「最近、景気が悪いから……」「人口が減っているから、売上が落ちるのは仕方ない」
そんな言葉を耳にすることが増えました。特に食品業界は、生活に密着しているだけに、
景気や社会情勢の影響を受けやすいと思われがちです。そんな中でも着実に利益を上げ、成長を続ける食品会社があることを
ご存知でしょうか?
それらの会社は決して「運が良かった」わけではありません。国や環境のせいにするのではなく、市場が縮小してもなお、
徹底して「お客様第一」を貫くことで、盤石な経営基盤を築いているのです。今回は、そんな逆境に強い食品企業が実践する、
成功の秘訣を深掘りしていきましょう。
言い訳しない企業文化 – 逆境を成長の糧にする視点
国や環境のせいにしない経営哲学
多くの企業が、業績不振の原因を外部環境に求めがちです。「少子高齢化で消費者が減った」「物価高でコストがかさむ」
「海外情勢が不安定で原材料が高騰している」……もちろん、これらの要因がビジネスに影響を与えるのは事実です。
本当に儲かっている食品会社は、こうした外部要因を「言い訳」にしません。むしろ、それを「前提」として受け入れ、
その中でどうすればお客様に価値を提供できるかを考え抜きます。
儲かっている社長の経営哲学はシンプルです。「環境は変えられないが、自分たちの行動は変えられる」。この視点こそが、
どんな状況でも成長を続ける原動力となっているのです。
例えば、原材料費が高騰した際、多くの企業が値上げを検討します。もちろん、適切な値上げは企業存続のために必要です。
顧客第一の企業は、ただ値上げするだけでなく、同時に「お客様が納得できる付加価値」をどう提供するかを徹底的に考えます。
パッケージを改良したり、レシピを工夫してより美味しくしたり、あるいは少量でも満足度が高い商品を提供したりと、
様々な角度からお客様のメリットを追求するのです。
市場縮小時代における「攻め」の姿勢
人口減少は、国内市場が縮小することを意味します。特に食品業界では、胃袋の数が減るわけですから、これは大きな問題です。
成功している企業は、この「縮小市場」を悲観的に捉えません。
市場が小さくなるからこそ、「自社の顧客」をより深く理解し、そのニーズに徹底的に応えることに注力します。
全員に売ろうとするのではなく、自社の得意な分野、情熱を注げる分野で「選ばれる存在」になることを目指すのです。
例えば、健康志向の高まり、高齢化による食事のニーズ変化、共働き世帯の増加による簡便食の需要など、
市場全体が縮小しても、その中には新しいニーズが常に生まれています。成功企業は、これらの小さな変化を見逃さず、
迅速に商品開発やサービス改善に繋げています。
これは、「守り」ではなく、まさに「攻め」の姿勢です。市場が小さくなる中でも、まだ誰も気づいていない、
あるいはまだ十分に満たされていないお客様の欲求を探し出し、そこに一番乗りで応えることで、
新たな顧客層を獲得し続けているのです。
顧客第一主義の徹底 – 深い理解と本質的な価値提供
データ分析だけではない「顧客の声」への傾聴
現代では、ビッグデータ分析がマーケティングの主流です。成功している食品会社は、データだけに頼りません。
とは書きましたがデータ分析なんて大手企業だけで中小零細には難しいのが現実です。もちろんデータは重要ですが、
それ以上に「お客様の生の声」に耳を傾けることを重視しています。
- お客様相談室の強化: 単なるクレーム対応ではなく、お客様からの意見や要望を「宝の山」と捉え、真摯に受け止めます。
届いた声は担当部署だけでなく、開発や製造部門にも共有され、改善に繋げられます。
社長がお客様相談室の場合が多いですね。 - 対面でのコミュニケーション: 試食会、工場見学、ファンイベントなどを通じて、お客様と直接顔を合わせる機会を
積極的に設けます。お客様の表情や言葉のニュアンスから、データだけでは読み取れない深いニーズや感情を
理解しようと努めます。 - SNSでの対話: 一方的な情報発信だけでなく、SNS上でのコメントやメッセージにも丁寧に返信し、
お客様との双方向のコミュニケーションを大切にします。
こうした活動を通じて、お客様が本当に求めているものが何か、どんなことで困っているのか、
どんな商品があればもっと喜んでくれるのかを、肌で感じ取ろうと努力しています。データは過去の傾向を示しますが、
お客様の声は未来のニーズを教えてくれるのです。
期待を超える「品質」と「体験」の提供
顧客第一主義とは、単に「お客様の言うことを聞く」ことではありません。お客様自身も気づいていない、
潜在的なニーズまで掘り起こし、期待を上回る品質と体験を提供することです。
品質へのこだわり: 食品会社にとって、味や安全性は当然の前提です。成功企業は「お客様が本当に美味しいと感じるか」
「安心して食べられるか」という基準を、常に最高レベルに設定しています。
- 原材料へのこだわり: 産地、栽培方法、鮮度など、原材料の選定には一切妥協しません。時には生産者と直接連携し、
共に品質向上に取り組むこともあります。 - 製造工程の徹底管理: 最新の設備投資はもちろん、職人の技術や五感を活かした丁寧な製造工程を確立しています。
衛生管理も徹底し、お客様が口にするものだからこそ、一切の不安がないように努めます。 - 伝統と革新の融合: 長年培ってきた製法や味を守りつつも、新しい技術やアイデアを積極的に取り入れ、
常に「より良いもの」を追求し続けています。
体験の提供: 商品そのものだけでなく、購入から消費までの「体験」全体をデザインします。
- 購買体験の向上: 魅力的なパッケージデザイン、選びやすい陳列、丁寧な接客、スムーズなオンラインストアでの
購入体験など、お客様が商品を選ぶ段階からワクワクするような工夫を凝らします。 - 食卓での感動: 「この商品を食べることで、どんな笑顔が生まれるか」という視点で商品開発を行います。
単なる栄養補給ではなく、家族団らんのきっかけになったり、特別な日のご馳走になったり、
お客様の生活に彩りを添える存在を目指します。 - 食後の満足感: 食べ終わった後に「また買いたい」「誰かに勧めたい」と思ってもらえるような、
深い満足感を提供することを追求します。
ニッチ市場での圧倒的シェア獲得戦略
市場全体が小さくなる中でも、特定のニッチな市場に特化し、そこで圧倒的なシェアを獲得する戦略も有効です。
これは、すべての顧客を追うのではなく、「誰にとって、かけがえのない存在になるか」を明確にする戦略です。
例えば、「無添加」「アレルギー対応」「特定の地域食材に特化」「特定の調理法に特化」など、ニッチな領域は多岐にわたります。
成功企業は、自社の強みとお客様のニーズが合致するニッチを見つけ出し、そこに経営資源(社長自身)を集中投下します。
ニッチ市場では、競合が少ないため価格競争に巻き込まれにくく、お客様も「ここしかない」と感じてくれるため、
価格よりも品質や信頼で選ばれるようになります。また、特定の顧客層に深く入り込むことで、口コミやファンが生まれやすく、
安定した収益に繋がりやすいというメリットもあります。
持続的成長を支える組織力とブランディング
従業員満足度を高める組織づくり
お客様第一主義は、まず従業員第一主義から生まれます。従業員が自社の商品やサービスに誇りを持ち、
仕事に情熱を注げなければ、お客様を真に喜ばせることはできません。儲かっている食品会社は、
従業員満足度を高めるための投資を惜しみません。
- 働きやすい環境: 長時間労働の是正、柔軟な働き方の導入、育児や介護との両立支援など、
従業員が安心して働ける環境を整備します。 - 適正な評価と報酬: 成果を正しく評価し、それに見合った報酬を与えることで、従業員のモチベーションを
維持・向上させます。 - 成長の機会提供: 研修制度の充実、資格取得支援、キャリアパスの明確化など、従業員一人ひとりの成長をサポートします。
- コミュニケーションの活性化: 上下関係だけでなく、部署間の横の繋がりを強めるための社内イベントやミーティングを
定期的に開催し、風通しの良い組織文化を育みます。
従業員が「この会社で働けてよかった」と感じることで、お客様へのサービスも自然と向上し、
それが企業の競争力へと繋がっていくのです。
ストーリーとしてブランド戦略
現代の消費者は、単に「モノ」を買うだけでなく、「コト」や「ストーリー」に共感してお金を使う傾向があります。
成功している食品会社は、この消費者心理を理解し、強力なブランドストーリーを構築しています。
- 創業者の想い: なぜこの会社を立ち上げたのか、どんな商品を届けたかったのか、その原点にある情熱を伝えます。
- 商品開発秘話: 一つの商品が生まれるまでの苦労やこだわり、携わった人々の想いを語ることで、商品への愛着を深めます。
- 地域との繋がり: 原材料の産地や生産者との協働、地域への貢献活動などを通じて、企業と地域の関係性を伝えます。
- 未来へのビジョン: 企業が社会に対してどのような価値を提供していきたいのか、どんな未来を目指しているのかを
示すことで、お客様との共感を深めます。
これらのストーリーは、企業のウェブサイト、SNS、パッケージ、広告など、あらゆる接点を通じて一貫して発信されます。
お客様は、単に「美味しい」だけでなく、「この会社の考え方が好き」「このブランドを応援したい」と感じ、
深いロイヤリティを抱くようになるのです。
デジタルを活用した顧客接点の強化
顧客第一主義を実践する上で、デジタル技術の活用は不可欠です。成功企業は、デジタルツールを単なる
「効率化の道具」としてではなく、「お客様との繋がりを深めるための手段」として捉えています。
デジタル活用は中小零細で社長が1人でやる場合は優先順位を下げても構いません。
- パーソナライズされた情報提供: お客様の購入履歴や閲覧履歴に基づき、一人ひとりに合った商品情報やレシピ、
キャンペーン情報などを提供します。 - SNSでのエンゲージメント: インスタグラムやX(旧Twitter)などを活用し、商品の魅力的な使い方を発信したり、
お客様が投稿した写真やコメントに反応したりすることで、コミュニティ感を醸成します。 - オンラインストアの利便性向上: 簡単に商品を探せて、スムーズに購入できるだけでなく、
定期購入サービスや限定商品の提供など、お客様にとって魅力的な機能を追加します。 - データに基づいた顧客体験の最適化: ウェブサイトのアクセス解析や顧客行動データを分析し、
お客様がストレスなく商品を見つけ、購入できるような導線を設計します。
これらのデジタル活用は、お客様の利便性を高めるだけでなく、企業とお客様との関係性をより密接にし、
長期的な顧客育成に繋がっています。
不況を乗り越えるのは「人」と「心」
景気の波や社会の変化は、これからも常に訪れるでしょう。今回見てきたような成功している食品会社は、
決してそれらを言い訳にしません。
彼らが実践しているのは、
- 外部環境を言い訳にせず、自社の行動を変える経営哲学
- データだけでなく「顧客の声」に耳を傾け、深く理解する姿勢
- 期待を超える「品質」と「体験」を徹底的に追求するこだわり
- 従業員を大切にし、モチベーションを高める組織づくり
- 共感を呼ぶブランドストーリーを紡ぎ、お客様との絆を深める戦略
これら全てが、「お客様第一」という揺るぎない信念に基づいて実践されています。
市場が小さくなっても、競合が激しくなっても、最後に選ばれるのは、お客様に真に寄り添い、
本質的な価値を提供し続ける企業です。景気が悪くても、人口が減っても儲かっている食品会社から学ぶべきは、
まさにこの「人」と「心」を大切にする経営姿勢だと言えるでしょう。わたしも販路開拓支援をつうじて強く感じています。
自社が提供する価値を再確認し、常にお客様の目線で考え続けること。
当たりまでのことですが、どんな時代でも勝ち残るための唯一の道なのかもしれません。
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