異業種コラボが生む売れる発想 源氏パイ×アイスに学ぶ中小食品会社の戦略


先日、「源氏パイ」とアイスクリームのコラボ商品がセブンイレブン限定で発売された。
価格は税込325円。
SNSでは「パイの香ばしさとアイスのなめらかさが絶妙」と話題になり、店頭では一部で品薄にもなっている。

このニュースを見たとき、多くの人が「大手企業の話」と思うかもしれない。
だが、この発想こそ中小食品会社にも応用できるヒントである。
実は「ちょっと組み合わせてみた」が、今の時代の売れる商品の出発点だ。

たとえば「いつも食べているアイスに、手元にあったお菓子を混ぜてみた」。
たまたまそれがおいしかった。
そんな小さなきっかけから、ヒット商品は生まれる。
つまり、特別なマーケティング理論ではなく、日常の気づきが出発点になる。

コラボレーションは、ひとつの商品を強く見せる魔法のような手法だ。
たとえば源氏パイは昭和の時代から愛される定番菓子。
そこに「新しいアイスブランド」という要素が加わると、世代を超えた新しい価値が生まれる。
昔ながらの親しみと、現代的なトレンド感が同居する。
この「新旧の融合」こそ、コラボ商品の最大の魅力である。

食品会社の社長にとって、コラボの発想は決して遠い世界の話ではない。
地元の菓子店、パン屋、果樹園、酒蔵、コーヒー焙煎所など、近くにある仲間との協業から始められる。
コストをかけずに「新しい商品」として話題を作ることができる。
しかも、新しい販路が開ける可能性もある。

たとえば、和菓子メーカーとコーヒーショップが組めば「和スイーツカフェ」が生まれる。
調味料メーカーと精肉店が組めば「特製たれ付きギフトセット」になる。
それぞれ単独では届かなかった客層にリーチできる。
この“異業種の交差点”に、新しい売上のチャンスがある。

多くの中小企業が「コラボはハードルが高い」と感じているが、実際はそうでもない。
大手ブランドとの契約はたしかに条件が厳しいが、同規模の会社同士なら話が早い。
互いにリスクを抑えながら試せるのが、中小企業コラボの魅力だ。
大がかりな資本提携ではなく、まずは共同企画レベルから始めてみるとよい。

たとえば、「地元産いちごを使ったスイーツフェアを一緒にやりませんか」
「うちの調味料を使って限定メニューを開発しませんか」
そんな提案からでも立派な商品開発になる。
売上はもちろん、話題づくりにも効果がある。

コラボレーションを成功させるコツは三つある。
一つ目は相手を選ぶこと。
自社と似た価値観を持つ相手と組むことが大切だ。
お互いの思いがずれていると、途中で疲れてしまう。

二つ目は商品の主役を決めること。
ダブルネームで混ざってしまうよりも、どちらかが主役で、もう一方が引き立て役の構成にしたほうがわかりやすい。
源氏パイとアイスのコラボも、主役は「アイス」であり、源氏パイは魅力を加える“演出”だ。
それがバランスの良さを生んでいる。

三つ目はスピード感。
思いついたらすぐ動く。
相手と話して、サンプルを作り、写真を撮って発信する。
今の時代はSNSがある。スピードが命だ。
あれこれ考えるより、まず一歩踏み出す方が結果が出やすい。

社長自身が日常生活の中で「組み合わせの目」を持つことが、商品開発の原点になる。
例えば、旅先で出会ったスイーツやご当地ドリンク。
あるいは展示会で見た新素材や包装。
そうした「小さな気づき」をストックしておくと、ある日ふと点が線になる。

感性を磨くことは、経営者の仕事のひとつだ。
数字や経営指標も大事だが、ヒット商品は数字の中からは生まれない。
五感を使い、生活の中で違和感や面白さを感じ取る力が、次の商品をつくる。
それが「社長のアンテナ」だ。

商品が売れない理由の多くは、「新しさが伝わらない」ことにある。
品質が良くても、買い手の心を動かすきっかけがない。
その点、コラボは最初から「話題性」を持っている。
組み合わせそのものがニュースになる。
しかも、相手のブランド力を借りられる。
これは小さな会社にとって大きな武器だ。

今後、食品業界は単品勝負ではなく、掛け算の時代になる。
「味×デザイン」「地域×地域」「伝統×新素材」など、異なる強みを組み合わせた企業が伸びていく。
SNSや動画で拡散されやすいのも、この掛け算型の商品だ。

源氏パイとアイスのコラボは、まさにその成功例。
大きな投資ではなく、発想の柔らかさが勝因だ。
中小食品会社にも、同じチャンスがある。
必要なのは資金よりも感性、経験よりも行動だ。

新しい商品が生まれる瞬間は、いつも「やってみようかな」という軽い気持ちから始まる。
重く考えず、まず小さく試す。
その一歩が販路を広げ、会社を変える。
「源氏パイとアイス」がそうだったように、次のヒットは意外な組み合わせから生まれる。


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