食品の販路開拓専門家・伊藤晴敏です。
地方の食品メーカーから「販路を広げたいが、なにから始めればいいのか分からない」という
相談を受けることが増えています。営業担当を置けない会社も多く、
社長自身が展示会や商談会に出向きながら必死に売り込みをしている現場も少なくありません。
努力のわりに成果が出ない。その背景には、いくつかの共通点があります。
まず理解しておきたいのは、販路開拓は「営業スキル」だけの問題ではないということです。
売れない理由の多くは、商品の魅せ方やターゲット設定のズレにあります。例えば地元では好評の味でも、
都市部の百貨店では通用しないケースがあります。
逆に、都市型スーパーに刺さる強みを持っているのに、
地方の催事中心で止まっている会社もある。販路の方向性を誤ると、どんなにいい商品でも広がりません。
こうした状況を打開するために、いま注目されているのが「販路開拓支援」です。支援とは単なるアドバイスではなく、
実際に商談・提案の現場を伴走する形を指します。支援者が持つバイヤーとの関係や商談のノウハウを活かし、
最短ルートで販売機会を作るのが特徴です。
支援を受けた会社が成果を出しやすい理由は明確です。第三者が入ることで、商品を客観的に見直せるからです。
自社では気づかなかった魅力や弱点を見つけ、提案資料やサンプルづくりをブラッシュアップできます。
さらに、バイヤーの視点を知る支援者が商談の事前準備を行うことで、初回から「話が通じる会社」として信頼を
得やすくなります。販路開拓で結果を出す会社は、例外なくこの準備ができています。
支援の内容は多岐にわたります。
まず「商談の設計」。どの業態のバイヤーに、どんな角度で提案するかを決めます。
デパートなのか、高級スーパーなのか、通販・ギフト市場なのか。
ターゲットによって求められる資料や売り方がまったく違います。
次に「提案資料の整備」。FCPシート、パンフレット、POP、商品説明文など、バイヤーが見て理解しやすい形に整えます。
そして「商談機会の創出」。展示会やマッチングを通じて実際の面談を作り出します。
この一連の流れを支援側が設計し、現場で伴走するのが本当の販路開拓支援です。
支援を受けるべき食品メーカーには、共通する特徴があります。
ひとつは「社長が現場を知っている会社」。現場の声を理解しているからこそ、支援者の提案をすぐに形にできます。
ふたつめは「試作・改良のスピードが速い会社」。支援を受けても、行動が遅いと販路は広がりません。
バイヤーの要望に応じて小ロットでも対応できる柔軟さが、結果につながります。
そして三つめは「数字より現場を大事にする姿勢」。販路開拓は短期で利益を出す仕事ではありません。
地道な信頼づくりが最終的な売上を左右します。支援を受けても、この考え方を持っていない会社は成果が出にくいのです。
一方で、支援を受けなくても成果を出せる食品メーカーも存在します。
その特徴は「情報収集と実行力の両方を持っている会社」。社長自身が商談会を回り、各地の市場や競合を見て、
次の一手を素早く打てるタイプです。
社長が営業センスを持ち、現場に信頼されている会社は、
支援よりも自力のほうが早い場合もあります。つまり、支援が不要な会社とは、
すでに“販路の筋肉”がついている会社といえます。
支援を受ける前に、社長が準備しておくと良いことがあります。まず「どんな販路に出たいのか」を明確にすること。
漠然と「売上を増やしたい」だけでは、支援の方向性が定まりません。
次に「現状の課題を紙に書き出す」こと。
営業資料の不足なのか、ターゲットが曖昧なのか、バイヤーとの接点がないのか。
課題を整理することで、支援者が提案しやすくなります。
そしてもうひとつは「社長自身が学ぶ姿勢」を持つこと。
支援を外注と勘違いし、「あとは任せた」では成果が出ません。社長が支援者と同じ目線で考え、行動できる体制が成功の鍵です。
支援者選びにも注意が必要です。販路開拓の実績を公表していない支援者、補助金申請だけを目的にした支援会社、
資料作成だけで終わる支援などは要注意です。理想は、実際に商談の現場を知っている人。
バイヤーと長年付き合いがあり、どんな提案が通るかを理解している専門家です。
支援内容や費用を確認し、信頼できる相手を選ぶことが何より大切です。支援とは、契約書ではなく信頼で動く仕事。
社長と支援者が同じ方向を向けるかどうかが、成功の分かれ目です。
販路開拓支援は、魔法の杖ではありません。自社でやるべき努力を省略するものではなく、
あくまで成果を早めるための加速装置です。支援をうまく使う食品メーカーは、
自社の強みを明確にし、動く順番を間違えません。
商談の準備をしっかり整え、バイヤーの信頼を一つずつ積み上げていく。
そうした会社が、結果的に新しい市場を切り開いていきます。
地方の食品メーカーにとって、販路開拓は挑戦の連続です。支援を受けるか、自力で進めるかは会社の状況によって違います。
大切なのは「どんな販路を目指すのか」「いまの自社には何が足りないのか」を冷静に見極めることです。
支援者はその判断を助ける存在であり、共に成長していくパートナーです。
食品の販路開拓専門家として、私は多くの現場を見てきました。支援を受けた会社が結果を出すとき、
そこには必ず本気の社長がいます。自社の商品を信じ、変化を恐れず、行動を続ける。
その姿勢こそが、販路開拓を成功に導く最大の要因です。
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