食品の販路開拓専門家 伊藤です。
売上が落ち始めたとき、多くの社長は営業担当者を増やして解決しようと試みます。
ですが、焦って展示会に出たり、広告費を投じたりするのは、判断の順番が間違っています。
営業の問題に見える現象の多くは、実は会社の数字の構造が崩れているだけというケースがほとんどです。
社長がまず直視すべきは、今の商売の状態を客観的に示す3つの判断基準です。
ここを間違えたまま動いても、大切な資金と時間は失われるばかりです。
まずは冷静に、自社の数字を以下の手順で整理することをお勧めします。
第1章 売上構成比と依存度の判断基準
最初に確認すべきは、総額の売上ではなく、その中身です。
御社の製品が、特定の数社にどれだけ依存しているかを算出してみてください。
ここで見るべき基準は、上位3社の売上合計が全体に占める割合です。
食品業界における実務上の判断基準は、以下の通りです。 上位3社の依存度が50パーセントを超えたら、黄色信号です。
もし70パーセントを超えているなら、それは非常に危険な状態と判断します。
なぜ50パーセントが分岐点になるのか。 それは、食品業界特有のバイヤー交代や、棚の割り当て変更というリスクがあるからです。
1社への依存が半分を超えると、相手方の都合一つで工場の稼働が半分以下に落ち込むことを意味します。
特に70パーセントを超えると、もはや自社で経営の舵を握っているとは言えません。
相手の言い値での取引を強いられ、断れば会社が立ち行かなくなるからです。
売上が減った理由を営業力不足だと考えるのは、早計です。
多くの場合、これまで頼り切っていた特定の販路の勢いが落ちただけという事実があります。
催事の売上に依存しすぎたり、大手1社との取引だけに甘えていたりする構造そのものを変えない限り、不安は消えません。
営業マンを外に走らせる前に、まずはこの依存度の数字を把握してください。
新規開拓が必要なのは、営業が弱いからではなく、依存度を下げるためです。 御社の上位3社の割合は、今何パーセントでしょうか。
まずはその事実を数字で把握することから始めてください。
第2章 販売先粗利と見直しの判断基準
売上の数字が戻れば安心だと考えるのは、非常に危険です。 商売において最も大切なのは売上ではなく、手元に残る粗利です。
社長が最も警戒すべきは、売るほどに利益が削られる状態です。
ここで用いる判断基準は、全社平均の粗利率です。 全社平均の粗利率を下回る販路は、すべて見直しの対象にすることをお勧めします。
特に食品卸や量販店との取引では、センターフィーや配送費、協賛金などの名目で利益が削られがちです。
売上は大きくても、全社平均以下の粗利しか出ない販路は、実質的に会社を苦しめています。
なぜ全社平均を基準にするのか。 それは、平均を下回る販路を維持するために、
利益の出ている他の販路の稼ぎを食いつぶしているからです。 食品製造には、原材料費や光熱費、人件費が確実にかかります。
利益率の低い仕事をいくら伸ばしても、現場の担当者が疲弊するだけで、会社にお金は残りません。
感覚で判断するのではなく、必ず販路ごとに、経費を引いたあとの本当の粗利を出してください。
平均を下回る場所への注力は、縮小するか、条件を改善するか、早急に決めるべきです。
1円でも多く利益が残る取引先に、会社の限られた資源を集中させてください。
第3章 在庫回転日数と返品率の判断基準
売上は立っているのに現金が増えない場合、原因は在庫と返品にあります。
特に賞味期限のある食品の場合、在庫の滞留はそのまま廃棄という損失に直結します。
在庫を確認するための判断基準は、在庫回転日数です。 在庫の総額が月商を超えていたら、要注意と判断します。
それは、食品流通のサイクルから考えて、月商を超えると鮮度管理が限界に達し、欠品を恐れるあまり過剰在庫を
抱えているサインだからです。 これは、会社の資金がモノに変わって止まっていることを意味します。
また、返品率も必ず数字で確認してください。 返品率が3パーセントを超える商品は、市場から拒絶されていると判断すべきです。
3パーセントという数字は、単なる不良品ではなく、市場の需要と供給が根本からズレていることを示します。
取引先のバイヤーは、一度に売れる量よりも、店頭での回転の速さを厳しく見ています。
営業マンが商品を確保するために無理に押し込んでも、回転が悪ければいずれ返品されて終わりです。
これは営業の腕の問題ではなく、商品の選び方が間違っている証拠です。
営業を増やす前に、今の在庫回転と返品率の数字を直視してください。 回転の速い場所に商品を届ける仕組みを作れば、
資金繰りは確実に改善します。
第4章 なぜ営業のせいにしてしまうのか
売上が落ちたとき、社長が営業のせいにしてしまう理由があります。
それは、社員を叱咤激励して外に行かせることが、最も手っ取り早く動いている実感を持てるからです。
社長は、何もしないで止まっていることが一番怖いのだと思います。
ですが、数字という事実を見ないで動くのは、目的地のない航海と同じです。 焦る気持ちは分かりますが、
そこで社員を責めても状況は良くなりません。 悪いのは社員ではなく、判断の順番を間違えている今のやり方です。
依存度が70パーセントを超えているなら、今年中に50パーセントまで落とす計画を立ててください。
粗利が平均以下の販路は、3ヶ月以内に取引条件を見直すか、撤退を検討してください。
そこまで踏み込んで決めるのが、社長の仕事です。 まず分析を行い、動かない判断をすることが、
今の御社には必要かもしれません。
結論
売上が減ったときに、まず確認すべき順番をまとめます。
1番目は、上位3社の売上構成比です。50パーセントを超えていないか確認してください。
2番目は、販路ごとの粗利です。全社平均を下回る販路は、見直しの対象です。
3番目は、在庫の回転と返品率です。月商以上は確認、返品率3パーセントが基準です。
これらの数字を順番に確認していけば、次に打つべき手は自然と決まってきます。
営業を強化するのは、この3つの基準をクリアした後でいいのです。 判断の順番を1つ変えるだけで、経営の悩みは整理されます。
1人で数字を整理するのは、孤独で根気のいる作業かもしれません。
もしよろしければ、1度御社の数字を一緒に整理する時間を持ちませんか。
客観的な視点で数字を並べ直すことで、新しい道が必ず見つかります。
まずは、直近3ヶ月の数字を書き出すことから始めてみませんか。
—————————————————————————
「良い商品なのに、なかなか新しい売り先が見つからない」
「営業のことで、誰かに相談したいけれど相手がいない」
そんなときは、まずはお気軽にお話を聞かせてください。
泥臭く、現場で一緒に汗をかいて、御社の商品の良さを広めるお手伝いをします。
● お悩み相談・お問い合わせはこちら(無料です)
→ お問い合わせフォームへリンク
● セミナーや取材のお声がけも、喜んでお引き受けします
→ ご依頼はこちらから
● 「なぜうちの商品が売れないのか?」がパッとわかる、
社長さんのための「おまとめ資料(PDF)」も作りました。お役に立てれば嬉しいです。
→ 社長向けPDFはこちら(STORESへ)
