食品の販路開拓専門家・伊藤晴敏です。
年末年始商戦が終わると、食品会社の社長は一気に現実に引き戻されます。
製造は通常運転に戻り、出荷量も落ち着く。
一方で、年末年始に先送りしていた判断や宿題が、静かに積み上がっていきます。
この時期の社長はとにかく多忙です。
日々の製造管理。
出荷段取り。
在庫調整。
原料の手配。
取引先対応。
年末年始は気合と身体で乗り切れたとしても、その反動は必ず出ます。
頭が回らない。
判断が遅れる。
気づけば一月が終わっている。
この流れに心当たりのある社長は多いはずです。
年末年始商戦後の戦略と言われても、腰を据えて考える余裕はない。
多くの社長がそう感じています。
だからこそ、この時期の戦略は「深く考えない」ことが重要です。
難しい計画はいりません。
新しい挑戦もいりません。
やることを少し整理するだけで十分です。
年末年始商戦後の戦略の目的は、売上を一気に伸ばすことではありません。
社長の判断を軽くすることです。
迷いを減らすことです。
まず最初にやるべきことは、年末年始商戦の振り返りです。
細かい数字分析は不要です。
社長自身の実感を整理してください。
忙しかったか。
利益は残ったか。
現場は疲弊していないか。
自分自身は納得しているか。
この四つを自分に問いかけるだけで十分です。
年末年始商戦は、売上を作りやすい反面、無理が表に出にくい時期です。
価格条件を飲んでしまう。
短納期を受けてしまう。
イレギュラー対応が当たり前になる。
年末年始が終わってから、そのツケが回ってくる会社は少なくありません。
次に整理したいのは、取引先ごとの負荷です。
売上の大小だけで判断してはいけません。
重要なのは、どれだけ社内の時間とエネルギーを使ったかです。
売上は立ったが、現場が限界だった取引。
社長自身がずっと対応に追われた取引。
こうした取引は、年末年始商戦後に見直す対象です。
見直すと言っても、取引を切る必要はありません。
優先順位を下げる。
対応スピードを通常に戻す。
条件交渉を後回しにする。
それだけでも、社長と現場の負担は大きく減ります。
年末年始商戦後の戦略で重要なのは、全部を続けないことです。
忙しかった理由を、そのまま引きずらないことです。
次にやるべきは、商品と販路の整理です。
年末年始に動いた商品が、通年でも主力になるとは限りません。
ギフト向け商品。
季節限定商品。
催事専用商品。
これらは年末年始に力を発揮します。
一方で、通常期の売上と利益を支える商品は別に存在します。
年末年始商戦後は、通年で売上と利益を積み上げる商品と販路に意識を戻す時期です。
高回転で回るか。
発注が安定しているか。
価格交渉が少ないか。
ここを整理せずに新規営業へ動くと、同じ疲れ方を繰り返します。
食品の販路開拓でよくある失敗は、忙しい時期の成功体験をそのまま引き延ばすことです。
年末年始に売れた。
引き合いが多かった。
だからこのやり方でいこう。
この判断が、後々社長と現場の首を絞めます。
年末年始商戦後は、営業を止める時期ではありません。
営業のやり方を整える時期です。
誰に売るのか。
どの商品を軸にするのか。
どの条件なら受けるのか。
この三つを、社長の頭の中で一度整理してください。
紙に書き出す必要はありません。
完璧である必要もありません。
整理ができていない状態で現場に指示を出すと、営業は迷います。
迷った営業は、結果として「できません」で終わります。
これがゼロ回答の正体です。
年末年始商戦後は、社長が現場を守る時期でもあります。
気合や根性で動かせば、短期的な数字は作れます。
長期的には人が疲れます。
社長がやるべき仕事は、現場が迷わない状態を作ることです。
判断基準を用意することです。
ここで一つ、年末年始商戦後の戦略をうまく回している事例を紹介します。
大分県にある小さなお菓子メーカーの話です。
従業員は、社長と奥さん、パートが三名。
決して規模が大きい会社ではありません。
この会社の特徴は、社長の習慣にあります。
毎年十二月になると、必ず年明け以降のスケジュールをノートに書き出します。
月単位ではありません。
四半期ごとです。
一月から三月。
四月から六月。
七月から九月。
十月から十二月。
それぞれの期間で、何をやらないか。
何を優先するか。
どの仕事に時間を使うか。
これを社長自身が手書きで整理します。
細かい計画は書きません。
展示会に出るかどうか。
新商品を動かす時期かどうか。
既存取引を深める期間かどうか。
大枠だけを決めています。
この習慣を続けた結果、この会社では年明けに慌てることがありません。
忙しい時期でも、社長の頭の中に全体の流れがあります。
だから判断が早い。
無理な話には無理と言える。
現場も振り回されません。
社長はこう言います。
先を見ていると、今やらなくていいことがはっきりする。
年末年始商戦後に成果を出す会社は、新しいことを増やしていません。
やらないことを決めています。
この大分のお菓子メーカーも同じです。
年末年始商戦後に四半期単位で流れを考える。
それだけで、売上と現場の安定が両立しています。
最後にお伝えしたいことがあります。
年末年始商戦後に、何も新しいことを始めなくても問題ありません。
むしろ、始めないほうがいいケースも多い。
大切なのは、頭の中が整理された状態で次の時期を迎えることです。
それだけで、春先の動きは大きく変わります。
年末年始商戦後は、静かに立て直す時間です。
社長自身のための時間です。
この時間をどう使うかで、一年の流れは決まります。
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