」という言葉を聞いたことがある社長も多いと思います。
もともとは戦争の兵力差を分析する理論から発展したものですが、経営の世界でも非常にシンプルで
使いやすい戦略モデルとして広く知られています。
中小企業にこそ適しており、特に食品業界のように競合が多い市場では役立ちます。
食品会社の社長が新しい販路を切り開く際、「自社は大手に比べて弱者だから不利だ」と感じることはないでしょうか。
けれどもランチェスター戦略を理解すれば、弱者には弱者に合った戦い方があることがわかります。
今日はその具体的な内容と、中小食品会社が現場でどう活かせるのかを整理してみます。
強者と弱者のシンプルな定義
ランチェスター戦略では「市場シェア」を基準に立場を区分します。シェア1位が強者、2位以下は弱者。
とても単純な分け方ですが、ほとんどの中小食品会社は全国規模で見れば弱者に属します。
ある社長から「うちは弱者だから負け組だ」と言われたことがありますが、それは誤解です。
弱者は「負け組」ではなく「シェア1位ではない立場」というだけです。
実際には弱者だからこそ取れる戦略があり、それを正しく使えば十分に勝ち残れます。
弱者が取るべき基本戦略
強者は市場全体を相手に総合力で戦います。広告宣伝費、営業部隊、流通網すべてを
駆使して市場シェアを広げていきます。
一方で弱者の基本は「差別化」と「ニッチ市場の攻略」です。大手と同じ土俵で戦うのではなく、
狭い市場で自社の強みを徹底的に発揮し、そこでトップを取る。これが弱者の生きる道です。
食品業界で言えば、全国区の商品を大量に出すことは難しいですが
「特定地域限定」「特定ターゲット向け」の商品であれば勝負できます。
事例1:ソースメーカーの挑戦
ある中小のソースメーカーは、全国で流通する大手のソースに正面から挑んでも勝てません。
そこで彼らは「高級ホテルやレストラン専用の業務用ソース」に集中しました。
一般家庭向けではなく、プロの料理人が使う場面にターゲットを絞ったのです。
結果として「このホテルの洋食は必ずあのソースを使っている」と評価され、安定した販路を確保しました。
さらにその実績を武器にして高級スーパーの限定販売にも広げることができました。
これはまさに弱者がニッチでトップを取った例です。
事例2:瓶詰めメーカーの選択
ある瓶詰めメーカーは、ジャムや漬物で大手と競っても埋もれてしまうと判断しました。
代わりに観光地の土産物市場を徹底的に狙いました。
「観光地の駅や空港にしか置かない商品」「地域のフルーツを使った季節限定の瓶詰め」といった戦略です。
観光客にとっては「ここでしか買えない」という付加価値が魅力となり、価格が高くても売れる商品になりました。
このように小さな市場に集中してナンバーワンを取ると、大手が簡単に参入できない強みを築けます。
事例3:豚肉加工品メーカーの戦略
ある豚肉加工品メーカーは、ハムやソーセージ市場で大手と同じラインに並べば価格競争に巻き込まれると考えました。
そこで選んだのは「ギフト需要」と「外食産業向け専用品」でした。
百貨店のギフトカタログに合わせた高付加価値の詰め合わせセットや、飲食店シェフの要望に応えるオリジナル加工品。
量産はできなくても、「ここにしかない味」を求める顧客には強い支持を得ました。
大手は効率を重視するため、少量で手間がかかる商品にはなかなか対応できません。
そこを逆手にとるのが弱者の戦い方です。
中小食品会社に必要な発想
大手は売上規模を追いかけます。シェア拡大のために利益を犠牲にすることもあります。
中小企業はそこに付き合う必要はありません。むしろ「規模ではなく安定利益」を優先するべきです。
全国展開をせずとも、特定地域でシェアを取れば安定経営は可能です。
例えば「関西の高級スーパーでは必ず扱われるブランド」「関東の土産物市場で知名度が高いメーカー」といった
存在になれれば、それだけで十分強いのです。
弱者が実践すべき具体ステップ
では社長が明日からできる実践の一歩を整理しておきます。
- 自社の強みを棚卸しする
→ 原材料、製造方法、品質基準、ストーリーを洗い出す。 - 競合を調べる
→ 価格帯、流通先、商品ラインナップを比較し、勝てる切り口を探す。 - ターゲット顧客を絞る
→ 健康志向層、ギフト需要、業務用など明確に設定する。 - 市場を小さく区切る
→ 全国ではなく「特定地域」「特定チャネル」に集中する。 - シェアを確保する
→ 小さな市場で1位を目指し、その地位を守る。
この流れを実践するだけでも、弱者の戦い方は形になります。
ランチェスター戦略の本質
弱者の戦略の本質は、大手と正面から戦わないことです。広告費、流通網、知名度で勝負しても勝てません。
だからこそ「自分の土俵をつくる」ことが重要です。
一点突破で市場を攻略し、その領域でナンバーワンを取る。それが積み重なればやがて会社全体の基盤は強くなり、
大手に左右されない存在になります。
まとめ
ランチェスター戦略は、中小食品会社に最も適した経営の考え方です。
全国市場でシェア1位を目指すのではなく、差別化とニッチ市場でトップを取る。
ソースメーカーがホテル専用に絞った事例、瓶詰めメーカーが観光市場を狙った事例、
豚肉加工品メーカーがギフト需要に集中した事例は、すべて弱者の戦略を体現しています。
食品会社の社長にとって大切なのは「規模より利益」「数より固定ファン」。
この発想を持ち、資源を集中して取り組むことで、会社は必ず強くなっていきます。
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