食品の販路開拓専門家・伊藤晴敏です。
きょうは、新規案件が来ても社長が動けなくなる理由を深く書きます。
サンプルを出さない
見積を返さない
連絡が止まる
この三つは食品会社の支援現場で頻繁に起きています。
怠慢ではなく、食品という仕事特有の心理が重なって動きを止めています。
全国の食品会社を回ってみると、同じ場面を何度も見ます。
担当者から前向きな依頼が来た。
商品に興味を持たれた。
売り場で紹介したいと言われた。
会社にとって大きなチャンスなのに、気持ちが乗らず動けない。
返事が遅れ、気まずくなり、そのまま案件が消える。
食品の現場ではこの流れが毎月のように起きています。
食品は社長の人生そのものです。
原料の吟味
味の追求
衛生管理
製造現場の苦労
これらの積み重ねを商品にのせて売場に出します。
商品を評価される瞬間は、自分自身を評価されるような緊張が生まれます。
この緊張が心のブレーキになります。
まず一つ目の理由は忙しさです。
食品会社の現場は一日中止まりません。
火入れのタイミング
計量の確認
賞味期限の管理
冷蔵冷凍の温度調整
原料入荷の立ち会い
欠品防止の段取り
これらが絶えず押し寄せます。
この状態で新規案件に向き合うと頭が切り替わりません。
後でやろうと思ううちに数時間が過ぎ、気づけば翌日になります。
返事がしにくくなり、案件が遠ざかります。
二つ目の理由は自信の揺れです。
食品は味が全てと言われる世界です。
担当者の表情一つで気持ちが上下します。
この味で本当に勝負できるのか
競合が強い売場で採用されるのか
原価と価格のバランスは妥当なのか
自信が揺れる瞬間、体は止まります。
商品の評価は社長の努力そのものを映すので、気持ちの負担が大きくなります。
三つ目の理由は食品ならではの準備の重さです。
サンプルを作り直す
賞味期限を確認する
冷蔵品なら発泡箱と保冷剤を用意する
常温品でも破損防止の梱包を整える
出荷伝票を書く
この作業は思っている以上に細かく、時間も気力も使います。
面倒だと感じた瞬間、行動が止まります。
四つ目は失敗の痛みです。
食品は採用か不採用かがはっきり出る商売です。
味の印象
包装の見た目
価格の納得感
ロットの大きさ
担当者との相性
小さな理由で不採用になります。
過去に断られた経験がある社長ほど慎重になります。
痛みを思い出す行為を避けようとして動きが止まります。
五つ目は成功イメージの欠如です。
人は成功の姿が見えると動きます。
食品会社の多くは取り扱い開始まで時間がかかり、成果が見えにくい期間が続きます。
未来がぼんやりしていると、案件の優先順位が自然に下がります。
動けば前に進むと分かっていても体がついてきません。
六つ目は優先順位の錯覚です。
食品会社の社長は現場に強い責任感があります。
現場が滞ると会社が止まるため、どうしてもそちらを優先します。
現場の小さな問題は次々に発生します。
段ボールの破損
ラベルのずれ
仕込み量の調整
出荷時間の繰り上がり
これらの処理が続くと新規案件が後回しになります。
身体が疲れている時に未来の仕事は動きません。
これも自然なことです。
七つ目は孤独です。
食品会社の社長は相談相手が少ないです。
販路開拓は特に孤独になりやすく、判断を一人で抱える場面が増えます。
迷いが続くほど動きが止まります。
食品はクレームリスクもあるため、社長は慎重になりがちです。
八つ目は担当者への遠慮です。
食品業界は礼儀の世界でもあります。
担当者の機嫌を損ねたくない
価格を下げてほしいと言われたらどう答えるか不安
条件を交渉するのが怖い
この気持ちが行動の腰を重くします。
九つ目は会社としての「型」がないことです。
見積のフォーマット
サンプル出荷の手順
担当者への返信テンプレート
これらが整っていないと、案件の最初の一歩が手作業になります。
判断と準備と作業が同時に必要になることで行動が遅れます。
ここまで見てきた通り
サンプルを出さない
見積を返さない
連絡が止まる
この三つは怠慢でも無関心でもありません。
食品という業界の特性と社長の心理が重なって生まれる自然な反応です。
行動を進める方法は三つです。
一つ目は行動の負担を軽くすることです。
簡単なサンプルで良い
簡潔な見積で良い
ひとまず一報だけ返す
この程度なら動きやすくなります。
二つ目は成功の姿を明確に描くことです。
月間売上の増加
取扱店舗の拡大
ブランド価値の向上
具体的にイメージすると行動がスムーズになります。
三つ目は外の視点を入れることです。
案件の判断を一人で抱えると迷いが膨らみます。
外部の視点が入ると判断が軽くなり、行動のスピードが上がります。
食品会社の社長が新規案件に消極的になる理由は能力ではありません。
心の自然な反応です。
構造を理解すると行動の量は確実に変わります。
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