販路開拓専門家の伊藤です。
「伊藤さん、また売場から外されたよ。あんなに通って、展示会でも名刺交換して、サンプルも山ほど送ったのにな。
結局、大手には勝てないのかね……」
地方の小さな食品会社の社長から、こんな絞り出すような声をよく聞きます。
せっかくスーパーの担当者に気に入ってもらって、道の駅の目立つ場所に置かせてもらっても、半年、一年と経つうちに、
いつの間にか端っこに追いやられ、最後には「最近動いてないから」と、返品の山と一緒に帰ってくる。
正直、きついですよね。
自分の子供のように育てた商品が、誰にも見向きもされずに戻ってくるのは、売上が下がる以上のショックがあるはずです。
ここで「営業担当の根性が足りない」とか「もっと足しげく通わせなきゃ」と考えるのは、ちょっと待ってください。
実は、売場が減っていくのには、現場の頑張り以前に、経営者である社長の「ある判断」が隠れていることが多いんです。
今日は、売場が減り続ける会社と、逆にじわじわと根を張るように増えていく会社、
その決定的な違いについて、泥臭い現場の話をさせてください。
「安くするから置いて」という判断の代償
売場が減る会社の一番の共通点は、入り口が「価格」になっていることです。
例えば、地元のスーパーの新規開店や、大きな改装のタイミング。
「今回だけでいいから、定価の5割引きで卸してよ。その代わり、目立つ場所に並べるから」
この誘いに乗っていませんか。
社長としては、まずは知ってもらうことが大事だ、赤字じゃなければいい、と判断して判を押します。
ところが、これが命取りになります。
10%〜20%の値引きが当たり前になる
次の特売では「もっと安く」と要求される
隣に10円安い競合が来たら、一瞬で切られる
数字で見てみましょう。
あるお漬物メーカーさんは、売上の40%を一軒の量販店に頼っていました。
最初は「特別価格」で入り込み、売場を大きく確保できましたが、2年目にはさらに5%の値下がりを要求されました。
断れば、その40%の売上が消える。飲めば、利益が消えて従業員の給料が払えない。
結局、無理に継続しましたが、商品はどんどん「安いから買うもの」になり、お客様の飽きが来た瞬間にバッサリ切られました。
「値段で選ばれたものは、値段で捨てられる」
これは鉄則です。社長が「安さ」を武器に売場を獲りに行くと決めた瞬間、その売場の寿命はカウントダウンが始まっています。
商品の種類を増やしすぎて、自滅する
「一つがダメでも、種類を増やせばどれか当たるだろう」
これも、小さな会社の社長が陥りやすい罠です。
ドレッシングを1種類出したら、次は醤油、その次はタレ、その次はふりかけ……。
展示会のブースを華やかにしたい、という気持ちはわかります。
売場を管理する人からすると、これは「扱いづらい会社」の典型なんです。
想像してみてください。
スーパーの置き場一区画に、御社の商品が5種類並んでいる。
どれが一番の自信作で、どれが一番売れているのか、社長である御社自身も即答できない。
そうなると、お店側も「とりあえず全部置いてみたけど、どれも中途半端だね」となり、
結局、売れ行きの悪いものから順番に削られ、最後には全滅します。
売場が増える会社は、逆に「これだけは負けない」という本命の商品を1つか2つに絞っています。
「うちの主力は、この300円の味噌です。これ以外は、この味噌を美味しく食べるための脇役です」
と言い切れる会社の方が、場所は守りやすい。
売上比率で言えば、1つの商品で全売上の7割を稼ぐような図太い形を目指すべきです。
あれこれ手を出して、全部が売上5%ずつ……という状態は、一番危ない。
「置いてもらって満足」で終わっていないか
「導入が決まった! 万々歳だ!」
社長がそう言って営業担当と祝杯を挙げているとき、実は現場では崩壊が始まっています。
売場が減る会社は、商品を「納品すること」がゴールになっています。
対して、売場が増え続ける会社の社長は、「納品した後の3ヶ月」を誰よりも気にしています。
1週間で何個売れたか(続けて買ってもらえているかの確認)
置いている高さは、お客様の目線に入っているか
隣に並んでいる商品は何か
例えば、あるお菓子メーカーの社長は、月に一度、あえて自分一人で納品先の道の駅を回ります。
営業として行くのではありません。一人の客として、自分たちの商品がどう扱われているかを見に行くんです。
「あぁ、紹介の紙が埃をかぶってるな」
「隣に強力なライバルが並んで、うちのが色褪せて見えるな」
これに気づけるのは、社長だけです。現場の営業担当は「数字」を報告しますが、売場の「空気感」は報告しません。
売れ行きが悪くなってきたとき、先回りして「こういう食べ方の紹介をしましょうか」とか
「少し場所をこっちに変えませんか」と話せる会社は、お店の人からも信頼されます。
「あそこの社長は、うちの店のことをよく見てくれている」
この信頼関係こそが、場所を外されない一番の守りになります。
売場が消える「前ぶれ」を、社長は掴んでいるか
売場は、ある日突然ゼロになるわけではありません。必ず、売上が下がるような前兆があります。
注文のタイミングが、中2日から中4日に伸びる
お店の担当者からの連絡が、電話からメール(事務的)になる
「賞味期限、大丈夫ですよね?」という確認が増える
こういう変化が起きたとき、多くの社長は「もっと営業に行け」と指示を出します。
けれど、そうではありません。
その売場が、今の御社の商品に合っているのか。無理をして背伸びをして置いていたのか。
社長が判断をし直すタイミングなんです。
無理な売場を保つために、無理な値引きをし、無理なお金をつぎ込む。
これを続けていると、会社全体の体力が削られます。
小さな会社にとって一番怖いのは、売上が下がることではなく、
「利益の出ないことに時間を奪われ続けること」です。
社長、今日、このあと30分だけ時間を作ってください
難しい理屈なんて、今日はいりません。
自社の今の姿をじっと見るだけでいいんです。
まずは、メモ帳を広げて、以下のことを書き出してみてください。
ステップ1:今の「太い取引先」を3つ書く
現在、ずっと注文が来ている場所を3つ選んでください。
そして、「なぜ、そこでは売れ続けているのか」を考えてください。
「担当者がいいから」という理由以外を探してください。
「買いに来る客層が合っている」「値段がちょうどいい」「近くに似たような商品がない」など、
具体的な理由です。
ステップ2:最近「減った売場」を3つ書く
最近、扱いが小さくなった、あるいは取引が止まった場所を3つ選んでください。
そして、「最初、どういう約束でそこに入り込んだか」を思い出してください。
「無理な値引きをしていなかったか」「相手の顔色を伺いすぎていなかったか」。
ステップ3:社長が「NO」と言うべき場所を決める
書き出してみると、驚くほど共通点が出てくるはずです。
売場が増える理由は、御社の「本当の強み」です。
売場が減る理由は、御社が「やってはいけないこと」です。
売場を増やすというのは、新しい店を駆けずり回ることではありません。
「今、うまくいっている理由」を、別の場所で再現することです。
社長の仕事は、全部を取りに行くことではありません。
「ここでは戦わない」と決めることです。
今の売場が値引き合戦で疲弊しているのなら、社長である御社が「その売場はもういい。
次に行こう」と言ってあげてください。
その一言が、会社を救い、新しい健康な売場を増やす第一歩になります。
さあ、社長。
まずは「あの最近注文が減ったな」と感じている取引先の伝票を、一枚めくってください。
そこに、次の判断のヒントが必ずあります。
以上です。
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