失敗から学ぶ!食品会社が「次の危機」を乗り越えるための販路開拓戦略


「また同じことを繰り返してしまうのではないか」。そうした不安を抱えている食品会社の社長さんもいらっしゃるのではないでしょうか。
特に、一度経験した事業の停滞は、次に何が起きるかわからない時代において、大きな懸念材料となります。

今回は、水産加工会社の事例をもとに、中小企業がどのようにして変化に対応し、
持続的な成長を遂げていくべきかについて考えていきましょう。

コロナ禍で直面した危機と新たな挑戦

福井県に本社を構える従業員5名の水産加工会社は、長年、観光バスで訪れる観光客向けに食事や土産物の提供をしていました。
仲買機能も持っており、安定した経営を続けていたのです。
新型コロナウイルス感染症のパンデミックにより、状況は一変しました。観光客の足が途絶え、本業である観光バス向けの事業はほぼ停止。
売上は激減し、会社は存続の危機に瀕しました。

この未曾有の事態に対し、社長は新たな活路を見出そうと決断します。これまでは、主に観光地での直接販売や、
一部の業者向け卸売が中心でしたが、自社で加工した水産品を、一般消費者が自宅で楽しむことを想定し、
首都圏の個人消費者向けに販売する販路開拓に着手したのです。具体的には、オンライン販売の導入や、首都圏の小売店への営業活動など、
精力的に新たな取り組みを進めていきました。

新たな挑戦の停止と残された課題

新たな販路開拓の努力が少しずつ実を結び始めた頃、事態は再び大きく動きました。新型コロナウイルスの感染状況が落ち着き始め、
観光客が戻り始めたのです。それに伴い、本業である観光バス向けの事業も徐々に回復していきました。

この回復は喜ばしいことであるはずでした。その一方で、これまで進めてきた首都圏への販路開拓の動きは、完全にストップしてしまったのです。
従業員5名という限られたリソースの中で、本業の回復に人員を割かざるを得ず、新たな取り組みにまで手が回らなくなったのが実情でした。

社長は当時を振り返り、こう語っています。「せっかく新しい動きを始めたのに、本業が戻ってきたらそちらに集中せざるを得ませんでした。
もう少しでも新しい動きを続けていれば、今とは違う状況になっていたかもしれません。人数も少ないので仕方ないことですが、
また同じようなことが起きたらと思うと心配です」。
(本音は社長自身が新しい取り組みに自信がなったのです)

この事例は、中小企業が陥りがちなジレンマを浮き彫りにしています。目の前の危機を乗り越えるために新たな挑戦をするものの、
本業が回復すると、そちらに注力してしまい、せっかく始めた新しい芽を摘んでしまうという状況です。

失敗から学ぶ「持続可能な販路開拓」の視点

この水産加工会社の事例から、私たちは何を学ぶことができるでしょうか。


1. リソース配分の最適化と優先順位付け

従業員が少ない中小企業にとって、リソース(人材、時間、資金)は常に有限です。緊急時には目の前の危機に対応せざるを得ないのは当然ですが、
平時から「もしも」の時に備えたリソース配分のシミュレーションをしておくことが重要です。

例えば、

  • 専任担当者の育成: 新規事業や販路開拓は、片手間ではなく、ある程度の時間を割いて取り組む必要があります。
    たとえ少人数でも、特定の担当者を決め、その業務に集中できる環境を整えることが理想です。
  • 外部リソースの活用: 社内にノウハウや人材がない場合、無理に自社だけで解決しようとせず、外部の専門家や支援機関の活用を検討しましょう。
    私たちのような販路開拓支援の専門家や、地域の商工会議所、中小企業診断士など、多様なサポートがあります。
  • 段階的なアプローチ: 一度にすべてを変えようとせず、小さく始めて成功体験を積み重ねる「スモールスタート」を意識することが大切です。
    例えば、最初はオンラインショップのテスト販売から始める、特定の地域に絞って営業するなど、リスクを抑えながら進める方法があります。

2. 多角的な販路の構築とリスク分散

一つの販路に依存することは、安定している時には良いのですが、変化が起きた際に大きなリスクとなります。
観光客向けのビジネスがストップした際に、そのリスクが顕在化しました。

複数の販路を持つことで、リスクを分散し、経営の安定化を図ることができます。

  • オンライン販売の強化: 実店舗や観光客に依存しない販路として、ECサイトの構築や大手ECモールへの出店は、
    地方の食品会社にとって非常に有効です。地理的な制約を超えて全国の消費者にアプローチできるため、
    コロナ禍のような状況でも事業を継続する基盤となります。
  • 多様な取引先の開拓: 従来の仲買や特定の取引先だけでなく、スーパーマーケット、百貨店、ホテル、レストラン、学校給食など、
    幅広い業種や規模の取引先と関係を築くことで、特定の販路が停滞しても他の販路でカバーできる体制を構築できます。
  • 新たな市場への挑戦: 国内だけでなく、海外市場への輸出も視野に入れることで、さらなる成長の可能性が広がります。
    もちろんハードルは高いですが、特定の国や地域に限定せず、少しずつ情報を収集し、可能性を探ることも大切です。

3. 「やめない」ための仕組みづくり

この事例の社長が悔やんだのは、「せっかく新しい動きを始めたのに、継続できなかったこと」でした。
新しい挑戦を「やめない」ためには、仕組みづくりが不可欠です。

  • 目標の明確化と進捗管理: 「なんとなく」新しいことを始めるのではなく、具体的な目標(例:〇年後に首都圏での売上を〇%にする)を設定し、
    定期的に進捗を確認する仕組みを作りましょう。
  • ルーティンへの組み込み: 新しい取り組みを「特別なこと」ではなく、日常の業務ルーティンの一部に組み込む意識が重要です。
    例えば、毎週〇曜日はオンライン販売の管理に充てる、月に一度は新規開拓の会議を行うなど、継続できるような習慣化を図ります。
  • 情報共有と意識統一: 社長だけでなく、従業員全体で会社の状況や新たな挑戦の意義を共有し、協力体制を築くことが大切です。
    特に少人数の会社だからこそ、全員で同じ方向を向くことで、停滞せずに前に進む力が生まれます。
  • データに基づいた意思決定: 漠然とした感覚ではなく、オンライン販売のアクセス数、顧客からのフィードバック、営業先の反応など、
    具体的なデータを収集・分析し、次の戦略に活かすサイクルを回すことで、より効果的な販路開拓が可能になります。

次の危機に備える経営戦略

今回の水産加工会社の事例は、決して特別なものではありません。多くの中小企業が、同様の課題に直面し、変化の波に翻弄されています。
この経験を単なる「失敗」で終わらせるのではなく、未来に向けた貴重な教訓として活かすことが重要です。

私たちは、食品会社の社長が抱えるこうした課題に対し、具体的な販路開拓支援を通じて、持続可能な経営体制を築くお手伝いをしています。
コロナ禍のような予期せぬ事態は、今後も起こり得るかもしれません。
その時にも柔軟に対応し、会社を守り、さらに成長させる力を今から育んでおくことが何よりも大切です。

「また同じことを繰り返したくない」という社長の強い思いを、具体的な行動と戦略に変え、明るい未来を築くために、
ぜひ私たちにご相談ください。眠っている商品の価値を最大限に引き出し、新たな市場で輝かせるお手伝いをさせていただきます。


販路開拓でお悩みの社長はすぐご相談ください
きっとお役に立てます
セミナー講師や取材出演のご依頼も承ります
【お問い合わせはこちら】