営業担当を雇う余裕がない。営業ができる人間が社内に一人もいない。
小さな食品会社の社長から一番多く聞く悩みです。
結論を言います。営業担当を雇う必要はありません。
社長が自分で動く。これだけで売上は変わります。
むしろ、社長が動かない限り、どれだけ優秀な営業マンを雇っても、どれだけ多額の広告費をかけても、
商品は売れません。製造の責任者でもある社長が、自ら売場を見に行き
バイヤーと向き合うことでしか見えないことがあるからです。
工場にこもる社長の現実
小さな食品会社の社長は、一日の大半を製造ラインの中で過ごしています。
「良いものを作れば、いつか誰かが気づいてくる」
そう信じて、ひたすら麺を打ち、肉を切り、タレを仕込んでいます。
職人としての腕は一流かもしれません。経営者として「売る」という責任から目を背けている状態です。
待っていても注文は増えません。
それどころか、既存の取引先からの発注はじわじわ減っていきます。
ある日突然、主力商品の発注が止まる。
社長は慌てて取引先に電話をしても、「バイヤーが変わったから」「売場が改装されたから」という、
ありきたりな理由で断られるだけです。
本当の理由は、社長が工場の外で何が起きているかを知ろうとしなかったことにあります。
バイヤーと普段から関係があれば事前に情報を知ることもできます。
社長が営業を避ける理由は明確です。
「自分は口下手だから」「営業はお願いに回ることだ」と思い込んでいるからです。
頭を下げて買ってもらう姿を想像し、それができないと感じている社長もいます。
それはあたりまえのことです。
バイヤーとの商談も他人まかせにするか、電話を待つだけの状態になります。
自社の商品が、どこの売場で、誰に、いくらで買われているのか。
これを知らないままでは、次の注文は一生来ません。
なぜ営業を外注しても売れないのか
営業がいないからと、外部の営業代行会社やコンサルタントに丸投げする会社があります。
これは一番やってはいけない選択です。
外注の担当者は、商品の「こだわり」や「背景」を本当の意味で語れません。
マニュアル化された説明はできても、バイヤーからの鋭い質問に対し、その場で即答できないからです。
商談の席で、バイヤーが聞くのはこれだけです。
「他社の商品と、何が決定的に違うのか」
「この価格設定の根拠は、1円単位で説明できるか」
「もし品質トラブルが起きたとき、誰が、いつ、どう責任を取るのか」
外注の担当者が「持ち帰って確認します」と言った瞬間に、その商談はなくなります。
バイヤーは、目の前の人間が決裁権を持っていないと分かった途端、興味を失います。
多忙なバイヤーにとって、決裁権のない人間と話す時間は無駄でしかありません。
商品の強みも、原料選びの苦労も、製造工程の細かな工夫も、すべてを知っているのは社長だけです。
社長の口から出る言葉で伝えない限り、バイヤーの心は動きません。
また、展示会を外注するのも同じです。
コンパニオンや代行スタッフが笑顔でパンフレットを配っても、名刺が集まるだけで終わります。
後日、その名刺リストに電話をかけても、相手は社長の顔すら覚えていません。
「展示会に出たけれど注文が来ない」と嘆く会社の共通点は、社長が商談の最前線に立っていないことです。
社長が動いた会社だけが変わる理由
売上が伸びている小さな食品会社では、例外なく社長が先頭に立っています。
社長が動く最大のメリットは、判断の早さです。
「価格をあと5円下げられないか」という要求に対し、社長であればその場で利益計算をし、判断を下せます。
「この規格では売場に入らない。横幅を2センチ詰められないか」と言われれば、
「明日までに試作して持ってくる」と即答できます。
このスピード感と決断力が、取引先との信頼関係を作ります。
営業経験が豊富である必要はありません。
自分の作った商品を、誰に、どこで、いくらで売りたいかを、自分の言葉で話すだけです。
かっこいいプレゼン資料も、流暢なトークも不要です。
「この商品は、こういう思いで作った。だから、こういう売場で、こういう人に食べてほしい」
この事実を伝えるだけで、バイヤーの態度は変わります。
社長が直接、売場に行くと、厳しい現実が見えます。
自社の商品が、競合商品の隣でどう見えているか。
パッケージが光に反射して中身が見えにくくなっていないか。
賞味期限が迫って、ワゴンの中で山積みにされていないか。
これらは工場の中にいては気がつかないことです。
このことを知るから、次に打つべき手、具体策が明確になります。
実際に動いた事例:うどん製造業の逆転
東北にある、従業員5人のうどん製造会社の事例を詳しく紹介します。
以前は地元のスーパー数社への卸が売上の8割を占めていました。
大手の安価な商品に押され、常に価格競争に巻き込まれていました。
利益は削られ、設備投資どころか日々の運転資金にも事欠く状態。
社長は「営業は苦手だ」と言い、毎日12時間以上、工場で麺を打ち続けていました。
ある月、ついに主力取引先からの注文が前年比で30%も落ち込みました。
このままでは半年持たない。追い詰められた社長は、重い腰を上げました。
自ら商品を抱え、東京都内の百貨店や専門店を回ることを決意したのです。
社長は、ターゲットを考えずに飛び込み営業をしたわけではありません。
事前に、自社の商品と合うこだわりの売場を持つ店をリストアップし、バイヤーの名前を特定しました。
そして、派手なパンフレットの代わりに、製造工程の写真を何枚も貼り付けた「手作りの資料」と、
自慢のサンプルを送り込みました。
いざ商談の席。社長は緊張で言葉が詰まりました。
面談ができたバイヤーから「なぜ、この価格なんですか?」と問われたとき、社長のスイッチが入りました。
「このコシを出すために、小麦の配合を気温1度単位で変えている。この工程を省けば安くできるが、
それでは私の作るうどんではなくなる」
製造上の事実だけを、必死に伝えました。
バイヤーは、その言葉の重みに耳を傾けました。
結果として、地元のスーパーでは一袋100円で買い叩かれていたうどんが、
3食セット1,500円のギフトとして百貨店に採用されました。
営業担当者を雇ったわけではありません。
社長が自ら動き、自分の言葉で、製造の事実を伝えた結果です。
新商品でつまずく社長の共通点
栃木県の精肉加工会社でも、似たようなことが起きました。
銀行の紹介で訪問した際、社長は新商品のレトルトカレーを見せてくれました。
「味には自信がある。でも、どこに売ればいいかわからない」
そう言う社長に、「価格はいくらですか?」と質問しました。
社長の口から出たのは、「えーと、いくらだっけ?」という一言でした。
自分の商品の値段を即答できない。
これは、その商品がまだ「商品」になっていない証拠です。
バイヤーとの商談でこの一言が出た瞬間、チャンスは二度と巡ってきません。
社長が製造に集中するあまり、商売の基本である「数字」への意識がよわかったのです。
この会社はその後、社長が自ら原材料費を1グラム単位で計算し直し、物流コストや包材代を積み上げました。
その数字を持って、高級スーパーのバイヤーを訪ねました。
「1食600円で売らなければ、この品質は維持できない。その代わり、この肉の使用量は他社の倍だ」
数字という事実を武器に戦った結果、販路は一気に広がりました。
最初にやるべき具体的な行動
営業がいないと言う前に、できることが3つあります。
・自社商品の売場を自分の目で見る
今日、自社の商品が並んでいる店に行ってください。
店員に挨拶する必要はありません。一人の客として、商品の前に5分間立ってください。
手に取る人はいるか。その人は、裏面のラベルを見て戻したか、それともカゴに入れたか。
競合商品と比べて、パッケージの文字は読みやすいか。
この事実を、一言も漏らさずメモしてください。工場の机の上で考えるより、この5分の方が価値があります。
・原価を1円単位で分解し、紙に書く
「だいたいこれくらい」という曖昧な数字を、今日この瞬間にやめてください。
原材料代、包装資材、ラベル代、運賃、人件費をすべて足し、利益が残る正確な数字を出してください。
バイヤーから「いくらですか」と聞かれたときに、すぐ答えられるようにするためです。
・取引先に1本電話を入れる
新規開拓に走る前に、今、取引がある会社に電話をしてください。
「最近、うちの商品の売れ行きはどうですか。何か不満はありませんか」
これを聞くだけで十分です。
「パッケージが破れやすい」「もう少し小さいサイズが欲しい」
現場で起きている問題こそが、次の商談の最大のヒントになります。
明日ではなく、今すぐ動く
営業は、口のうまい人間が行う仕事ではありません。
バイヤーの課題を見出して、その解決策を相手に伝える作業です。
社長が工場から一歩外に出て、自分の商品の「バイヤーからの評価」を知ることから始まります。
売上が落ちているのは、商品のせいでも、景気のせいでもありません。
社長が動いていない。ただそれだけの事実です。社長が動けば、会社は今日から変わり始めます。
明日ではなく、今すぐ、自社の商品が並ぶ売場に向かってください。
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