売り込みは逆効果?食品会社が知っておくべき「強い気持ち」の本当の意味


「営業は気合だ!」

そう言われると、ついつい声の大きさを競ったり、ぐいぐい押したりすることが良いことだと
思ってしまいがちです。
でも、食品を扱っている社長にとって、その考え方は少し危険かもしれません。

なぜなら、やみくもに売り込むほど、バイヤーとの間に距離ができてしまい、
せっかくのチャンスを逃してしまうことにもつながりかねないからです。

この記事では、食品の営業活動における強い気持ちの本当の意味と、
バイヤーとの信頼関係を築きながら売上を伸ばすための秘訣についてやさしくお伝えしていきます。

混同しがちな「売り込み」と「強い気持ち」の違いまずは、この二つをはっきりさせておきましょう。

売り込みとは、お客様の都合や状況を考えずに、「うちの商品をぜひ買ってほしい!」と
自社の都合だけで一方的に提案することです。

一方、食品の営業で大切な強い気持ちとは、決して声が大きいことではありません。
それは、お客様が抱えている課題を解決し、品質や安全を第一に考えながら、
「必ずお客様に良い結果を届けたい!」と心の中で強く決意することなのです。

この二つは、まったく違うものだということを覚えておいてください。

なぜ食品では売り込みが逆効果になるのでしょうか?食品を扱う会社さんにとって、
売り込みが逆効果になってしまうのにはいくつかの理由があります。

  1. 食品は「身体に入るもの」だから
    お客様が商品を手に取る一番の理由は、それが安全でおいしいものだと信じているからです。
    焦らせるような強引な提案は、「何か隠していることがあるのでは?」と
    バイヤーに不安を感じさせてしまい、せっかくの信頼を台無しにしてしまいます。
  2. 導入にはたくさんの部署が関わるから
    食品がお店に並ぶまでには、試食のチェック、原価の計算、売り場の調整など、
    本当にたくさんの部署が動いています。
    「すぐに決めてください!」という一方的な要求は、社内のスムーズな流れを妨げてしまい、
    かえって反感を買うことになりかねません。
  3. 継続的なお付き合いが大切だから
    食品の営業では、一度買ってもらって終わりではありません。
    欠品を出さないための安定した供給や、トラブルが起きたときの素早い対応など、
    長くお付き合いするための信頼関係が一番大切です。
    短期的な売り込みは、この長期的な信頼を損なうことにつながってしまいます。
  4. バイヤーはいつも忙しいから
    お店のバイヤーは、毎日たくさんの会社から提案を受けています。
    ただ商品を売り込むだけの話は、残念ながらすぐに忘れられてしまいます。
    バイヤーの心に残るのは、「この人は私たちの課題を本当に考えてくれている」と感じさせるような、
    買い手の気持ちを理解した提案だけです。

強い気持ちを行動に変える5つのステップ
では、お客様の信頼を勝ち取るための強い気持ちを、具体的な行動にどうやって変えていけば良いのでしょうか。

ここでは、そのための5つのステップをご紹介します。

ステップ1:目的の設定
面談の目的を「初回受注」にするのではなく、「1年後も安定してお付き合いを続けていくこと」に
変えてみましょう。ゴールも「商品を発注してもらうこと」ではなく、「バイヤーに感謝されるメーカーになること」に
焦点を当ててみてください。

ステップ2:事前のヒアリング
バイヤーとの商談前に、いくつか質問を用意しておきましょう。
「売り場を変えるタイミングはいつか」「どんなお客様に来てほしいか」など、
お店の現状や目標を深く知るための質問を準備しておくと良いでしょう。

ステップ3:根拠となる資料をしっかり準備する
商品の安全性や品質を証明するための資料は、バイヤーに安心してもらうためにとても重要です。
規格書やアレルギー情報、検査の結果はもちろん、どれくらいの量を届けられるか、
どれくらいの期間で届けられるかといった納期など具体的な数字も準備しておきましょう。

ステップ4:体験をデザインする
試食は、ただ食べてもらうだけの時間ではありません。「どんな風に食べてもらえば、商品の良さが伝わるか」を
しっかり考えてみましょう。
例えば、「他社の商品と比べてみるときの基準」や「一番おいしいと感じてもらうための温度」、
「試食の食器」などを工夫するだけで、商品の魅力がぐっと伝わりやすくなります。

ステップ5:まずは小さく始めてみる
いきなりすべてのお店で展開してもらうのではなく、まずは1つのお店や期間限定でテスト販売を提案してみましょう。
そして、販売の様子を写真に撮ったり、売れた数をしっかり記録したりして、
「どこを改善すればもっと良くなるか」をバイヤーと一緒に考えていくことで、
信頼関係を築くことができます。

良い提案とそうでない提案の例
ここからは、具体的なトークの例を見てみましょう。
NGな例
「この商品は絶対売れます。すぐに全店導入でお願いします」
この言い方では、バイヤーは「売り手の都合を押し付けられている」と感じてしまいます。

OKな例
「夕方の時間帯に、お客様の回転率が少し下がると聞きました。
そこで、常温で3カ月、解凍後2日保持できる当社の商品で、18時台の回転を10%上げる検証を1店舗で実施しませんか。
製造キャパは毎週2,000パックまで即応可能です。評価指標は回転・廃棄・客単価で合意いただければ、1週間で準備します」
(この提案方法は高度で自社の力量によって考えます)

このように、バイヤーが抱える課題を解決するための具体的な方法を提案することが大切です。

現場で役立つチェックリスト
バイヤーとの商談する前に以下の項目をぜひチェックしてみてください。

相手の会社の決済の仕組みや、支払条件は知っていますか?
他の会社の商品と比べて、自分の商品の良いところを「味」以外で3つ以上説明できますか?
欠品が出たときや、商品の仕様が変わったときに、どうやって連絡するかをまとめた資料はありますか?

食品の営業で成果を上げる一番の近道は、「押すこと」ではなく、
バイヤーとの信頼をじっくりと育んでいくことです。

そうすれば、商品の良さは自然と伝わり、発注量はきっと増えていくはずです。
自社の都合で目先の利益を重視してはいけません。


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