食品の販路開拓専門家・伊藤晴敏です。
「味はいいんですけど売れないですね」この言葉、何度聞いたかわからない。
千葉にある総菜会社の社長も、最初にそう言った。
従業員10名。地元の魚を使った瓶詰総菜をつくっている会社だ。 売場は道の駅と地元スーパー。
長年そこだけでやってきた。ところが売上は年々落ちている。 理由はわかっていた。でも動けていなかった。
今日はこの会社の話をします。 バイヤーに選ばれる会社と、選ばれない会社の違いが、ここにすべて詰まっている。
バイヤーが見ているポイント
バイヤーは何を見て商品を採用するのか。
まず「売れるかどうか」だ。おいしいかどうかではない。 バイヤーは自分の売場に責任を持っている。
売場に置いて売れない商品は、スペースの無駄だ。仕入れた自分の評価が下がる。
だからバイヤーは常に考えている。 「この商品、うちのお客さんに刺さるか?」
「どんな人が買って、なぜリピートするのか?」 「価格帯は合っているか?」
「メーカーはちゃんと供給できるか?継続できるか?」
これをしっかり説明できない会社は、どれだけ商品がよくても採用されません。
「おいしいです」「こだわっています」「地元の素材を使っています」では、バイヤーの頭の中には何も残らない。
もうひとつ、バイヤーが見ているのは「この会社と付き合えるか」だ。 問い合わせへの対応スピード、サンプルの送り方、
商談のときの説明の仕方。 こういうところを、バイヤーはちゃんと見ている。
「サンプル送ってもらいましたが、賞味期限が2週間しかなくて」 「メールの返信が3日後でした」
「商談に来たのに、会社のパンフレットすら持ってこなかった」
こういう話を、バイヤーから何度も聞いた。 商品の前に、会社の姿勢が問われている。
会社の規模が小さくても、どんなにいい商品でも、信頼できない会社からは買えない。それがバイヤーの本音だ。
売れない会社の共通点
千葉の総菜会社には、売れない会社の典型的なパターンが全部あった。
営業をしていない。
これが一番大きい。道の駅と地元スーパーだけで何年もやってきた。新しい販路を開拓しようとしていなかった。
「忙しくて」「営業なんかやったことがない」という言葉をよく聞く。
現場で見ていると、営業していない会社は行き詰まるケースが多いです。
既存の販路はいつか限界が来る。客が減る。売場が減る。競合が入ってくる。
そのとき、新しい販路がなければ行き詰まります。
この会社も同じだった。 道の駅のスタッフとは仲がいい。地元スーパーの担当者とも長い付き合いだ。
「関係ができているから大丈夫」という安心感があった。 でも関係があっても、売上が落ちれば売場は減ります。
感情と商売は別だ。 バイヤーだって売場の数字に責任がある。
競争が激しい場所で戦っていた。
道の駅も地元スーパーも、似たような地元商品がひしめいている。価格競争になる。利益が薄くなる。
商品を改善する余裕もなくなる。
商品力が落ちていた。
長年同じ商品を作り続けていた。パッケージも昔のまま。 「昔からこれで売れてきた」という感覚があったと思う。
でも市場は変わっている。
ECで失敗していた。
補助金を使ってECサイトを立ち上げた。ところが売れない。当然だった。 ECは作っただけでは売れない。
運用スキルが必要だ。写真、文章、広告、レビュー管理、SNS連携。これを社内でできる人間がいなかった。
補助金で形だけ作っても、中身が動かなければ意味がない。
いまでは毎月、運用会社へ支払いだけが残っている。
ECで成功している食品メーカーは、専任か外注でEC運用を回している。
週に何度も更新して、SNSと連動させて、レビューに返信して、広告を調整している。
それをやっている会社と、作りっぱなしの会社では、結果が全然違う。
「補助金が出るから作った」では、最初から負けている。
なぜ売れなかったのか
この会社の本質的な問題は、「どこで売るかを考えていなかった」ことだ。
どこで売るかで商品は変わる。
道の駅で売る商品と、都内の高級セレクトショップで売る商品は、同じものではダメだ。
価格帯が違う。買う人が違う。買う理由が違う。
この会社の商品は、地元の魚を使った手作り感のある瓶詰総菜だった。
本来、都市部の食にこだわる消費者に刺さるポテンシャルがあった。 でも道の駅の「お土産」として売っていた。
お土産のパッケージで、お土産の価格で、お土産の売場に並んでいた。 それでは高く売れない。バイヤーにも刺さらない。
どう変えたか
まず商品の中身を整理することから始めた。
原材料は何か。どこで獲れた魚か。製法はどうか。味のコンセプトは何か。 この会社は、実は使っている素材がよかった。
地元の漁港から直接仕入れていた。製法も丁寧だった。でもそれを「表現」していなかった。
バイヤーに伝えるためには、言葉にしなければならない。 「地元の魚を使っています」ではなく、
「千葉県○○港水揚げの○○を、水揚げ当日に加工しています」と言えるかどうか。
次にパッケージとラベルをリニューアルした。
お土産感を全部捨てた。 シンプルで上質な雰囲気に変えた。フォントを変えた。色を変えた。写真を変えた。
「自宅で食べる、ちょっと贅沢な一品」というコンセプトに振り切った。
価格も上げた。 安売りをやめた。道の駅で売っていた価格より3割以上高く設定した。そして営業に動いた。
都内の食にこだわったセレクトショップをリストアップした。 ターゲットのバイヤーに連絡を取った。
サンプルを送った。商談をした。
最初から全部うまくいったわけではない。 「今は新規が難しくて」と言われた店もあった。
サンプルを送ったまま返事がなかったところもあった。 それでも動き続けた。 動かなければ、何も始まらない。
なぜ採用されたか
有名セレクトショップに提案したとき、バイヤーはこう言った。 「これ、うちのお客さんに合いそうですね」
なぜそう言わせられたのか。商品の「売れる理由」が整っていたからだ。
素材の話ができた。製法の話ができた。なぜこの価格なのかを説明できた。どんな人に買ってほしいのかを伝えられた。
パッケージがセレクトショップの売場にあっていた。 価格帯がそのショップのお客さんに合っていた。
バイヤーが「これを仕入れた理由」を、自分のお客さんに説明できる商品になっていた。
やることはシンプルです。 でも多くの会社がここにたどりつけません。
なぜか。 自分の商品を客観的に見られないからだ。 「うちの商品はいい」という思いが強すぎて、
バイヤー目線で考えられない。 作り手の論理と、売り手の論理は違う。
そこを切り替えられるかどうかが、分かれ目だ。
社長への一言
この会社が変わったのは、商品の本質は変わっていない。 地元の魚を使った手作りの瓶詰総菜は、最初からよかった。
変わったのは「どこで売るか」と「どう伝えるか」だ。
御社の商品も、同じかもしれない。 いい素材を使っている。丁寧に作っている。でも売れていない。
それは商品が悪いのではなく、売り方と売り場が合っていないだけかもしれない。
そして、営業していない会社は厳しくなります。 既存の販路に頼り続けることは、じわじわと首を絞めることと同じだ。
動くなら今だ。 お客様は待ってくれない。
最後にもう一度言う。 「味はいいんですけど売れないですね」 この言葉は、ある意味で正直だ。
味がいいのはわかっている。でも売れていない。 ならば、売れていない理由を直視するしかない。
売り場を変えること。 伝え方を変えること。 そして、動き続けること。それだけで、結果は変わる。
食品の販路開拓でお悩みの社長は、まずご相談ください。
こちらもおすすめ
食品バイヤーとのアポを成功させるコツ|販路拡大のための7つのステップ
—————————————————————————
売上が伸びない。人がいない。
営業をどうすればいいのか、わからない。
一度、整理しませんか。
■個別相談・セミナー・取材のご相談
→ お問い合わせフォームへリンク
■まずは社長向け販路開拓PDFを読む
→ 社長向けPDFはこちら(STORESへ)
