いま、街を歩くと冷凍食品の自動販売機をよく見かけます。
飲食店の前だけでなく、スーパーの駐車場、レジャー施設、駅前、住宅街など、設置場所が一気に広がりました。
少し前までは珍しかった光景が、今や日常になりつつあります。
日本自動販売システム機械工業会の調べによると、2022年12月末時点で全国の食品自動販売機は約7万7,700台。
前年比6.7%増という伸びで、特に冷凍食品を扱う自販機が市場を引っ張っています。
たった1年でこれだけ増えるというのは、食品流通の形が変わってきた証拠です。
もともと冷凍自販機は、個人経営の飲食店が始めた取り組みでした。
営業時間外でも販売できる、固定客に夜間販売ができる、そんな「副収入」の位置づけでした。
それが今では、スーパーやコンビニの空きスペース、コインランドリーやキャンプ場の入口などに設置が広がっています。
一部の自治体では観光客向けに「地元名物を買える冷凍自販機」をまとめたマップまで登場しました。
この動きは、一過性のブームではありません。
背景には、全国的な人手不足があります。
店舗を開けるにもスタッフが集まらない。
24時間営業を続けるには人件費がかさむ。
その中で「無人で販売できる冷凍自販機」が注目されるのは自然な流れです。
一度設置すれば、在庫補充とメンテナンスを除けば人件費がほとんどかかりません。
長期的には人を雇うよりもコストを抑えられるため、経営の合理化にもつながります。
また、購入者にとってもメリットがあります。
「対面で買う気まずさがない」「気軽に試せる」「24時間いつでも買える」
この3つの要素が、冷凍自販機の人気を支えています。
特に最近では、ブランド冷凍食品や高級スイーツを扱う機械も増え、
「自販機で買える楽しさ」が一種の体験価値になっています。
食品関連の展示会でも、この分野の熱気は高まっています。
冷凍技術や省エネ型の機械だけでなく、「地域ブランドをどう見せるか」という提案が目立ちます。
たとえば、地方の水産加工業者が「地元の名物」を冷凍化して都市部に設置したり、
農産加工品を観光地の駐車場で販売したりと、これまでになかった流通の形が生まれています。
食品会社にとって、冷凍自販機は「新しい販路の入り口」です。
ネット通販や卸売と違い、顧客の反応が見える。
販売データを通じて、「どの場所で」「どんな商品が」「どの時間帯に」売れているのかを把握できる。
これほど現場感覚を持てる販路は、意外と少ないのです。
ここで、社長に考えていただきたいのは3つの視点です。
一つ目は「小ロットでの実験」。
冷凍自販機は、数万円単位で始められるケースもあり、大規模投資が不要です。
まずは自社商品の中から人気の冷凍総菜やスイーツを選び、地元の商業施設などでテスト販売すること。
販売データを基に次の展開を決める。
このスモールスタートの発想が、販路開拓の第一歩になります。
二つ目は「卸先との連携」。
既存の取引先がスーパーやコンビニであれば、その駐車場や空きスペースへの設置を提案してみることです。
店舗側も新たな集客手段を求めており、協力関係を築きやすくなっています。
「うちの商品を使った自販機コーナーを設けませんか?」という提案が、次の取引のきっかけになります。
三つ目は「ブランド発信の場として活かすこと」。
冷凍自販機は、商品を売るだけでなく、24時間看板を出しているのと同じです。
商品のデザイン、パッケージ、価格帯、配置でブランドの印象が変わります。
SNSでの拡散やメディア取材も狙いやすく、販促効果は想像以上です。
一方で、課題もあります。
売れる場所の見極め、在庫管理、機械メンテナンス、電気代などを考えると、
「置けば売れる」というほど簡単ではありません。
成功している会社ほど、設置場所を戦略的に選んでいます。
住宅街よりも、夜間に人通りがある場所。
観光地や駅近く、地域住民の散歩コースなど、日常導線を読む力が必要です。
また、冷凍自販機に向く商品とそうでない商品もあります。
ポイントは「調理が簡単で、すぐ食べられるもの」。
たとえばラーメンや餃子、カレー、スープ、スイーツなど。
逆に、湯せんやレンジ加熱に時間がかかる商品は、販売後の満足度が下がる傾向があります。
商品の選定段階から「買った人の使い方」を想定しておくことが重要です。
冷凍自販機市場はまだ成熟していません。
だからこそ、いま参入した会社がリードを取れます。
どの地域にも空きスペースはあり、機械メーカーや代理店も導入支援を強化しています。
自社だけで抱え込まず、協業の発想で進めると成果が出やすいでしょう。
そして、この分野で最も重要なのは「スピード感」です。
展示会で見かけてから半年後に検討では遅い。
小さく試し、数字を見て改善する。
この動きを早く回した会社が、市場を押さえています。
冷凍自販機は、単なる販売手段ではなく、リアルとデジタルをつなぐ販路です。
SNSと連動させて商品紹介を行えば、ファンづくりにもつながります。
また、QRコードを貼るだけで、リピート注文や通販誘導も可能です。
一つの自販機が、実店舗・通販・SNSの中継点になる時代です。
人手不足の時代だからこそ、無人の販売チャネルをどう活かすか。
食品会社にとって、それは経費削減ではなく「新しい出会いの仕組みづくり」です。
冷凍自販機は、これからの販路開拓における有効な一手。
社長自身が最初の一歩を試すことで、次の展開が見えてきます。
———————————————————————————————
顧問契約・セミナー・取材のご相談
→ご相談・お問い合わせフォーム
食品会社の社長向けPDF教材の販売
→教材購入はこちら(STORES)
