食品業界では、価格競争がますます激しくなっています。
スーパー、通販、催事、どの売場でも「安く売ること」が前提のようになっています。
同業者の動きを見て値下げをすれば、一時的に売上は上がるかもしれません。
しかし利益は確実に減り、社員も疲れ、ブランド価値まで下がります。
まさに体力消耗戦です。
価格競争を避けるためには、二つの考え方が必要です。
一つは「売り込まない勇気」。もう一つは「違いを見せる工夫」です。
この二つを徹底すれば、価格を下げずに選ばれる会社になります。
まず、「価格競争から抜け出す」とはどういうことか。
それは、相手の判断基準を“価格”から“信頼”に変えることです。
この転換ができるかどうかで、会社の未来は大きく変わります。
食品会社の場合、味や素材で差をつけるのは限界があります。
技術が広がり、情報が公開される時代です。
だからこそ、取引先が安心できる「対応力」と「信頼関係」で差をつける必要があります。
取引先の立場で考えてみましょう。
バイヤーは毎日何十社もの提案を受けています。
価格が少し安い会社よりも、連絡が早く、対応が丁寧で、納期が正確な会社を選びます。
それが人間心理です。
ここに、価格競争を避ける5つの基本があります。
1.納期の正確さ
2.連絡や返事の早さ
3.商品の知識と提案力
4.アフターフォロー
5.営業担当者の印象・話し方
この5つを徹底すれば、価格ではなく信頼で選ばれます。
特に営業担当者の印象は非常に大きいです。
味が同じなら、最後に決め手になるのは人です。
では、現場で実際にどう違いを出すか。
第一は「取引先の仕事を楽にすること」です。
バイヤーや卸担当者の負担を減らすことができれば、自然に信頼が生まれます。
発注書のやり取りをスムーズにする、見積もりを即日返信する、納期の変更に柔軟に対応する。
これだけで、「助かる会社」として印象が残ります。
第二は「取引先の顧客を意識すること」です。
百貨店なら上品なギフト層、スーパーならファミリー層、ホテルなら料理人。
最終消費者を想定して提案するだけで、提案の精度が上がります。
「この商品なら御社の売場に合う」と言えるかどうかが分かれ目です。
第三は「ブランドを意識すること」です。
食品会社にとってのブランドとは、安心して取引できる会社という信頼そのものです。
商品だけでなく、パンフレット、Webサイト、営業資料、名刺のデザインまで統一感を出してください。
こうした細部が取引先の評価を左右します。
第四は「営業しない営業」です。
これは“聞く力”を使う営業です。
相手に話してもらい、課題を聞き出し、その解決策を後日提案します。
強く売り込まず、信頼で引き寄せる営業。
食品業界ではこのスタイルが最も結果につながります。
第五は「地域性を生かした発信」です。
地方の食品会社ほど、地域の資源や物語を持っています。
原材料の産地、職人の手仕事、製造背景。
この「語れる強み」を整理して発信することで、価格ではなく物語で選ばれるようになります。
商品が同じでも、「背景を伝える」ことで印象は大きく変わります。
ここで、実際の事例を紹介します。
ある醸造メーカーは、周囲が値下げ競争に走る中、「熟成期間の見える化」を始めました。
味噌樽ごとに仕込み日をラベル表示し、品質管理体制を公開したのです。
その結果、価格を下げずに取引量が増えました。
「信頼」で選ばれるようになった典型例です。
もう一社の飲料メーカーは、営業資料の表紙に「御社の棚で動く理由を3つご提案します」と書きました。
単なる商品紹介ではなく、相手の課題解決提案に変えたところ、商談率が倍になりました。
これも価格以外の価値をつくった好例です。
値下げをして取引を取ることは簡単です。
ただし、次にまた安くしなければ続きません。
それでは経営が持ちません。
大切なのは「値段を守る覚悟」を持つことです。
価格を下げる勇気ではなく、価格を守る信念です。
価格を守る企業は、どこかに「哲学」があります。
それは品質でも、信頼でも、地域でも構いません。
「なぜこの価格なのか」を説明できる企業は、結果的に長く続きます。
社長自身がその軸を持つことが、価格競争を避ける最大の武器です。
さらに、信頼関係を広げるもう一つの方法があります。
それは「紹介の連鎖」です。
取引先を紹介したり、共同で催事を行ったり。
その小さな支援の積み重ねが、ブランド力を強くします。
価格ではなく関係で選ばれる企業は、紹介が増えていきます。
食品業界は、人と人の関係で動く世界です。
味や品質だけでは続かない。
価格で勝負する時代から、関係で選ばれる時代に変わっています。
社長に伝えたいのは、「値下げで勝つより、関係で選ばれる会社になれ」ということです。
そのために、社員教育や営業ルールも信頼基準で整えてください。
たとえば「約束を守る」「報告を早くする」「感謝を言葉にする」。
この3つができれば、自然と価格競争から離れられます。
値段は市場が決めますが、信頼は自社で決められます。
信頼が積み上がれば、価格は守れます。
価格を下げずに選ばれる会社を、ぜひ目指してください。
ありがとうございました。
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