昨今の原材料費やエネルギー価格の高騰は、食品業界全体に大きな影響を与えています。
自社の商品を守り、従業員の生活を守るため、やむを得ず値上げに踏み切ったというお話も
頻繁に耳にするようになりました。
飲食店を経営されている社長様の中には、重い決断で価格改定に踏み切った方も少なくないでしょう。
しかし、値上げをした後、どうも客足が鈍い。売上が思うように回復しない。
そんな状況に直面し、やはり値上げがお客様を遠ざけてしまったのだろうか、と頭を悩ませてはいませんか。
もちろん、価格がお客様の来店動機に影響を与えることは事実です。
ですが、もし売上減少の原因を値上げという一つの理由だけに押し込めてしまうと、
お店が本当に抱えている課題を見過ごしてしまうかもしれません。
今回は、値上げという厳しい決断をした今だからこそ、改めて見つめ直したい、
お店の基本的な価値について、やさしく紐解いていきたいと思います。
お客様がお店を選ぶ本当の理由
そもそも、お客様はなぜ特定のお店を選んで足を運んでくれるのでしょうか。
それは、支払う価格に対して、満足できる価値を感じているからです。
その価値とは、料理のおいしさはもちろん、お店で過ごす時間の心地よさや、
特別な体験など、様々な要素が組み合わさってできています。
値上げは、この価格と価値のバランスをお客様が改めて考える、一つのきっかけになります。
例えば、以前は1000円で満足していたランチが1200円になったとします。
このときお客様は無意識のうちに考えます。このお店のランチは、
1200円を支払う価値があるだろうか、と。
もし、値上げ後も変わらず多くのお客様に支持されているお店があるとしたら、
そこには価格以上の魅力的な価値が確かに存在しているのです。
反対に、お客様が離れてしまったのだとしたら、それは値上げそのものではなく、
価格に見合う価値を提供できていない、というサインなのかもしれません。
原因を値上げのせいだけにして思考を止めてしまうのは、非常にもったいないことです。
それは、お店がもっと素敵に、もっとお客様に愛される場所に成長できるチャンスを、
自ら手放してしまうことと同じだからです。
もう一度見つめ直したい3つの基本
では、お客様が感じる価値とは、具体的にどのようなもので構成されているのでしょうか。
飲食店の経営において、古くから大切にされているQSCという考え方があります。
これは、Quality(品質)、Service(接客)、Cleanliness(清潔さ)の頭文字を取ったものです。
この3つの要素は、お店の土台となる非常に重要なものです。売上が落ち込んでいる時こそ、
この土台が少しでも揺らいでいないか、丁寧に見直してみる必要があります。
1.Quality(品質・味)は進化していますか
価格は上がったけれど、提供する料理の品質は以前と変わらない、
あるいはそれ以上になっているでしょうか。
値上げをしたのですから、品質が向上しているのは当然、と思われるかもしれません。
しかし、日々の忙しさの中で、無意識のうちに品質が低下しているケースは意外と多いものです。
・盛り付けは美しいですか。以前よりも少し丁寧に盛り付けるだけで
・お客様の満足度は大きく変わります。
・食材の質は維持できていますか。コスト削減を意識するあまり、
気づかないうちに食材のグレードを落としていませんか。
・味は安定していますか。調理担当者が変わったり、レシピを簡略化したりすることで、
お店の命である味がぶれてしまうことがあります。
値上げをきっかけに、この価格でも食べたい、とお客様に感じていただけるような、
圧倒的な品質を追求する。その真摯な姿勢は、必ずお客様に伝わります。
2.Service(接客・おもてなし)の心は伝わっていますか
お店の扉を開けた瞬間、お客様は何を感じるでしょうか。スタッフの明るい笑顔と、
いらっしゃいませ、ありがとうございます、といった活気のある声。
それだけで、お客様の心は温かくなるものです。
どんなに美味しい料理を提供していても、接客の印象が悪ければ、お客様の満足度は大きく下がってしまいます。
・スタッフの皆さんに笑顔はありますか。忙しさに追われ、真顔で対応していませんか。
・お店に活気はありますか。スタッフ同士の私語が多かったり、だらだらとした雰囲気だったりすると、
お店全体の空気も澱んでしまいます。
・お客様への感謝の気持ちは伝わっていますか。お帰りの際、ありがとうございました、
という一言に、心はこもっていますか。
特に、長年通ってくださる常連のお客様に対して、慣れからくる対応の簡略化が起きていないかは注意が必要です。
一人ひとりのお客様を大切に思うおもてなしの心こそ、価格では測れない、お店の大きな価値となるのです。
3.Cleanliness(清潔さ)は徹底されていますか
清潔であることは、飲食店にとって最低限のルールであり、お客様が安心して食事を楽しむための大前提です。
お店の経営者自身は、毎日見ているためなかなか気づきにくい部分かもしれませんが、初めて来店したお客様は、
驚くほど細かいところまで見ています。
・テーブルや床は清潔ですか。食べこぼしや油でべたついていませんか。
・お手洗いは気持ちよく使えますか。こまめな清掃が行き届いているかは、お店の姿勢が最も表れる場所の一つです。
・メニューブックはきれいですか。お客様が最初に手に取るものです。手垢や汚れが付着していると、
それだけで食欲が減退してしまうかもしれません。
・調味料入れやテーブルの上の備品は清潔ですか。意外と見落としがちな部分です。
隅々まで磨き上げられた空間は、それだけでお客様に、このお店は信頼できる、という安心感を与えます。
お金をかけなくても、少しの気配りと手間で、お店の印象は格段に向上するのです。
お客様の声なき声に耳を澄ませる
多くのお客様は、お店に対して多少の不満があっても、それをわざわざ口に出してはくれません。
黙ってお店を去り、二度と戻ってこない。これが最も静かで、最も恐ろしいお客様の反応です。
では、どうすればお客様の本音を知ることができるのでしょうか。
ヒントは、インターネット上にあふれています。口コミサイトや個人のSNSには、
お客様の率直な意見が書かれていることがあります。中には厳しい意見もあるかもしれませんが、
それはお店をより良くするための貴重な贈り物です。真摯に受け止め、改善につなげていきましょう。
また、店内にアンケート用紙を設置してみるのも良い方法です。直接は言いにくいことでも、
紙の上になら書いてくれるかもしれません。
そして何より大切なのは、常連のお客様との日々のコミュニケーションです。最近いかがですか、
何かお気づきの点はございませんか、といった何気ない会話の中に、
お店の課題を解決するヒントが隠されていることは少なくありません。
時には、第三者の専門家に店舗診断を依頼し、客観的な視点からアドバイスをもらうことも有効です。
内部の人間だけでは気づけなかった、新たな発見があるかもしれません。
まとめ:信頼という名の土台を、もう一度
売上の減少に直面すると、どうしても視野が狭くなりがちです。しかし、そんな時こそ、一度立ち止まり、
自分のお店の足元を見つめ直す絶好の機会と捉えてみてはいかがでしょうか。
値上げは、お客様が離れる直接的な原因ではないかもしれません。
それは、これまで見過ごされてきたお店の小さな課題が、価格というフィルターを通して浮き彫りになった結果、
と考えることもできます。
料理の品質を磨き、心のこもったおもてなしを届け、どこまでも清潔な空間を保つ。
この飲食店の基本であり、王道であるQSCのレベルをもう一度見直し、徹底的に高めていくこと。
それこそが、失いかけたお客様の信頼を取り戻し、価格以上の価値を感じていただくための、
最も確実な道です。
食品メーカーの立場としても、丹精込めて作った自社の商品が、最高の状態で、
笑顔のお客様の元へ届くことを心から願っています。そのためにも、
商品が届けられる飲食店の皆様の成功は、
非常に重要なのです。
お店の根幹となる価値を高めていく地道な努力は、必ずお客様に伝わり、
お店を以前にも増して輝かせてくれるはずです。
もし、自社の店舗の課題がどこにあるのか分からない、客観的な意見が欲しいと感じた時には、
どうぞお気軽にご相談ください。食品業界の販路開拓を支援する専門家として、
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