営業の世界では、同じ提案をしても結果がまったく違うことがあります。
何度も訪問してやっと注文をもらえる時もあれば、一度の打ち合わせで即決になる時もある。
この差はどこから生まれるのか。
多くの社長が悩むテーマですが、実は「タイミング」がすべてを左右しているといっても過言ではありません。
食品業界では、注文のタイミングが特に重要です。
小売店や卸のバイヤーは、仕入れ計画や販促スケジュールに合わせて動いています。
同じ商品提案でも、時期がずれるだけでチャンスを逃すことがあります。
これは社長の提案能力だけではなく、相手先の事情による要素が大きいのです。
社長の立場からすれば、営業マンからタイミングのせいで受注を逃したという説明を
聞いて納得できないこともあるでしょう。
それは当然です。
毎月の売上目標がある以上、「仕方ない」と片付けるわけにはいきません。
けれど現場をよく見ると、受注のタイミングには明確なサインが存在します。
このサインを読み取れるかどうかが、営業成果を分ける決定的な差になります。
たとえば、仕入れ担当者の異動です。
内示まで進んでいた案件が、担当交代をきっかけに白紙に戻ることがあります。
先方の方針なので仕方ないですが、異動で何回商談が白紙になったことか。。。
また、年度末や期初、イベント前など、予算の動く時期には新規採用が集中します。
こうした「動き」を日ごろから察知しておくことで、提案のタイミングを合わせることができます。
社長が陥りやすいのは、自社の都合で提案を進めてしまうことです。
「今月の数字をつくるために動く」という意識が強くなると、相手のスケジュールを見落とします。
このズレが、受注を遠ざける最大の原因になります。
提案内容が良くても、相手の準備が整っていない時期にアプローチしても結果は出ません。
営業は相手のカレンダーに合わせて動く仕事なのです。
タイミングをつかむ営業は、情報収集に時間をかけています。
定期的に電話を入れ、現場の変化を聞き出す。
メールニュースやSNSで相手企業の動きをチェックする。
展示会や商談会では、他社ブースの雰囲気を観察して流れを読むことも大切です。
こうした「アンテナの張り方」が上手な人ほど、注文を逃しません。
社長としては、営業マンには「もっと行け」と言うより、「情報を拾え」と指示したほうが成果につながります。
また、食品業界は季節変動が大きい市場です。
春は新商品、夏は冷やしメニュー、秋冬はギフト需要。
こうした季節ごとの需要変化をカレンダーに落とし込み、提案時期を決めることが重要です。
取引先の販売計画と合わせて、自社の営業スケジュールを組む。
これが「タイミング営業」の第一歩です。
とくに地域食品を扱う企業は、商談の時期が1か月ずれるだけで、展示機会を逃すこともあります。
「旬」と「商談期」を一致させる意識を社内に根づかせておくことが、長期的な販路拡大の鍵になります。
さらに重要なのは、タイミングを人任せにしないことです。
「営業マンの感覚に任せる」のではなく、社長として情報を共有する仕組みを持つこと。
社内で受注・失注の履歴をまとめ、どの時期にどの提案が成功したのかを分析すれば、
再現性のある営業カレンダーが作れます。
Excelでも十分です。
大切なのは「感覚」ではなく「記録」をもとに動くことです。
タイミングをつかむには、もう一つの視点があります。
それは「相手の社内事情」です。
どんなに良い提案でも、上司の決裁が通らなければ動きません。
相手企業の会議日や決裁ルートを把握しておけば、提案の出し方を変えられます。
営業マンは「誰が決めるのか」「いつ決まるのか」をつねに意識しておくべきです。
社長としては、提案の中身よりも「時期と人」を押さえた報告を求めるだけで、営業力が一段上がります。
タイミングを読むために、日々の雑談も貴重な情報源になります。
「最近どうですか」と軽く聞くだけで、取引先の温度感がわかります。
新商品の話題や社内イベントの予定、担当者の出張スケジュールなど、雑談から得られるヒントは多い。
この積み重ねが「事前に察知する力」になります。
営業の基本は人との関係づくりです。
タイミングを読む力は、結局のところ相手との信頼関係の深さから生まれるのです。
社長や営業マンにとってタイミングとは、運ではなく技術です。
日ごろの観察と情報整理で精度が上がります。
また、タイミングを逃しても、関係を絶やさないことが次のチャンスを生みます。
一度の失注を「終わり」と考えるのではなく、次の季節や年度で再提案する。
この粘りが、長期の売上を支えます。
社長としては、営業マンがいる場合「なぜ注文が出なかったか」ではなく
「次のタイミングはいつか」を検討してください。
反省よりも予測。
この意識の転換が、営業組織の成長につながります。
タイミングは見えないようで、実は見えるものです。
取引先の発言、訪問時の雰囲気、社内の動き、季節の商談テーマ。
これらを観察すれば、次に動く時期が読めてきます。
営業マン任せにせず、社長自らも市場の空気を感じてみてください。
トップの感度が上がれば、現場も変わります。
タイミングを制する会社が、結果として販路を広げていくのです。
ありがとうございました。
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