食品会社の社長へ|営業に近道も抜け道もない 成果を出す社長がやっていること


なぜ営業は「楽な方法」を探してしまうのか

食品メーカーを経営していると、「もっと効率よく成果を出したい」「短期間で大口の取引先をつかみたい」と
思う瞬間が必ずあります。
展示会で一発逆転、SNSや広告で一気に拡散、補助金で一気に売上を伸ばす。
そんな“近道”を探したくなる気持ちは、誰にでもあります。

けれど、営業に近道も抜け道もありません。
地味でも、正しいやり方を続ける社長が最終的に成果をつかみます。
この現実を受け入れた瞬間から、会社の営業は確実に変わり始めます。

現場に足を運び、売場を観察し、買い手の論理で考える習慣が、静かに効いてきます。派手さはなくとも、
仕組みと継続が信頼をつくり、やがて紹介と再発注を生みます。まずは足場を固めることが、結果として最短距離なのです。

なぜ「一発逆転」を求めてしまうのか

最大の原因は時間軸のズレです。資金繰りや人件費は毎月待ってくれない一方で、
新規取引はバイヤーの決裁に時間がかかり、売上に反映されるまで必ずタイムラグが生じます。
成果が見えにくい局面で、即効性の高い施策へ流され、近道を探し始めてしまうのです。

もう一つは商品力過信です。地元で評判の味なら首都圏でも通用すると考えがちですが、
実際は物流条件、賞味期限、表示・規格、卸値と粗利、販促体制まで整って初めて採用されます。
展示会や商談会を出れば売れる場と誤解し、事前アポや事後フォローを省けば、期待外れに終わります。
さらに意思決定の孤独も一因です。短期の広告や値引きに逃げやすく、測れない施策へ投資して検証不能になる。

原価、回転、粗利、CVなど基礎データを自分の目で確認しないと、動きの大きい提案に引きずられます。
こうして近道探しが常態化すると、社内は疲弊し、原因を外部や社員に求める空気が生まれ、挑戦の芽が摘まれてしまいます。

地道な積み上げが唯一の近道

第一に、数字目標より行動目標を設計します。「今月の売上○円」より「新規バイヤー20社への提案」
「既存先10社の棚前観察と改善提案」「アポ獲得の架電100本」「展示会後7日以内の全件フォロー」のように具体化します。

第二に、プロセスを標準化します。①仮説立案(狙う売場・価格帯・SKU)②事前打診とサンプル送付
③現場検証(試食・売場観察)④再提案(歩留まり・粗利・発注頻度の改善案)
⑤導入後30・60・90日の棚卸し、をテンプレ化し、誰が担当しても品質がぶれないようにします。

第三に、展示会は案件生成装置(表現が正しいかは?)と捉え、名刺管理とフォロー手順を自動化。
CRM(Excelで問題ありません)で状況を可視化し、停滞原因を仮説→打ち手→再接触で回します。
最後に、広告や値引きは実験として実施し、仮説と検証指標(CV、原価率、送客単価、リピート率)を

セットにして再現性のある勝ち筋だけを残します。
人材育成もプロセスに組み込みます。事前調査チェックリスト、提案書のレビュー、
週次で勝ち案件の要因分解を行い、属人化を防いで再現性を高めます。

小さなヒットの積み重ねが大きな成果を生む

地方洋菓子メーカーA社は、地元2店舗とECのみで推移し、展示会に出ても成果が出ませんでした。
原因は事前アポ不足と事後フォローの遅れ。出展90日前に狙う売場を百貨店銘菓と駅ナカギフトに絞り、
常温日持ち21日に改良、化粧箱を標準化し、卸値と粗利を再設計。

出展30日前にターゲットへサンプルと売場での役割を説明した一枚資料を発送、会期中は試食と回転率を実測、
終了後7日以内に全件フォロー。結果、初回は催事テスト、3か月で通年定番に昇格し、ECの平均客単価も上がりました。

調味料B社は、大手一発採用を狙うのをやめ、専門店30店の導入とリピート率60%をKPIに変更。
レシピカードと試食動画のQRコードを店頭に設置し、POS回転が一定値を超えた証拠を束ねて大手へ再提案。
2年目に地域限定でチェーン採用に至りました。

水産加工C社は、規格乱れとロス率の高さで粗利が出ない課題に対し、歩留まり標準化と発注頻度の見直しを実施。
欠品と廃棄が減り、同一SKUでも粗利率が4ポイント改善、棚割り拡大につながりました。

どの事例も、ホームラン狙いを捨て、単打を積み上げた点が共通です。

今日から始める五つの習慣

一つ、週次で“行動KPIダッシュボード”を見える化し、社長自らレビューすること。
二つ、展示会は準備90日・フォロー7日ルールを徹底すること。
三つ、商談は「断られてからが本番」と捉え、次回提案の仮説を必ず書面化すること。
四つ、売場観察を月10店舗のノルマにして、棚前の課題を現場写真つきで共有すること。
五つ、広告やSNS施策は小さく早く試し、検証指標を必ず残すこと。加えて、月末は敗因会議より学習会議に振り替え、
失注の原因を責めずに構造化し、翌月の打ち手に組み込む文化を育てましょう。営業に近道や抜け道はありません。

正しい道を歩く社長は、歩くほどに景色が開けます。バイヤーからの信頼は、挨拶、約束、提案、検証という
地味な積み木の上に築かれます。単打を積み重ねる野球は、点を取り続けます。食品メーカーの営業も同じです。

今日の一本の電話、一本のメール、一本の訪問が、半年後の安定発注につながる。
その因果を信じ、歩みを止めないことが、結局いちばんの近道なのです。



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