「いい商品なのに売れない」──多くの食品会社の社長が口にする言葉です。
味には自信がある、素材にもこだわっている。試食した人からは「おいしい」と言われるのに、注文が増えない。
販路も広がらない。原因は明確です。知られていないからです。
どれほどおいしくても、知られていなければ存在していないのと同じ。
バイヤーや取引先の目に入らなければ、検討の土俵にすら上がりません。
売れない理由を「味」「価格」「デザイン」に求める前に、
「誰にどれだけ知られているか」を確認することが第一歩になります。
食品業界において、品質の差よりも「認知の差」が売上を左右します。
知ってもらうこと、それがすべてのスタートラインです。
多くの会社が「広告を出しているのに効果がない」と悩みます。
それは、むやみに広告費をかけているからです。
広告は広く知らせるものではなく、正しく届かせるものです。
重要なのは、ターゲットを明確にし、その相手に合わせた情報発信を行うこと。
たとえば、地元の素材を使った調味料であれば、都市部の自然派スーパーや料理研究家層がターゲットになります。
業務用の冷凍食品であれば、ホテル・給食・総菜メーカーなどBtoB市場が中心です。
にもかかわらず、一般消費者向けのSNSばかりに投稿しても成果は上がりません。
ターゲットを絞ることは、広告費を削ることではなく、投資の効率を上げる行為です。
「誰に伝えるか」が定まれば、「どこで伝えるか」「どう伝えるか」が自然に見えてきます。
たとえば、バイヤーが情報を探す場所はどこか。
テレビCMや雑誌広告を見て仕入れを決めることはありますか?
実際には業界紙、展示会、SNSの専門アカウント、口コミなどを通じて情報を得ています。
食品会社が狙うべき広告媒体も、テレビや新聞ではなく、専門的なメディアや信頼性の高い展示会報告記事、
あるいは業界団体のニュースレターなのです。
もう一つ大切なのが「発信内容」です。
単なる商品紹介ではなく、どんな想いでつくったのか、どんなシーンで使えるのかを伝えること。
「取引したい」と思ってもらうためには、会社の姿勢と信頼感を見せる必要があります。
たとえば、「この調味料を使ったら、料理が変わった」「うちのシェフが気に入っている」など、
現場の声を交えて紹介することで、読み手にリアリティが伝わります。
バイヤーは常に使われるイメージを探しています。
そのイメージを与えることが、広告の役割です。
また、広告だけで完結してはいけません。
広告は入口です。
その後のフォロー体制がなければ、せっかくの興味を逃してしまいます。
問い合わせが来たらすぐ対応できるよう、営業担当の連携を密にしておきましょう。
試供品を送る、資料を届ける、Zoomで短い説明を行う。
行動の速さが信頼をつくります。
そして、認知を広げるうえで欠かせないのが「第三者の声」です。
新聞やWebメディアでの掲載、展示会での受賞、飲食店やホテルの採用実績などは、何よりの証拠になります。
「どこで扱われているのか」「誰が使っているのか」が示されると、取引先は安心します。
この安心が購買意欲を動かします。
小さな実績でもかまいません。
たとえば「地元のレストラン5店に導入」でも十分なストーリーになります。
重要なのは、それを見える形で発信すること。
認知とは、存在をわかってもらうことです。
さらにもう一歩踏み込むなら、SNSと展示会の連動です。
展示会出展前にSNSで発信を重ねることで、来場者が「この会社を見に行こう」と思ってくれます。
展示会後は来場者に感謝を伝える投稿を行い、記憶に残す。
その積み重ねが、認知の定着を生みます。
認知戦略を考える際、社長が意識すべきポイントは三つです。
一つ目は、「ターゲットを明確にする」。
二つ目は、「発信の場所を選ぶ」。
三つ目は、「内容に一貫性を持たせる」。
とくに三つ目の一貫性は軽視されがちです。
今日は調味料の話、明日は全く関係のないランチの投稿。
このように方向がぶれると、読者やバイヤーは混乱します。
「この会社は何をしているのか」が伝わらなくなるのです。
発信の目的を「知ってもらう」に集中すること。
販売促進や即注文を狙う前に、まずは「認知」の段階をつくる。
この段階を飛ばして売上を期待するのは、土台のない家を建てるようなものです。
認知が進むと、営業活動も変わります。
初対面のバイヤーに「名前は聞いたことがあります」と言われた瞬間、交渉が一段階進みます。
それだけで信頼度がアップして商談の確度が高まります。
商品を知っている、知らないではおおきな違いです。
広告活動は単なる経費ではなく、将来への投資です。
短期的な反応がなくても、続けることで信用が蓄積します。
「見たことがある」「聞いたことがある」という印象が、いずれ購買行動につながります。
社長ができる第一歩は、小さな認知の積み重ねです。
たとえば、取引先のバイヤーに送るメールの署名欄に、自社サイトやInstagramを入れること。
展示会で配るパンフレットのQRコードをわかりやすくすること。
一つひとつは小さくても、積み上げれば大きな違いになります。
認知とは、広告費を増やすことではなく、「知ってもらう努力を増やすこと」。
地道な発信、継続する、正確なターゲット設定。
この三つを積み上げる会社こそ、長く売れ続けます。
知ってもらうことを怠らない会社には、チャンスが自然と集まります。
商品を磨くだけでなく、「どう伝えるか」を磨く。
それが販路開拓には大切です。
今日からできることは、たった一つ。
「誰に知られたいのか」を明確にすること。
その答えが見えた瞬間、広告も営業も動き出します。
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