利益を削る「安売り」の罠から抜け出すために


食品会社の経営者として、売上を伸ばすことは常に重要な課題ですよね。
その中で「価格を下げれば、もっと売れるのではないか」と、安売りの誘惑にかられた経験は誰しも一度はあります。
価格競争が激化する現代において、他社より少しでも安くすることで、お客様の心をつかもうと
考えるのはごく自然なことです。

安売りは本当に御社を成長させてくれる最善策でしょうか。

結論からお伝えすると、安売りや過度な値引きは、短期的には売上を伸ばすように見えても、
長期的には会社の体力をじわじわと削っていく行為です。

まるで、自転車をこぐために、自分の足元を少しずつ削っていくようなものです。
一時的なスピードは出るかもしれませんが、いつか走れなくなってしまいます。

安売りをしない経営がなぜ大切なのか、そしてどのように安売りから脱却するのか。
今回はその具体的な方法について、食品会社の社長であるあなたへ向けて、深く掘り下げてお話しします。

安売りがもたらす3つのデメリット:なぜ安売りは危険なのか
安売りが会社に与えるダメージは、単に利益が減るだけではありません。目に見えない部分で、
より深刻な影響を及ぼします。

  1. 会社の利益が減り、未来への投資ができなくなる
    安売りをすれば、当然ながら商品の利益率は下がります。利益率が下がると、手元に残る現金が少なくなります。
    この「手元に残る現金」こそが、会社の成長を支える最も重要な資源です。

例えば、新しいヒット商品を開発するための研究開発費、最新の衛生管理設備を導入するための設備投資、
そして優秀な人材を獲得・維持するための人件費や教育費。これらはすべて、会社の未来を築くための「投資」です。
安売りで利益を削り続けていると、これらの投資ができなくなってしまいます。

競合他社が新しい商品を次々と発表する中で、自社だけが古い商品や設備を使い続けることになれば、
どうなるでしょうか。市場での競争力はどんどん失われ、やがて時代に取り残されてしまいます。
安売りは、会社の成長を自ら止めてしまう、自殺行為にも等しいのです。

  1. ブランド価値が下がり、顧客が離れていく
    「あの会社の商品はいつも安い」というイメージは、一見するとお客様に喜ばれる良いことのように思えます。
    同時に「安さがウリの会社」というレッテルを貼られることにもつながります。

お客様が商品を「安いから」という理由だけで選ぶようになると、競合がさらに1円でも安い商品を売り出した瞬間に、
あっさりと乗り換えられてしまいます。そこには、商品に対する愛着や、会社に対する信頼はありません。

本来、食品は「安心・安全」が最も重要な価値であり、その価値こそがお客様との長期的な信頼関係を
築く基盤となります。安売りを続けていると、「なぜこんなに安いの? 品質は大丈夫なの?」
お客様に不信感を与えかねません。自社の商品が持つ本来の価値を、自ら下げてしまうことになります。
ブランド価値の低下は、一度失うと取り戻すのが非常に困難な、取り返しのつかないダメージなのです。

価格が安いほど消費者は不安になるんです、催事で実感してます!
100円のお菓子:「なんでこんなに安いの?だいじょうぶ?」
500円のお菓子:「ちゃんと作っているんですね」

  1. 社員のモチベーションが低下し、離職率が高まる
    毎日一生懸命に働いて、安全でおいしい商品を作り、お客様に届けようと努力している社員たち。
    会社が価格競争に巻き込まれ、利益が減っていくことで、社員の給料や賞与が上がらない状況が続いたら、
    どう感じるでしょうか。

「こんなに頑張っているのに、報われない」
「なぜうちの商品は安売りばかりするんだ」
「せっかく作っても儲からない」

こうした不満は、社員のモチベーションを著しく低下させます。働く人々の誇りややりがいが奪われてしまうと、
生産性が下がるだけでなく、優秀な人材から順に会社を離れていくことになります。特に、食品業界は職人の技術や
長年の経験が重要になる場面が多いため、ベテラン社員の離職は会社にとって大きな痛手となります。

安売りは、会社を支える最も大切な資産である「人」までも疲弊させ、会社の未来を蝕んでいくのです。

では、安売りをしないためにはどうすればいいのか?
安売りのデメリットは理解できたけれど、「でも、実際どうすればいいんだ」と悩んでいる社長も多いでしょう。
安売りから脱却し、適正な価格で商品を販売していくためには、次の2つの視点が非常に重要です。

  1. 営業の「売り方」を変える:価格ではなく「こだわり/ストーリー」を売る
    価格を下げることしかできない営業は、もはや時代遅れです。なぜなら、価格を下げることは誰にでもできるからです。

営業マンに本当に求められるのは、お客様に「この商品は他とは違う」と心から納得してもらえるだけの「価値」を
伝える力です。例えば、以下のようなポイントをお客様に具体的に説明できるかが鍵となります。

商品のストーリーを伝える:
どのようにしてこの食材が作られたのか。
どんな人が、どんなこだわりを持って製造しているのか。
なぜこの調理法や製法にこだわっているのか。

お客様の課題を解決する提案をする:
単に商品を売るのではなく、「この商品を使えば、お店のこんな課題が解決できます」という具体的なメリットを提示する。
たとえば、飲食店のオーナーであれば、「この食材を使うことで、調理時間を短縮でき、人件費を削減できます」といった
提案です。

営業マンが「御社の商品は安売りをしなくても売れるんだ」と自信を持てるよう、会社全体で商品の価値を再認識し、
それを伝えるためのツールや研修を整えることが、社長の重要な仕事です。

  1. 新しい販路に挑戦する:安売りを求めない市場を開拓する
    既存の取引先から、常に値引き交渉をされて、断りきれずに安売りをしてしまっている、
    という状況に陥っている社長も少なくないでしょう。
    地元のスーパー、道の駅、JAなど関係が深いところに価格をあげて販売するのは難しいですね。

そんな時は、既存の取引先との関係を維持しつつも、新しい販路を開拓することを真剣に検討すべきです。
お客様の層が変われば、価格に対する考え方も大きく変わります。

百貨店や高級スーパー:
「品質」や「ストーリー」を重視するお客様が多く、安売りを求められることは少ないです。
高級ホテルやレストラン:
料理の質を追求するため、多少価格が高くても、本当に良い食材を求めています。

自社ECサイトでの直販:
中間マージンがなくなるため、お客様には適正価格で販売でき、会社はより多くの利益を確保できます。

安売りをせずに、商品の価値を正当に評価してくれる販路は、必ず存在します。これまで関わってこなかった市場に
一歩踏み出す勇気が、安売りから脱却する大きな一歩となります。

まとめ:安売りは「やめる」、そして「売れる仕組み」をつくる
安売りは、短期的な売上を上げるための特効薬に見えるかもしれません。その代償は、会社の未来、社員の未来を
暗くしてしまうことです。「安売りをやめる」という強い意志をもって、自社の商品の価値を正しく伝えるための
「売れる仕組み」を一緒につくっていきましょう。

当社は食品会社の売上を伸ばすための伴走支援をしています

安売りから脱却し、適正価格で売上を伸ばしていきたい食品会社社長。御社の商品や強みに合わせた販路開拓の戦略を
一緒に考え、実行をサポートします。

セミナー登壇やマスコミ出演も行っておりますので、お気軽にご相談ください。


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