食品会社の社長からよく聞くのが「ブランディングをしたい」という声です。
実際には「具体的に何をすればいいのか」となると、答えられる人は多くありません。
大手企業のように多くの費用を広告にかけることもできない。担当者もいません。
地方の小さな食品会社にとっては「ブランディング」という言葉自体がどこか遠い存在に聞こえるかもしれません。
結論を先に言えば、食品会社にとってのブランディングはとてもシンプルです。
それは 「自社は何屋なのかをお客さんやバイヤーにハッキリ覚えてもらうこと」。
これだけです。
なぜ「何屋か」を覚えてもらうことが重要なのか
お客さんは毎日忙しく、あなたの会社の商品にだけ集中してくれるわけではありません。
そんな中で「いろんな商品を作っています」と説明しても、
結局「よくわからない会社」として記憶から消えてしまいます。
逆に、一言で伝わる会社は強い。
「京都のお土産といえば八ッ橋」
「インスタントラーメンといえば日清」
「食品の販路開拓といえば伊藤」
このように「〇〇といえば□□」と頭に浮かべてもらえれば、思い出されるたびに売上につながります。
実際に成功した食品会社の例
新潟にある小さなお菓子屋さんは、最初「焼き菓子・和菓子・洋菓子」と幅広く取り扱っていました。
ところが、展示会や商談で「いろいろ作っています」と言ってもバイヤーの記憶に残らない。
売上も伸び悩んでいました。
そこで社長は思い切って「うちは地元産米粉シフォン専門」と名乗るようにしました。
名刺にも、看板にも、ホームページにも、その言葉を大きく入れました。
商談やイベントの自己紹介でも必ず「地元産米粉シフォン専門です」と繰り返しました。
最初の1回、2回はほとんど反応がありませんでした。
3回目くらいから「そういえばあのお菓子屋さんは米粉シフォンの専門だったな」と
言ってもらえるようになり、やがて首都圏百貨店の催事出店につながりました。
結果的に、地元の農産物を活かしたシフォンケーキという独自性が評価され、
今では月に1回は安定して催事に呼ばれるようになっています。
この例からもわかるように、ブランディングは大きな投資やデザインではありません。
「何屋か」を決めて言い続けることこそが、販路拡大の入口になるのです。
「〇〇といえば□□」が売上につながる4つの理由
- 思い出されるから買われる
忘れられている会社の商品は、どんなに品質が良くても売れません。
逆に一言で覚えられていれば、選ばれる確率が上がります。 - 値引きせずに売れる
「その会社の商品だから欲しい」と思われれば、単なる値段比較から抜け出せます。
結果として、利益率の高い販売が可能になります。 - 新しい販路が開ける
バイヤーは「専門性のある会社」を求めています。展示会や商談で「〇〇といえば□□」と説明できれば、
相手にすぐ伝わり取引が進みやすいのです。 - リピートが増える
消費者は「またあれを買おう」と思うとき、商品名や会社名ではなく「イメージ」で思い出します。
「地元の柚子ポン酢」と覚えられれば、リピートが安定して増えます。
今日からできるブランディング実践法
- 何屋かを一言で決める
「出雲の薬草スイーツ屋」
「米麹甘酒の専門醸造所」
「地元野菜のジャム屋」
これが決まらなければ何も始まりません。 - 名刺・ホームページ・看板に載せる
決めた一言を必ず使いましょう。
名刺 → 肩書きに「〇〇町の△△屋」と入れる
ホームページ → トップに「〇〇といえば□□食品」と大きく表示する
展示会 → ブースの一番目立つ場所に貼る - 商品や売り方を合わせる
言ったことと実物が違っては意味がありません。
「高級」と言うなら → 包装や価格も高級に
「健康志向」と言うなら → 原材料や表示を徹底的に透明化
「地元密着」と言うなら → 地域イベントに必ず出る - 地域で露出を増やす
商工会の会報に載せてもらう
道の駅や地元スーパーで販売する
地域イベントや新聞に顔を出す - 社長が繰り返す
社員任せにせず、社長自身が口に出して繰り返すこと。
商談の第一声
地域の会合
セミナーや展示会
社長の言葉こそ、最も強いブランドメッセージになります。
まとめ
小さな食品会社にとってブランディングは難しいことではありません。
大事なのは、
- 何屋かを一言で決める
- どこでもその一言を繰り返す
- 商品や売り方を揃える
- 地域で露出を積み重ねる
- 社長が自分の口で言い続ける
これだけです。
新潟のお菓子屋さんのように「〇〇といえば□□」を決めて言い続ければ、必ず販路は広がります。
ブランディングとは、広告費やデザインに大金をかけることではなく、覚えてもらう仕組みをつくることなのです。
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