展示会や商談会、地域の経済セミナーなどで、食品会社の社長が登壇する機会は増えています。
「自社の取り組みを紹介してほしい」「地域の成功事例を話してほしい」と依頼を受けることも多いでしょう。
最初は戸惑っても、一度経験すれば「思っていたより反響が大きい」と感じる社長がほとんどです。
登壇や講演は、単なる広報ではありません。
会社の信頼をつくる絶好の営業活動であり、聞き手に直接「会社の姿勢」を伝える最短の方法です。
それを理解している社長ほど、限られた時間をどう使うかを徹底的に考えています。
今回は、登壇経験が少ない社長でも印象に残り、信頼される話し方のコツを3つ紹介します。
1 時間を守る
人気講師に共通しているのは、話のうまさよりも「終了時間を守る」ことです。
聴衆は予定時間の中で集中力を保っています。どんなに興味深い内容でも、
5分延びると頭が切り替わり、印象は薄れてしまいます。
食品展示会や商談でも同じです。バイヤーは限られた時間の中で何十社もまわります。
「この社長は話がわかりやすく、時間感覚もしっかりしている」と思われれば、それだけで信頼度が上がります。
実際、話が長いよりも「少し余裕を残して終わる」ほうが、相手に余韻を与えます。
時間を守るというのは、単なる礼儀ではなく「聴く人の時間を尊重する」という姿勢です。
これこそが、トップに求められる信頼の源です。
2 専門用語を使いすぎない
食品の現場では専門用語が多く出てきます。
たとえば「糖度」「歩留まり」「粘度」「発酵温度管理」など。
社内では当然の言葉でも、消費者・記者・金融機関の担当者には伝わりません。
「難しい話をする=すごい人」ではありません。
聴衆が理解できる言葉に置き換えて話せる人こそ、本当に伝える力を持っています。
たとえば、「糖度が高い」ではなく「同じ甘さでも砂糖を使わず自然な味に仕上がる」
「歩留まりがいい」ではなく「原料を無駄にせず、環境にもやさしい製造」と言い換える。
こうした言葉の変換は、商談や展示会の現場でも強力な武器になります。
さらに、社長が平易な言葉で説明すると、社員の理解も深まります。
現場スタッフが社長の話し方を真似るようになると、会社全体の発信力が底上げされます。
話し方は、企業文化そのものを変える力を持っています。
3 エピソードで伝える
数字や理論だけでは、人の心は動きません。
人は「誰が、どんな経験をして、どう感じたか」に心を動かされます。
社長が自分の言葉で語るエピソードは、それだけで聴衆の記憶に残ります。
たとえば、試作品を何度も失敗した話。
展示会で初めて大手バイヤーに褒められた瞬間。
社内で意見が割れたが、最後は一丸になって完成させた商品。
そんな具体的な話を添えるだけで、聴き手は「この会社は本気でやっている」と感じます。
経営者としての信頼は、商品説明ではなく「人間としての誠実さ」から生まれます。
だからこそ、登壇の場で社長が自分の経験を語ることには大きな意味があります。
4 聞き手を主役にする
多くの社長が見落としがちなポイントです。
講演は「自分の話をする場」ではなく「相手に気づきを与える場」です。
聴衆が「自分にもできる」「自社にも応用できる」と感じた瞬間に、講演は成功です。
そのためには、「皆さんの会社ならどう活かせると思いますか?」という問いかけを交えるとよいでしょう。
会場全体が一体化し、印象が強く残ります。
特に食品業界では、社長の発言がそのまま企業イメージになります。
聞き手にとって、社長が「上から話す」よりも「同じ立場で語る」ほうが信頼につながります。
5 姿勢と表情もメッセージの一部
どんなに内容が良くても、表情が硬いと伝わりません。
笑顔やうなずきは、会場の空気をやわらげる力を持っています。
社長が落ち着いたトーンで話すだけで「安心感」が生まれ、商品や会社への信頼にもつながります。
また、立ち方やマイクの持ち方も大切です。
姿勢が整っているだけで、話の説得力が増します。
講演は「立ち姿も含めた発信」です。
6 社員への影響
社長が登壇する姿を見た社員は、強い刺激を受けます。
展示会やセミナーで社長が真剣に話している姿は「うちの社長、かっこいい」と感じさせます。
その感情が、社員の行動を変えます。
登壇後に「社長の話を聞いて、営業のやり方を変えた」「あの話をお客様に伝えた」という社員が増えるほど、
会社全体の士気は高まります。
つまり、登壇は外への発信であると同時に、内への影響力も大きいのです。
まとめ
講演や登壇は、社長が自社の信頼を直接築ける貴重な機会です。
時間を守り、やさしい言葉で語り、自分の経験を添える。
その3つを意識するだけで、聞き手の反応は見違えるように変わります。
そして、話す力はそのまま営業力になります。
展示会での3分プレゼン、商談での5分説明、どれも社長の話し方ひとつで結果が変わります。
「話す」という行為は、経営そのものです。
聴く人を大切にし、伝える姿勢を磨くことが、販路を広げる第一歩です。
今日からできることは、話の順序を整理し、短く、明るく、誠実に伝える練習をすること。
それだけで、次に登壇する機会が来たとき、社長の言葉が人の心を動かす力を持ちます。
食品会社の社長こそ、語るべき物語があります。
その物語を自分の声で伝えることが、何より強いブランドづくりにつながります。
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