食品の販路開拓専門家・伊藤晴敏です。
夜、工場の明かりが一つだけついている。 機械の音も止まり、静まりかえった事務所で、一人電卓を叩く。
目の前には、支払いの振込用紙と、通帳。 「次の融資、通るだろうか……」
そんな不安で胸が締め付けられそうになっている社長へ、今日は厳しい現実をお伝えします。
きれいごとは言いません。 銀行員も人間です。 彼らが一番恐れているのは「貸した金が返ってこないこと」ではありません。
一番怖いのは、「この社長、本当のことを言っているのか?」という疑念です。
販路開拓の現場で多くの食品会社を見てきましたが、商品が良くても、銀行との付き合い方一つで会社を潰しかけている社長を、
私は何人も見てきました。
資金繰りに悩む食品会社の社長の現実
食品製造業は、現金が残りにくい商売です。 原材料を仕入れ、電気代を使い、人を動かして商品を作る。
スーパーや問屋に納品しても、入金されるのは数ヶ月先。 その間に、次の仕入れがやってくる。
売上が上がれば上がるほど、先に現金が出ていく。 これが食品の現場の恐ろしさです。
「うちは売れているから大丈夫」 そう過信している社長ほど、ある日突然、通帳の数字を見て顔面蒼白になります。
慌ててメインバンクの担当者に電話をかける。 その一報が「手遅れ」の合図になることが少なくありません。
銀行の担当者は、社長の焦った声を聞いた瞬間、こう思います。
「ああ、この会社、自分のところの数字が掴めていないな」と。
銀行が不安になる社長の行動
銀行に嫌われる、あるいは「これ以上は貸せない」と判断されてしまう社長には、共通した行動があります。
難しい経営理論ではありません。すべて「現場の姿勢」の問題です。
1. 資金繰りが詰まってから相談に来る
一番やってはいけないことです。 「来月の支払いが足りない。なんとかしてくれ」 そう言って銀行に駆け込むのは、
医者に「心臓が止まりそうだから今すぐ治せ」と言うのと同じです。 銀行は、準備に時間がかかる組織です。
ギリギリになって泣きつかれると、担当者は「計画性ゼロの社長」という烙印を押します。
2. 売上の見込みが毎回変わる
「来月は大きな受注が入るから、一気に黒字になる」 面談のたびに、威勢のいい話をしていませんか?
結果、その受注が流れたり、半分の量になったりする。
それが二度、三度と続けば、銀行は社長の言葉を「雑音」としか捉えなくなります。
見通しが甘い社長に、大切な預金を貸す銀行員はいません。
3. 自社の数字を説明できない
「細かいことは経理に任せている」 「税理士からまだ資料が届いていない」 これは社長の逃げ口上です。
利益率が何%なのか。 在庫がいくら残っているのか。 なぜ今、現金が足りないのか。
自分の会社の心臓部の数字を、自分の言葉で語れない社長を、銀行は信用しません。
4. 銀行担当者を「ただの窓口」と軽く見る
「利息を払っているんだから、貸すのが仕事だろう」 そんな態度が透けて見える社長がいます。
担当者が若かろうが、経験が浅かろうが、彼らは審査部へ書類をあげる、いわば「社外の広報担当」のような存在です。
彼らをないがしろにすることは、融資の扉を自ら閉めるのと同じです。
5. 赤字の理由を説明できない
「原材料が上がったから」「景気が悪いから」 これだけでは説明になっていません。
「原材料が〇%上がったが、価格の見直しが追いつかなかった。だから次はこう動く」 具体的な理由と対策がない赤字は、
銀行にとって「底の抜けたバケツ」に見えるのです。
銀行が安心するのは「販路が動いている」会社
ここで、銀行員が書類の数字以上に、実はこっそりチェックしているポイントをお話しします。
それは、「社長が外で汗をかいているか」という事実です。
銀行が一番安心するのは、売上が実際に動く気配がある会社です。
具体的には、次のような現場の動きを社長が自分の言葉で語れるかどうかです。
- 展示会でのバイヤーの反応
「先週の展示会で、大手スーパー3社のバイヤーと具体的な商談に入った。試食の反応はこうだった」 - 新しい取引先への提案状況
「今は地元中心だが、来月からは隣の県の問屋を通じて、新しい販路を広げる準備が整っている」 - 既存の売場での改善
「今の売場は目立たないから、バイヤーと交渉して、来月からこのコーナーで展開させてもらう約束を取り付けた」
事務所で数字の帳尻合わせばかり話している社長より、こうした「外の空気」を銀行に届ける社長の方が、圧倒的に信頼されます。
銀行員は、御社の工場の中のことは書類で知っています。 知りたいのは、「これからどうやって現金を稼いでくるのか」という、
外の世界での戦い方なのです。
商談が動いている、つまり「商品が世の中に求められようとしている」という事実は、
どんな財務指標よりも強い説得力を持ちます。
銀行が安心する社長の日常の振る舞い
銀行が「この会社なら支えたい」と思う社長は、何をしているのか。 それは、とにかく「早め」で「正直」な対応です。
- 悪いニュースほど先に言う
大きな失注があった、機械が壊れた、原材料が急騰した。 これらを、決算書が出る前に伝えておく。
「実は困ったことが起きた」と先に相談してくれる社長を、銀行員は信頼します。 - 試算表を毎月出す
決算の時だけ資料を持っていくのではなく、毎月、遅くとも翌月の中旬には数字を届ける。
「うちは常に数字を把握していますよ」という姿勢を見せるだけで、銀行の評価はガラリと変わります。 - 根拠のある「泥臭い」計画
「営業を強化します」という抽象的な言葉ではなく、 「今月はあのスーパーのバイヤーと3回会って、こういう話をした」
そんな現場のリアルな動きを伝える。 汗をかいている社長の姿を数字の裏付けにするのです。
銀行との付き合い方の現実
銀行は、雨の日に傘を貸してくれないと言われます。 これは半分正解で、半分間違いです。
「晴れているうちに、雨が降った時の約束をしていない」から、貸してくれないのです。
地方の小さな食品メーカーにとって、銀行は単なる金貸しではありません。
御社の挑戦を、資金という血流で支えてくれるパートナーです。 だからこそ、格好をつけるのはやめてください。
立派な資料も、横文字の経営用語もいりません。 「今、うちはこういう状態で、ここを改善しようともがいている」
その泥臭い事実を、誠実に伝えることが、信頼関係の第一歩です。
社長が今夜、真っ先に確認すべきこと
今夜、事務所でこの文章を読んでいる社長。 電卓を置いて、一枚の紙を広げてください。
そして、次の3つを書き出してみてください。
- 3ヶ月先の現金の残高はいくらか(予測で構いません)
- 今、一番利益を圧迫している具体的な原因は何か
- 明日、バイヤーや取引先にどのような提案をぶつけるか
もし、1番の数字に少しでも不安を感じたら、明日一番に銀行へ電話をしてください。
「今の状況と、これからの販路の動きを正直に話したい」と。
それが、会社を守り、従業員を守るための、社長の最も重要な仕事です。
数字をごまかさず、事実から目を背けない。 販路開拓も、資金繰りも、根っこは同じ「信頼」です。
御社の商品が、一人でも多くの食卓に届くように。 そのためには、まず社長が「銀行から信頼される社長」として、
どっしりと構える必要があります。
一歩ずつ、確実に進めていきましょう。
—————————————————————————
売上が伸びない。人がいない。
営業をどうすればいいのか、わからない。
一度、整理しませんか。
■個別相談・セミナー・取材のご相談
→ お問い合わせフォームへリンク
■まずは社長向け販路開拓PDFを読む
→ 社長向けPDFはこちら(STORESへ)
