売上を伸ばす社長が実践する営業の基本 成果につながる3つの原則


食品の販路開拓専門家・伊藤晴敏です。

食品メーカーの社長から「営業を強化したいけれど、どんな方法が正解なのか分からない」という相談をよく受けます。
展示会に出ても成果が出ない。営業代行に頼んでも続かない。
こうした悩みの裏には、“やり方”よりも“考え方”の問題が潜んでいます。

営業とは「売り込み」ではなく、「相手の課題を見つけて提案する仕事」です。食品の販路開拓で成果を上げる会社は、
営業の型がしっかりしています。この記事では、食品メーカーが実践すべき営業方法を、
現場の経験をもとに整理してお伝えします。

まず押さえておきたいのは、「営業は準備で八割決まる」ということです。営業が苦手な会社の多くは、準備が足りていません。
商品のスペックを並べる資料はあっても、「誰に」「どんな場面で」「どんな提案をするか」が整理されていない。
展示会や商談会で説明しても、相手の記憶に残らないのです。営業の第一歩は、売り込みではなく整理から始まります。

次に重要なのが「営業の目的を明確にすること」です。商談のゴールは契約ではなく、「次のステップを作ること」。
たとえばバイヤーとの初回商談では、サンプルを送る約束、試食会の設定、追加資料の送付など、
次に続く行動を確実に作ることが大切です。一度で決まる商談はほとんどありません。
継続的な接点を作る営業が、最終的に成果を出します。

食品メーカーの営業で特に成果を左右するのが「相手を選ぶ力」です。
どんなに良い商品でも、相性の悪い販路に持っていくと結果が出ません。高価格帯のギフト商品を量販店に提案しても難しい。
逆に、日常消費向けの惣菜を百貨店で売ろうとしても無理があります。営業は「断られない相手を探す仕事」。
合わない取引先に力を注ぐより、自社商品に合うマーケットを見つけることが成果への近道です。

では、どうすれば相手を見極められるのか。ポイントは三つあります。
一つ目は「客層が合っているか」。ターゲットが中高年中心なのか、若年層なのかによって売り場も変わります。
二つ目は「価格帯が合っているか」。商品の魅力を活かすためには、安売りではなく“価値に見合う売り場”を選ぶ必要があります。
三つ目は「担当者が商品を理解してくれるか」。バイヤーの考え方や審査基準を知ることが、営業の精度を上げる鍵です。

営業方法としてもうひとつ欠かせないのが「FCPシート」などの資料整備です。口頭説明だけで伝わる時代は終わりました。
バイヤーは1日に何十社も商談します。覚えてもらうためには、シンプルで見やすい資料が必要です。
商品の特徴だけでなく、「なぜこの売り場に合うのか」「どんな売れ方をするのか」を一枚で伝える工夫が大切です。

営業の現場では、社長自身が動くかどうかも結果を分けます。食品メーカーの場合、営業担当よりも社長が出ていくことで
信頼を得られることが多い。特に地方の会社は、社長が顔を出すだけで相手の受け止め方が変わります。
自社の想いを言葉で伝える力こそ、地方メーカーの最大の武器です。

もうひとつの大切な視点は「営業の継続管理」。一度提案して終わりではなく、定期的にフォローを続けることが重要です。
例えば、サンプルを送ったら1週間後に反応を確認する。新商品の案内を季節ごとに送る。
メールよりも電話、電話よりも対面が効果的です。営業は“忘れられない努力”の積み重ね。
時間が経ってから受注になるケースも少なくありません。

成果を出す営業は、商品を売り込む前に「相手の困りごと」を探します。バイヤーが求めているのは“仕入れる理由”です。
たとえば「既存のラインナップでは季節感が弱い」「地方色を出したい」「SNS映えする新商品が欲しい」など、
相手の課題を引き出せれば、提案は一気に通りやすくなります。そのためには、商談前の情報収集が不可欠です。
相手の店舗を見に行く、SNSや公式サイトを確認する。営業の武器は情報です。

営業方法で見落とされがちな要素が「社内共有」です。営業担当が得た情報をチームで共有しない会社は、努力が積み上がりません。
バイヤーの反応、サンプルの評価、競合情報などを共有し、次の商談につなげる仕組みを作ることで、
会社全体の営業力が上がります。小さい会社こそ、情報の流れを止めないことが重要です。

さらに、営業の成果を左右するのが「スピード感」。提案依頼を受けたらその日のうちに資料を送る。
サンプルの要望には即対応する。バイヤーの印象はスピードで決まります。
反応が遅い会社は、どんなに商品が良くてもチャンスを逃します。スピードは信頼の証。
小さい会社だからこそできる迅速な対応が、大きな武器になります。

営業力を高めたい社長に伝えたいのは、「営業を仕組みにする」という考え方です。
個人の感覚に頼らず、営業の流れを見える化し、誰がやっても一定の結果を出せる仕組みにする。
展示会準備、商談記録、フォローの手順、これらをテンプレート化しておくことで、営業が人に依存しなくなります。
長期的に見れば、仕組み化が最大の営業力になります。

食品メーカーにとって、営業とは「自社を外の世界とつなぐ仕事」です。新しい販路は、自分から動かない限り見つかりません。
営業を続ける中で、断られることも多いでしょう。それでも動き続ける会社だけが、次のチャンスをつかみます。

どんな会社でも、営業の基本は同じです。
・相手の立場で考える
・情報を集めて提案を磨く
・信頼を積み重ねる
この三つを徹底すれば、営業は確実に成果を出せます。

食品メーカーの営業方法に正解はありません。けれど、現場に足を運び、相手の声を聞き、自社の強みを磨き続ける社長が、
結果として“売れる会社”をつくっています。営業とは、社長の姿勢そのものです。


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