商品を変えずに売り先を変えた千葉の和菓子会社の支援事例|立て直した理由

売上が落ちているのに、商品が悪いとは思えない。そう感じている社長に読んでいただきたい事例です。
毎年、少しずつ売上が落ちていった千葉県内に工場を持つ、ある和菓子会社の話です。

創業から長年にわたり、工場に併設した直売所、地元の道の駅、近くのスーパーで商品を販売してきました。
どらやきや水まんじゅうといった、昔ながらの和菓子です。

製法は変えていません。素材にもこだわってきました。職人が手づくりで仕上げています。
品質に問題があったわけではありませんでした。

それでも、売上は年々減っていきました。急に崩れたわけではありません。
毎年、少しずつ落ちていく状態が何年も続きました。

原因はわかっていました。「昔ながらの和菓子」を日常的に買う人が、少なくなっているのです。
スーパーの売場には洋菓子や輸入菓子が増えました。コンビニにも手軽なスイーツが並んでいます。
若い世代は和菓子を買う習慣がない。地元のお客さんも、少しずつ高齢化していきました。

社長は手を打とうとしました。道の駅での販売に力を入れたこともあります。スーパーへの営業も続けました。
値引きをしたこともありました。それでも、流れは変わりませんでした。

「商品に問題はない。では、何を変えればいいのか」答えが見えないまま、時間だけが過ぎていきました。

まず、自社の「強み」を整理した

変化は、外から来たわけではありませんでした。社長が自分たちの商品を見直したことから始まりました。
この会社が最初にやったのは、商品のリニューアルではありませんでした。設備への投資でもありませんでした。
「自社の良さは何か」を、あらためて整理することでした。

長年やってきたことなので、当たり前すぎて見えなくなっていたことがありました。
改めて整理すると、はっきりしたことが二つありました。

一つ目は、素材へのこだわりです。地元産の小豆、国産の米粉。原材料の産地と品質を、ずっと妥協せずに選んできました。
仕入れのコストがかかっても、そこは変えませんでした。創業以来、続けてきたことです。

二つ目は、手づくりの製法です。機械化せず、職人が一つひとつ手で仕上げています。成形も、あんの量の調整も、
すべて手作業です。大量生産ではできない工程を、ずっと守り続けてきました。

この二つは、どこにでもある和菓子とは違う点がありました。地元のスーパーでは、その違いが伝わっていませんでした。
値段の安い既製品と同じ売場に並べられ、価格だけで比べられていたのです。

社長はここで、考え方を変えました。「この商品は、今いる売り場に向いていないのではないか」
商品を変えるのではなく、売り場を変える。その発想が出発点になりました。

何を、どう変えたか、変えたのは、商品ではありません。「売り先」と「見せ方」です。
具体的には、三つのことを変えました。

一つ目は、パッケージです。

それまでの包装は、スーパーの売場に合わせた、どこにでもあるシンプルなデザインでした。
コストを抑えたものでした。これを、贈り物にも使えるような、落ち着いた仕様に変えました。

パッケージには、素材や製法についての説明文を丁寧に記載しました。どこの産地の原材料を使っているか。
どんな工程で作っているか。読んだ人に、この和菓子の違いが伝わるようにしました。
「何が違うのか」が、手に取った瞬間にわかる。それを目指したデザインです。

二つ目は、価格です。

一個200円で売っていた商品を、300〜400円に変更しました。
値上げというより、「正当な価格に戻した」という感覚に近いです。素材と手間にかかっているコストを考えると、
200円という価格は安すぎました。利益が薄く、経営を圧迫していたのです。

価格を上げるには、それに見合う見せ方が必要です。パッケージを変えたのは、その準備でもありました。
値段だけ上げても、お客さんには伝わりません。見た目と価格がそろって、初めて「この値段で買いたい」と
思ってもらえます。

三つ目は、売り先です。

地元のスーパーや道の駅への営業をやめたわけではありません。そこに加えて、都内の食品セレクトショップに
絞って新規営業をかけました。

セレクトショップは、置く商品をかなり絞っています。「こだわりの国産食品」「職人の手づくり」「地方の生産者」といった
価値を、積極的に求めています。そこに来るお客さんも、同じ基準で商品を選んでいます。
この会社の商品は、そうした売り先に合っていました。

どうやって採用されたか

都内のセレクトショップへの営業は、すぐにうまくいったわけではありません。断られたこともありました。
持っていったのは、商品と、素材や製法を説明した資料です。「なぜこの価格なのか」「どこが他と違うのか」を、
きちんと説明できるようにしました。

バイヤーは、味だけでなく背景も見ます。何を使っているのか。なぜその作り方なのか。そこまで含めて判断します。
この会社には、長年積み上げてきた話がありました。それを丁寧に伝えたことが、採用につながりました。

採用されると、定期的な発注になりました。単発ではなく、毎月決まった量を仕入れてもらえる関係が生まれたのです。
安定した受注が得られるようになり、利益も確保できるようになりました。

なぜうまくいったのか。一つだけ答えるなら

「商品の価値を正しく評価してくれる場所に、届けたから」です。
この会社の和菓子は、ずっと同じクオリティで作られていました。変わったのは、その商品をどこで売るか、
という判断だけです。

地元スーパーでは、昔ながらの和菓子は「安くて当たり前のもの」として扱われていました。価格で競争するしかない。
素材にいくらこだわっていても、その分のコストを価格に乗せることができませんでした。
品質の高さが、価格に反映されない状況でした。

セレクトショップには、別の基準で商品を選ぶお客さんがいます。「国産素材を使っているか」「手づくりか」
「商品に背景があるか」。こういった点を重視して買う人が集まっています。
同じ商品でも、そこでは「選ぶ理由のある商品」になりました。

値段を上げても売れる。それは、商品が高品質だったからだけではありません。その価値をわかってくれる人のいる場所に、
提案をしたからです。

安売り競争から抜け出すのに、必ずしも商品を変える必要はありません。
「誰に売るか」を変えることで、同じ商品が別の価値を持ちます。

この会社がやったことを整理すると、次の三つになります。

一つ目は、自社の強みを言語化したことです。「素材へのこだわり」と「手づくり」という、
自分たちが当たり前にやってきたことを、改めて価値として整理しました。
長年続けてきたことは、当事者には見えにくくなります。それを言葉にすることで、営業の軸ができました。

二つ目は、売り先を変えたことです。強みが評価される場所に、商品を持っていきました。
売り先を変えるとは、ターゲットを変えることです。誰に売るかを変えると、比べられ方が変わります。
価格だけで戦う場所から、価値で選ばれる場所へ移ったのです。

三つ目は、価格と見せ方を整合させたことです。商品の価値に見合う価格に直し、そのためのパッケージに変えました。
価格と見た目がバラバラだと、価値は伝わりません。三つがそろって、初めて選ばれやすくなります。

どれも、大がかりな話ではありません。商品開発もしていない。設備投資もしていない。
新しい技術を導入したわけでもありません。やったことは、「届ける相手を変えて、それに合わせて見せ方を整えた」だけです。

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自社の良さを軸に、ブレないことが大切

売上が落ちてくると、「商品を変えなければ」「価格を下げなければ」という方向に考えが向きがちです。
新しいものを作れば売れるのではないか。もっと安くすれば買ってもらえるのではないか。そう考えるのは自然なことです。

この会社は、商品を変える方向にも、安売りの方向にも動きませんでした。「うちの商品は良い。
だから、それを正しく評価してくれる人に届けよう」という判断をしました。自分たちの強みを信じて、
売り先を変えることに集中しました。

長年積み上げてきた品質とこだわりは、簡単には捨てられない財産です。それを捨てて安売りに走れば、
一時的に売上が戻るかもしれません。でも、利益は薄くなります。作り手のモチベーションも下がります。
何より、自社の強みを手放すことになります。

営業に悩んでいる会社の多くは、商品が悪いのではなく、「届ける相手が合っていない」だけかもしれません。
今いる売り場が、自社の商品に合っていないだけかもしれません。

自分たちが大切にしてきたことは何か。その価値を評価してくれる人はどこにいるか。それを考えることが、
立て直しの出発点になります。

自社の良さを軸に、ブレないことが大切です。

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