食品会社の販路開拓とは|売上を伸ばすための基本の考え方

食品の販路開拓専門家・伊藤晴敏です。

食品会社の社長から受ける相談で、最も多いのが販路開拓についてです。

「一生懸命に営業をかけても、なかなか決まらない」
「展示会に出展しても、その場限りで終わってしまう」
「最後は価格交渉になり、結局、利益が残らない」

このような悩みは、多くの現場で共通しています。厳しいことを申し上げるようですが、
これらは営業担当者の努力不足が原因ではありません。多くの場合、問題は販路に対する考え方そのものにあります。

この記事では、食品会社が着実に売上を伸ばすための、販路開拓の基本について整理します。

販路開拓の定義:売る努力より場所の選択
まず、販路開拓という言葉の定義を明確にしましょう。

多くの会社が、販路開拓とは営業を増やすことだと考えがちですが、それは違います。
販路開拓とは、売る努力を増やすことではなく、自社の商品が高く評価される売り先を選び直すことです。

例えば、同じ商品でも、地元では高いと言われて見向きもされないのに、別の市場へ持っていった瞬間に、
この品質でこの価格なら安いと喜ばれることが多々あります。

これは商品が悪いのではありません。単純に市場が合っていないだけなのです。
そのため、販路開拓において最も重要なのは、営業マンの足の速さではなく、経営者による市場の選び方になります。

社長がやりがちな3つの勘違い

現場を見ていると、多くの社長が良かれと思って陥っている3つの誤解があります。
これに気づかない限り、どれだけコストをかけても成果は出ません。

勘違いA:値引きすれば売れる

売れないとき、社長が真っ先に指示するのが、他社より安くしろという値引きです。
これが地獄の入り口です。価格を下げて入った販路は、常にさらに安い競合と比較され続けます。

その結果、工場の稼働は上がるのに利益は減り、最後には資金繰りを圧迫します。
価格を下げる前に考えるべきは、今の価格で納得して買ってくれる相手はどこか、という市場の再選択です。

勘違いB:新規だけを追いかける

今の販路がダメだから、とにかく新しいところへと、闇雲に新規開拓を急ぐのも危険です。
社長が外回りに奔走し、新しい名刺ばかりが増えても、成約後のフォロー体制や製造現場のキャパシティが追いつかなければ、
クレームを生んで信頼を失うだけです。
新規を追う前に、既存の販路でなぜこの商品は選ばれているのかを分析することが、成功への近道です。

勘違いC:商品説明だけで通ると思う

うちの味は食べればわかる、こだわりは人一倍だと、商品の良さだけを熱弁する社長がいます。
バイヤーは味の良さを前提とした上で、その商品が自社の売場でいくら稼いでくれるかを見ています。

こだわりという抽象的な言葉ではなく、消費期限、温度帯、利益率、供給体制といった、
相手のビジネスに役立つ客観的な数字と事実を揃えなければ、商談のテーブルにすら乗れません。

失敗しない販路開拓の順番
販路開拓には、確実に成果を出すための順番があります。いきなり営業に行くのは最後です。

利益が残る条件を決める
いくら売っても利益が出なければ意味がありません。最低ロット、卸価格、送料負担の条件を事前に固めます。

相手先を絞る
自社の商品の価格帯と、ターゲットとする客層が一致する店をリストアップします。
高級志向なのか、安さ重視なのかで、向かうべき先は真逆になります。

提案書類を整える
バイヤーが社内検討しやすいよう、FCP商談シートを完璧に仕上げます。写真、JANコード、原料表示など、
相手の手間を省く準備が必要です。

サンプルで判断材料を揃える
サンプルはただ送るのではなく、実際の売場での見栄えや、調理後の状態がわかる形で届けます。
相手が判断するための材料をすべて揃えるのです。

断られた理由を記録して次に活かす
商談が不成立だったときこそ、宝の山です。価格か、量か、パッケージか。
理由を正確に聞き出し、商品改善のデータとして蓄積します。

価格の見方を変える:地元と首都圏の差
ここで、価格についての考え方を深掘りしましょう。今回の広島の高級割烹の事例でもそうでしたが、
商品の価値は環境によって激変します。

地元広島では、総菜でこの値段は高いと言われた商品が、首都圏の高級スーパーでは、
この品質なら妥当、むしろ安いと評価されました。

地方では、どうしても原材料の原価で価格を見られがちです。
可処分所得の高い都市部の市場では、時短になる、プロの味が自宅で食べられるといった付加価値に対してお金が支払われます。

価格を下げる判断をする前に、まずは相手先の選び方を見直してください。
場所を変えるだけで、今の価格のままでも行列ができる販路は見つかります。

販路開拓の実例:判断の順番が見える事例集
実際に販路を選び直し、劇的な売上アップを実現した事例はこちらにまとめました。判断の順番が見えるようになります。

広島の高級割烹が冷凍総菜で再起|30名の雇用を守った販路転換
30名の雇用を守るため、店舗依存を脱却し、技術をパッケージ化して首都圏へ届けた社長の決断の記録です。

岩手の水産加工会社が震災から再建|従業員8名が総菜開発で量販店導入を実現した販路開拓事例
震災後に販路を見直し、新しい市場に挑戦したことで会社を立て直した事例です。

洋菓子メーカーの販路開拓事例|催事依存50%から高級スーパー2社と継続取引へ
催事売上が全体の半分以上を占めていた洋菓子メーカーが販路を見直し、高級スーパーとの継続取引を実現した事例です。

食品会社の社長からよくある質問

営業人員がいない場合はどうするか
むしろ、少数精鋭の方が判断が早くなります。手当たり次第に訪問するのではなく、
前述した相手先の絞り込みと完璧な商談資料を準備すれば、最小限の動きで成約率を高めることができます。

展示会は出るべきか
目的によります。何か良い出会いがあればという漠然とした出展は時間とお金の無駄です。
このバイヤーに会うというターゲットを決め、その相手に合わせたサンプルと資料を持って臨むなら、
展示会は強力な武器になります。

最初に狙う相手先の決め方
自社の商品を一番喜んで食べてくれる人は誰かを徹底的に想像してください。
その人が普段どこで買い物をしているか、その店はどこか。客単価や売場イメージを自分の目で確認し、
自社の商品が並んでいる姿を具体的にイメージできる店から狙います。

サンプルは何を送るべきですか
商品本体だけでなく、原材料のこだわりが伝わる資料、および提供時のイメージ写真を必ず添えてください。
バイヤーは、自社の売場に並んだときの見栄えを気にします。可能であれば、試食用の小分けパックも準備すると、
バイヤーの負担が減り喜ばれます。

断られたとき何を記録するか
単にダメだったではなく、なぜダメだったかを深掘りしてください。
価格が高いのか、賞味期限が短いのか、ロットが大きすぎるのか。
この断られた理由が積み重なるほど、次の販路選びの精度は上がっていきます。

まとめ

食品会社の販路開拓は、営業の回数を増やすことではありません。
自社の商品が、最も高く、かつ喜んで評価される市場を見つけることです。

価格を下げるのではなく、市場を変える。
営業を増やすのではなく、販路を選び直す。

守るために、形を変える。この経営判断こそが、御社の売上構造を根本から変える力になります。
具体的な事例や手順について詳しく知りたい方は、他の実例記事も参考にしてください。


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