昨今の原材料費やエネルギー価格の高騰は、
食品業界全体に大きな影響を与えています。
自社の商品を守り、従業員の生活を守るため、
やむを得ず値上げに踏み切ったというお話も
頻繁に耳にするようになりました。
飲食店を経営されている社長様の中には、
価格改定に踏み切った方も
少なくないでしょう。
しかし、いざ営業となると、
「何から話せばいいかわからない」
「どうも苦手で気が進まない」と
感じている社長様は、実は少なくありません。
営業と聞くと、特別な話術や才能が必要だと
思われがちですが、決してそんなことはありません。
30年という長い時間、営業という現場に立ち続け
見えてきたのは、小手先のテクニックではなく、
もっと人間的で、温かい、
いくつかの大切なルールでした。
今回は、このルールを知るだけで、
明日からの営業活動が少し楽になり、
そして着実に成果へとつながっていく、
そんな本質的なお話をしたいと思います。
ルール1:商品を売るのではなく、価値を届ける
売れない営業担当者ほど、
一生懸命に商品の説明をします。
「このお醤油は、国産の丸大豆を使っていて、
杉樽で2年熟成させていて…」
もちろん、そのこだわりは素晴らしいものです。
しかし、お客様が本当に知りたいのは、
商品のスペックや製法だけではありません。
お客様が知りたいのは、
「その商品を使うことで、
自分の未来がどう良くなるのか」ということです。
例えば、スーパーのバイヤー様に営業するとします。
商品の説明をする前に、まずそのバイヤー様が
何に困っているのかを考えてみましょう。
もしかしたら、「他店との差別化に悩んでいる」
「健康志向のお客様に響く商品を探している」
「お店の利益率を改善したい」といった
課題を抱えているかもしれません。
その課題に対して、
「このお醤油を定番商品として置くことで、
食にこだわるお客様がお店のファンになり、
リピート来店につながりますよ」あるいは、
「このドレッシングは、地元の新鮮な野菜と
セットで販売すれば、野菜の売上も
一緒に伸ばすことができますよ」
といった提案ができたら、どうでしょうか。
これは、商品の説明ではなく、
お客様の成功を後押しする「価値」の提案です。
自社の商品が、お客様の未来を
どのように素敵に変えることができるのか。
その物語を語ることが、営業の第一歩です。
ルール2:話すより、とにかく聞く
営業は、自分が話す場だと思っていませんか。
実は、本当に売れる営業担当者は、
驚くほど聞き役に徹しています。
目安としては、自分が2割、お客様が8割話す
くらいが理想的です。
なぜなら、お客様の課題や悩み、望みを知らなければ、
的を射た提案はできないからです。
こちらが話せば話すほど、お客様の心を知る
チャンスは失われていきます。
大切なのは、安心してお話しいただける雰囲気をつくり、
真摯な興味を持って質問をすることです。
「今、お店で力を入れていることは何ですか」
「どんなお客様に、もっと来てほしいとお考えですか」
「商品を選ぶ上で、一番大切にされていることは何ですか」。
こうした質問を重ねることで、
お客様は自らの課題を整理し、
だんだんと心を開いてくれます。
そして、お客様の口から語られる言葉の中にこそ、
契約への一番の近道が隠されています。
一生懸命に話すのを少しお休みして、
お客様の心にじっくりと耳を傾けてみましょう。
ルール3:断られてからが、本当の始まり
営業活動に、断りはつきものです。
「今は間に合っています」
「価格が少し高いですね」
「検討しましたが、今回は見送ります」。
こうした言葉に、心が折れそうになることも
あるかもしれません。
しかし、ここで引き下がってしまうのは、
非常にもったいないことです。
実は、断られた理由の中にこそ、
次につながる最大のヒントが眠っています。
例えば、「価格が高い」と言われたら、
それはチャンスです。
なぜなら、「品質の良さは認めているけれど、
価格だけがネックだ」と
お客様が教えてくれているからです。
そこではじめて、「この商品にはこれだけの価値があり、
長い目で見れば必ずご商売のお役に立てます」という、
価格の理由を丁寧に説明する機会が生まれます。
「今は間に合っている」と言われたら、
「承知いたしました。では、もしよろしければ、
また季節が変わる頃に、新しいご提案を
させていただいてもよろしいでしょうか」と、
未来につながる約束を取り付けることができます。
断られることを恐れる必要はありません。
それは、お客様との対話が始まった証拠です。
その理由を誠実に受け止め、次の一手を考える。
その繰り返しが、やがて揺るぎない
信頼関係を築いていくのです。
ルール4:最後は「誰から買うか」で決まる
世の中には、似たような商品がたくさんあります。
品質や価格で大きな差がつけにくい時代だからこそ、
お客様は最後にこう考えます。
「この人から買いたいだろうか」と。
結局のところ、営業は人と人とのつながりです。
どんなに良い商品でも、担当者が信頼できなければ、
お客様は大切なお金を払ってはくれません。
では、信頼とは何でしょうか。
それは、日々の小さな約束を守る、
その積み重ねです。
「明日までにお見積もりをお持ちします」と
言ったら、必ず届ける。
質問には、迅速に、そして誠実に答える。
お客様の業界やお店のことを、
自分なりに勉強して会話に臨む。
こうした地道な行動の一つひとつを、
お客様は見ています。
商品知識が豊富であること以上に、
一人の人間として信頼できるかどうかが、
最終的な決め手となるのです。
商品を売り込む前に、まずは自分という人間を
信頼してもらう。その意識を持つことが大切です。
ルール5:営業とは、相手の成功をお手伝いすること
これまで4つのルールをお話してきましたが、
すべてに共通しているのは、「自分」ではなく
「相手」に意識を向ける、という姿勢です。
営業の目的は、自社の売上を上げることかもしれません。
しかし、その目的を達成するためには、
まずお客様に成功していただく必要があります。
お客様のビジネスが繁盛し、その結果として
自社の商品が選ばれ、売上がついてくる。
この順番を間違えてはいけません。
営業とは、商品を売り込む作業ではありません。
お客様の抱える課題に寄り添い、
自社の商品を通じてその解決策を一緒に考え、
成功までを伴走する、尊いお仕事です。
この考え方が心に根づくと、
不思議と営業への苦手意識は消えていきます。
なぜなら、お客様はもう、
商品を売り込まれる相手ではなく、
一緒にゴールを目指すパートナーになるからです。
いかがでしたでしょうか。
営業経験30年と大げさなタイトルをつけましたが、
突き詰めれば、特別なことは何一つありません。
相手を思いやり、真摯に耳を傾け、誠実に行動する。
これらはすべて、ビジネスの基本であり、
人としての基本でもあります。
もし、販路開拓や営業の方法について、
もう少し具体的な相談がしたい、
自社の場合はどうすれば良いのかわからない、
と感じた時には、どうぞお気軽にお声がけください。
御社の素晴らしい商品が、
一人でも多くのお客様に届くよう、
何かお力になれることがあるかもしれません。
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