融資の前にやるべきことは売り先を決めること|資金が尽きる会社と回る会社の違い

お金を借りる相談を銀行にする前に、社長が真っ先にやるべきことがあります。
それは、自社の自慢の商品を「誰が、どこで、いくらで買うか」を、具体的すぎるほど明確に決めることです。

これが決まっていない状態で1000万円、2000万円と通帳に数字が入っても、入金よりも支出が先行し、
手元の現金がなくなります。大切な資金はあっという間に消えてなくなります。

逆に、売り先さえしっかり決まっていれば、銀行の担当者の態度は劇的に変わります。

資金繰りが苦しい会社ほど「どこに売るか」がぼんやりしている現実

日々、全国の小さな食品メーカーの社長とお会いしています。

「今月の支払いが厳しい」「来期の運転資金が足りない」そう切実に悩む社長ほど、実は共通した弱点があります。
それは「誰に売るのか」という出口の戦略が、驚くほどあいまいな点です。

「良いものを作れば、どこかのバイヤーが分かってくれるはずだ」
「道の駅やネットショップに出せば、それなりに売れるだろう」
「とりあえず展示会に出して、大手チェーンの目に留まれば一発逆転だ」

これらはすべて、経営戦略ではなく、ただの「神頼み」です。経営の現場において、希望的観測は1円の数字にもなりません。
売り先があいまいということは、入ってくるお金の時期も、その額も、まったく読めないということです。
販売先が決まっていないのに、銀行からの融資だけをひねろうとしても、難しい話しです。

厳しい言い方ですが、売る場所が決まっていない商品は、まだ「商品」ではありません。
ただの「スペースを使う在庫」という名の負債です。

銀行の担当者は「商品の味」より「具体的な売場」を見ている

銀行の担当者と融資の交渉をするとき、多くの社長は「今期の売上目標」や「商品のこだわり」を一生懸命に語ります。
「この原材料は希少で、3日間かけて手作りしていて、他社には真似できない味なんです」
熱意は大切です。社長が自社の商品を愛していなければ、商売は始まりません。

ただ、プロの銀行員が本当に見ているのは、その熱い言葉の裏側にある「確実な裏付け」です。
彼らは「売上が上がります」という社長の決意表明を信じているわけではありません。

「〇〇百貨店の冬のギフトカタログに、3000セットの採用が決まった」
「地元の有力スーパー15店舗で、売場を3ヶ月間確保できた」
「大手通販サイトの年間特集に、看板商品として組み込まれた」

こうした「具体的な取引先の実名」を待っています。
銀行にとって、貸したお金が返ってくる根拠は、社長のやる気ではありません。
取引先が、決められた期日に代金を振り込んでくれるという「決済の事実」です。

どこに売るかが決まっている、見込みがある会社は、融資の商談が非常にスムーズです。
「この売場でこれだけ売れる見込みがある。だから、この期間で確実に返済できる」

この説明ができるだけで、融資のハードルは驚くほど下がります。
銀行員も人間です。「貸しても大丈夫だ」という安心材料が欲しいのです。

展示会や商談の現場で起きている、残酷なまでの「リアル」

地方で開催される大きな食品展示会に足を運ぶと、現場のリアルな実力差がよく見えます。
立派なブースを構え、試食を山ほど用意して、道行くバイヤーに声をかけている社長がいます。
バイヤーが立ち止まると、待ってましたとばかりに製法のこだわりをマシンガントークで説明します。

「これは無添加で、原材料は地元産にこだわっていて、職人が一つずつ丁寧に……」

バイヤーは仕事ですから、笑顔で聞いてくれます。名刺も交換してくれるでしょう。
「美味しいですね、検討します」と言い残して去っていきます。

その後に具体的な注文が来ることは、まずありません。
なぜなら、その社長の頭の中に「そのバイヤーの店に商品が並んでいる風景」が見えていないからです。

一方で、商売の勘が鋭い、強い社長は全く違います。
バイヤーが胸に下げている名札を見た瞬間に、頭の中でその企業の店舗網や客層を検索します。
そして、相手に合わせた提案を即座に切り替えます。

「御社の高級路線スーパーの店舗なら、この大袋より小容量のパックの方が動くはずです」
「平日の夕方、共働きの主婦が『あと一品』と手に取りたくなる価格設定にしました」

最初から相手を特定して、その売場に合わせた準備をしています。
展示会を「誰か見つけてくれるのを待つ場所」ではなく、「ターゲットに最終確認をさせる場所」にしているのです。
売り先を絞り込んでいるから、商談の打率が圧倒的に高くなります。

売り先がないまま「資金」だけ入れても、会社は回らない

「新しい包装機を入れれば、もっと効率が良くなる」
「運転資金さえあれば、もっと広範囲に営業をかけられる」
「補助金も、とおったのでお金の心配はない」

資金繰りが苦しいときほど、社長は「お金さえあれば解決する」と思いがちです。
売り先がないまま設備投資をしたり、広告費を投じたりするのは、回収ができない投資を行うことです。

想像してみてください。新しい機械を導入して、生産能力が2倍になったとします。
ところが、売る場所が決まっていなければどうなるでしょうか。増えるのは、賞味期限に追われる、在庫の山だけです。

在庫が増えれば、倉庫の保管料がかかります。
古くなれば、安売りしてブランドを傷つけるか、廃棄して大損するしかありません。
会社を助けるための融資が、結果として会社をさらに苦しめる。そんな悲劇を何度も見てきました。

会社を動かす本当のエンジンは、銀行からの借入金ではありません。取引先から振り込まれる売掛金です。利益です。
その源泉である「確実な売り先」を確保することこそ、社長の仕事の9割だと言っても過言ではありません。

「売り先を先に決めた」ことでV字回復した事例

私が実際に関わった、ある小さな佃煮メーカーの事例をお話しします。
その会社は長年、大手メーカーの下請けが中心でした。
利益は薄く、資金繰りは常に自転車操業。倒産寸前の状態でした。
社長は「自社ブランドの商品を作って、銀行から大金を借りて一発逆転の勝負をしたい」と言い張っていました。

私は社長にこう伝えました。
「新商品を作る前に、まずは1社だけでいい。確実に適正価格で買ってくれる店を見つけてください」

社長は必死になって動きました。地元のちょっと高級なスーパーの店長に、何度も何度も会いに行きました。
「御社の客層は高齢者が多い。だから、既存の濃い味ではなく、塩分を極限まで控えた、この店専用の佃煮を開発させてほしい」

その熱意と具体的な提案に、店長がついに首を縦に振りました。
「そこまで言うなら、総菜コーナーの横に特設スペースを作ってやるよ」という機会をもらいました。

「1つの売場」が確定した。この事実を持って、社長は銀行へ行きました。
「売る場所はもう確保しました。あとは、その期待に応える商品を作るための資金だけです」

銀行の反応は、これまでとは180度違いました。
「販売が決まっているなら話は別だ」と、融資はスムーズに実行されました。
商品は予定通りそのスーパーで発売され、ターゲットが明確だったため、驚くほど売れました。

「どこに売るか」を先に決めたことで、味付けも、包材のサイズも、値決めも、一切の迷いがなくなったのです。
今ではその実績を武器に、全国の百貨店へと広げています。

足元の「1平米の売場」を固めることが、再建への最短距離

大きな夢を描き、数年後の上場や全国展開を語るのは素晴らしいことです。
今の苦しい資金繰りを本気で打破したいなら、まずは足元の「1平米の売場」を確実に抑える泥臭い作業が欠かせません。

「御社の商品を、誰が財布を開いて、自分の金で買うのか」
「その人は、普段どこのお店に買い物に行くのか」
「そのお店の売場の、どの位置に御社の商品があれば手に取ってもらえるのか」

この問いに、具体的な社名や店名、さらには担当者の顔を思い浮かべて答えられるようにしてください。
きれいなパンフレットを作る暇があるなら、ターゲットとなる取引先の売場に足を運び、1日中じっと観察してください。

お客さんが何を手に取り、何を売場に戻したか。
その中に、商品開発の答えも、販路開拓のヒントもすべて落ちています。

売り先が決まれば、必要な資金額も正確に見えてきます。
返済のシミュレーションも、数字の遊びではない、血の通った計画になります。
そうなれば、銀行はあなたのことを「単なる借り手」ではなく、
一緒に地域経済を支える「パートナー」として見てくれるようになります。

販路開拓の現場で起きていることは、いつも厳しくシンプルです。
「良いものだから売れる」なんていうのは、売る側の勝手な思い込みにすぎません。
「売る場所が確保されて、入金があるから、お金が健全に回り出す」のです。

社長、まずは「出口」から逆算してください今、不安な夜を過ごしている社長も多いでしょう。
月末の支払いを考えて、胃を痛めているかもしれません。だからこそ、一度原点に戻って、自分に問いかけてみてください。

「自社の商品を待っている売場は、どこにあるのか?」

その答えを出すために、まずは一軒の取引先、一人のバイヤーと真剣に向き合ってください。
あれもこれもと欲張る必要はありません。「ここなら絶対に勝てる」という場所を一つ決めるだけで、
会社の空気は一変します。

お金を借りるのは、その後で十分間に合います。
根拠のない借金は重荷になりますが、売り先に裏打ちされた借金は、会社を成長させる強力な武器になります。

どこに売るかを決める。それが、あなたの会社を救う唯一にして最強の具体策です。
お金を借りる前に、どこに売るかを決めましょう。

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