売上が落ちたとき、小さい食品会社の社長が確認すべき3つの数字


販路開拓専門家の伊藤です。

売上が前年を下回った瞬間、社長の身体にいちばん先に来るのは不安です。
通帳の残高が減り、支払い日が近づき、頭の中で最悪のシナリオが回り始める。

そこで多くの社長が、営業を増やす、展示会を増やす、新商品を増やす、値段を下げる、と動きたくなります。
小さい食品会社ほど、その一手が重いです。人も時間も資金も限られているからです。動けば必ずコストが出る。

動いた分だけ現場は疲れる。判断を誤ると、忙しいのにお金が残らない状態に入ります。

動く前に、まず3つの数字で現状を切り分けてください。
売上という結果ではなく、販路と利益の構造を見抜くための数字です。
ここが整理できると、次の打ち手の優先順位が自然に決まります。

一つ目は、取引先別売上構成比です。

直近12か月の売上を、取引先ごとに並べます。上位3社で全体の何%を占めているかを出してください。
50%を超えているか。60%を超えているか。ここが高いほど、会社は一社の判断で揺れます。

食品の取引は、発注が止まると即ダメージです。さらに厄介なのは、売上高の裏に見えない負担が積もることです。
センターフィー、協賛金、特売負担、返品、欠品ペナルティ、専用ラベル貼り替え、詰め合わせ仕様、細かな規格変更。
ひとつひとつは小さく見えても、積み上がると利益を削ります。

依存度が高い取引ほど、条件の見直しを言い出しにくくなります。売上が落ちた原因が「上位1社の発注減」なのか、
「全体の市場縮小」なのか、この数字が最初の地図になります。

今週やることは単純です。取引先別に並べ、上位3社の構成比を赤で丸をつける。
ここが高いなら、営業の量を増やす前に、販路の分散設計が最優先です。

二つ目は、粗利率の前年差です。

売上が落ちたのか、利益が落ちたのか。ここを混ぜると判断がズレます。
食品は原材料、包材、燃料、物流、人件費がじわじわ上がります。値上げが通りにくい局面もあります。
その結果、売上は一見保てていても粗利率が落ちているケースが多い。

粗利率が1ポイント落ちるだけで、小さい会社は現金の減り方が変わります。
2ポイント落ちると、資金繰りの景色が一気に悪くなります。
売上を取り戻そうとして値下げや特売に寄ると、さらに粗利率が削れ、忙しいのに残らない沼に入ります。

確認の仕方は簡単です。過去3年の粗利率を並べて、今年と前年差を出す。
前年より下がっているなら、売上拡大より先に「利益を守る」判断が必要です。

値下げを止める、採算の合わない条件を見直す、手間が重い取引を整理する。
やる気の問題ではありません。構造の問題です。

今週やることは、粗利率の前年差に赤丸をつけることです。落ちているなら、原因を1つに絞って確認します。
原材料か、物流か、特売比率か、協賛負担か。原因を特定しないまま動くと、同じ失血が続きます。
日ごろは売上だけをチェックしている社長が多いので気をつけましょう。

三つ目は、新規取引数と継続数です。

直近12か月で新しく始まった取引先は何社か。さらに重要なのは、そのうち「3回目の発注」まで到達した先が何社かです。
名刺の枚数ではありません。初回の小口発注ではありません。定番として続く先が増えているかどうかです。

食品の新規は、導入までに手間がかかります。サンプル、規格書、商談、試作、表示、物流条件、掛率、支払い条件。
展示会に出れば、出展料、ブース費、装飾、サンプル原価、送料、宿泊、現場が空く分のロス、
会期後の個別対応や試作が乗ってきます。ここまで投資して、初回で終わる取引が多いと、費用だけが残ります。

新規がゼロなら、努力不足という話ではありません。設計が足りない可能性が高い。
ターゲットが合っていない、提案が曖昧、導入ハードルの整理ができていない、価格の握りが弱い。

新規が増えていても継続が少ないなら、取引先の選び方か、最初の提案にズレがあります。ここも数字で判断できます。
今週やることは、新規取引先を並べ、3回目まで続いた先に丸をつけることです。

丸が少ないなら、展示会を増やす前に、商談の設計を直すほうが早いです。

ここまでの3つが揃うと、社長の判断が楽になります。取引先別売上構成比が高いなら分散が先。
粗利率が落ちているなら守りが先。新規の継続が弱いなら提案設計が先。

逆に言えば、ここを見ずに営業だけ増やすと、売上は動いても会社は弱ります。
小さい会社は、増やすより狭くしたほうが速いことが多いです。

最後に、社長がその日のうちにできる行動を一つに絞ります。
A4用紙を1枚用意してください。左に上位10社の取引先名、右に売上額と構成比。別の行に粗利率と前年差。

下に新規取引先の数と3回目継続の数。これを手書きで書き出す。パソコンの表より、手で書くほうが腹に落ちます。
書き出した瞬間、守るべき取引、切るべき負担、伸ばすべき販路が見えます。

小さい食品会社で販路に悩んでいる社長へ。やることを増やす前に、削るべき構造を見つけてください。
数字は冷たいように見えて、社長を守る味方です。構造が整えば、次の一手は迷わず打てます。

迷いが残るなら、数字を持って、取引条件と提案の順番を一緒に点検しましょう。
判断を下せるのは、会社の全体を見ている社長だけです。




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