売れる商品の本質を見失わない食品会社の戦略


全国の観光地や空港で、お土産商品が再び注目を集めています。
羽田空港、東京駅、京都、福岡、北海道など、観光客が戻ったエリアではお土産が次々に売れています。
インバウンドの回復もあり、店頭では多くの商品が並び、売場は活気にあふれています。

お土産店の経営者からは「どんな商品でも売れる」といった声も聞こえてきます。
確かに今は一部の店舗で、かつての反動需要のような勢いが見られます。
けれどこの流れをそのまま信じて、商品パッケージやデザインだけに力を入れると、危うい結果になります。

売れる商品には一時的なブームと、長く愛される定番があります。
両者の違いは本質を見ているかどうかです。

目を引くデザインで売れるのは短期間。
けれど素材や製法、つくり手の想いが伝わる商品は、時間を超えて売れ続けます。

食品会社の役割は、見た目を変えることではありません。
中身を磨き、価値を育てることです。

もしパッケージだけで売上を狙うなら、それは食品開発ではなく、企画デザインの仕事です。
一時的な販売促進としては効果がありますが、長期のブランド形成にはなりません。

例えば、ある地方の水産加工会社は観光地向けに新パッケージを導入しました。
見た目が華やかで、一時的に売上は伸びました。

翌年には在庫が残り、リピーターがつかず、結果的に赤字になりました。
その原因は簡単でした。


味や素材は以前のままで、デザインだけを変えていたのです。
観光客が一度買って満足する商品は多い。
けれど二度、三度と買ってもらう商品は、中身で勝負している会社だけです。

一方で、同じ地域の別のメーカーは、素材そのものの改良に取り組みました。
地元の農家と協力し、香りや食感を改良。

結果、東京や大阪のバイヤーからも声がかかり、安定した取引が生まれました。
この会社は見た目ではなく、味とストーリーで評価を得たのです。

売れる商品の本質とは「お客さまがどんな場面でその商品を使うか」を理解していることです。
旅先で買うお土産なら、見た目よりも思い出が重なります。

贈り物なら、手渡す人の気持ちを想像して作ることが重要です。
つまりどんな人に、どんな瞬間に、どんな価値を届けるか。

この問いを持たない開発は、いずれ行き詰まります。

食品会社にとってブームは危険でもあります。
流行の波にのるのは楽ですが、波が引いたときに残るものがなければ再起は難しい。

ブームに浮かれず、冷静に市場を見つめる姿勢が求められます。
特に今のように観光需要が戻り始めた時期は、落ち着いて自社の軸を確認するチャンスです。

経営の安定はファンをつくることから生まれます。
一度買って終わりではなく、もう一度買いたいと思ってもらうこと。

そのためには素材や製法へのこだわりが欠かせません。
どんなに見た目が良くても、味や品質に一貫性がなければ信頼は積み上がりません。

お土産商品が売れている今こそ、会社の方向性を見直す時期です。
デザインに時間と費用をかける前に、商品の根っこを点検しましょう。

この商品はなぜ作ったのか。誰に届けたいのか。何を伝えたいのか。
この三つの問いを明確にできれば、売り方も自然に決まります。

販路開拓を考える際も同じです。
パッケージを変えて提案するより、商品の物語を添えて伝える方が反応は高まります。

バイヤーはデザインよりも、どんな想いで作っているかを見ています。
本気でつくっている会社の商品は、伝わり方が違います。
結果として販路も広がりやすくなります。

さらにもう一歩進めるなら、商品の背景を発信しましょう。
ホームページやSNS、展示会などで、素材の産地、作り手の姿勢、開発の経緯を丁寧に伝える。
それが小さな会社にとって最強のマーケティングです。

人はデザインよりもストーリーに心を動かされます。
地方の小規模メーカーでも、想いを見せることで東京のバイヤーに届く時代です。

今はモノがあふれ、差別化が難しい時代です。
価格やパッケージで勝負するより、理念と信念を伝える方が強い。
その積み重ねがブランドになり、ブランドが会社を守ります。

一時の流行に流されず、本質に立ち返る。
これが売れ続ける会社の共通点です。

食品会社にとって本質とは、味、素材、想い、そして継続。
この四つを磨き続けることが、長期的なブランド価値を生みます。

ブームの後に残るのは、本気で作られた商品だけです。
見た目ではなく、魂のあるものづくりを続けましょう。
そこにこそ、真の安定と成長があります。

食品会社の未来は、派手なパッケージではなく、静かな信頼の積み重ねにあります。
どんな時代になっても、味と誠意で勝負する会社が最後に残ります。

目先の売上よりも、十年先の信頼をつくる。
その姿勢こそ、これからの食品業界で最も価値のある戦略です。


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