食品会社は新商品をどれくらい出すべきか 最適なペースは「年2回」

食品会社の社長からよく聞く悩みがあります。
それは「新商品をどれくらいのペースで出せばいいのか」ということです。

新しい商品を出さなければ取引先に飽きられる。
かといって開発に時間とコストをかけすぎると、本業の製造や営業に支障が出てしまう。
このバランスに頭を悩ませている会社は少なくありません。

答えを先に言うと、新商品は年2回がちょうどいい。
多すぎると疲弊し、少なすぎると話題がなくなる。
春と秋の年2回が、営業面・製造面・販路開拓のすべてで最も効果的です。

営業の面から見てみましょう
バイヤーは一年中、数百社のメーカーから提案を受けています。

新商品が出るたびに連絡をもらっても、頻度が多すぎると印象が薄くなり、むしろ「この会社は落ち着かないな」と
感じられることがあります。

一方で、一年以上何の提案もない会社は、記憶からすぐに消えてしまいます。
ほどよく顔を出し、印象を保つには年2回が理想です。
春と秋に季節感のある提案をすれば、ちょうどいい間隔で思い出してもらえます。

製造の面から見ると、年2回なら現場の負担も少なく済みます。
新商品は開発試作、パッケージ制作、表示、検査、原材料調達など、ひとつの商品でも手間がかかります。

慣れない作業が増えれば既存商品の品質管理にも影響が出ます。
このペースなら、通常業務の合間に無理なく準備ができ、社内のリズムも崩れません。

無理をしない範囲で計画的に動くことが、結果的に継続につながります。

次に販路の面を考えます。

春は新生活、夏前は涼味、秋は実り、冬はギフトと、食品の提案には季節ごとのテーマがあります。
春と秋に新商品を投入すれば、自然にフェアや商戦期に合わせた提案ができます。

特に百貨店や高質スーパーは、季節ごとの入れ替えを重視しており、
ちょうどこのタイミングで新しい商品があると採用されやすくなります。

年間を通じて商談チャンスが安定するため、営業活動にもリズムが生まれます。

ここで大切なのは、新商品=ゼロから開発ではないということです。(最重要ポイントです)

新しい味、新しいパッケージ、期間限定の仕様変更などでも立派な新提案になります。
むしろ、完全な新作を頻繁に出すよりも、既存商品のバリエーションを広げるほうがリスクが低く、
継続的な受注につながります。

例えば人気のドレッシングに「春限定ゆず風味」を追加するだけでも、立派な新商品です。
味や素材を季節に合わせて変えることで、製造ラインの負担を増やさずに新鮮さを保てます。

新しい商品をゼロから開発して年2回発売は大手以外は難しいですよ。

また、バイヤーは「新しい話題をくれる会社」との取引を好みます。
同じ商品を毎回提案しても、営業資料の印象が変わらなければ飽きられてしまいます。

年2回の新商品があれば、そのタイミングは「新しい提案」ができる。
つまり、新商品は販路継続の理由づくりでもあるのです。
バイヤーへの提案ネタがないと連絡しづらいですね。

営業戦略として考えると、この新商品サイクルは次のように回すのが効果的です。
1月に春商品を試作し、3月に発売。
7月に秋商品を試作し、9月に発売。
それぞれ2か月前にバイヤーへ案内を送ることで、商談タイミングを逃しません。

この流れを決めておけば、年2回の新商品を軸に商談・フェア・DM案内を一体化できます。
営業リズムが整えば、受注回数の増加にもつながります。

新商品を出すたびに社内で「もう少し早く準備しておけばよかった」という声が出る会社は多いです。
だからこそ、年間スケジュールを決めておくことが重要です。

年2回と決めておけば、いつ試作を始め、いつ案内を送るかの目安が明確になります。
この見える化が、現場の負担を減らし、営業活動のスピードを上げます。

また、取引先にとっても年2回ペースはちょうどよいです。
季節の入れ替え時期に合わせて提案できるため、棚の回転に合いやすく、売場の刷新もしやすい。

逆に頻繁に提案が来ると、バイヤー側も検討に時間を取られ、かえって負担になります。
「この会社は毎年春と秋に新しい提案をくれる」と覚えてもらえれば、それ自体が信頼の証になります。

そして忘れてはならないのが、社長自身の判断軸です。
新商品は目的ではなく手段です。

「売上を伸ばすため」「バイヤーに思い出してもらうため」「社員のやる気を高めるため」など、
明確な意図をもって開発することが大切です。

なんとなく新しいことをしたい、他社が出しているからうちも出そう、という動機では成果につながりません。
逆に、狙いを定めた少数精鋭の新商品は、長く愛される主力商品になる可能性を秘めています。

この新商品サイクルは、社内にもよい緊張感をもたらします。
開発、デザイン、営業が一体となって動く時期が決まることで、チームに締まりが出ます。

社員が「次は春に向けて何を出そうか」と自然に考えるようになると、会社全体の空気が前向きになります。
それが結果的に取引先への印象にも表れ、売上だけでなく社風の改善にもつながります。

新商品を出す勇気と同じくらい、「出さない勇気」も大切です。
思いついた企画をすべて形にしようとすれば、会社のリソースが分散し、結局どの商品も中途半端になります。

本当に出すべき商品を選び抜く判断こそが、社長の仕事です。
その決断が、会社のブランドを守り、販路の信頼を築きます。

新商品は、量より質です。
どれだけ多く出すかではなく、どれだけ売れる商品を続けて出せるかが本質です。

中小企業にとっては、無理をせず続けられる仕組みこそが強みになります。
その意味で、年2回というペースは「実現可能な継続力」と「取引先の期待感」の両方を満たす黄金バランスです。

まとめると、
新商品を増やすことが目的ではなく、新商品を通じて取引を続けることが目的です。
新商品があれば、社内にもリズムが生まれ、取引先にも印象が残り、営業のきっかけも増える。

売上拡大の原点は、派手な開発ではなく、地道なサイクルづくりにあります。
無理なく続けられるペースを決めておくことが、販路開拓の最短ルートです。



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