鮮魚卸売業は、市場価格の変動や競合との価格競争により、利益確保が難しい状況に直面している食品会社が多い。
安定した経営基盤を築き、持続的に成長していくためには、既存のビジネスモデルを見直し
新たな価値を創造することが求められています。
今日のテーマは、まさにその課題を乗り越え、大きく売上を伸ばした岩手県のある水産加工会社の成功事例です。
市場価格の変動に左右されがちな鮮魚卸売だけでなく、新たな価値を生み出すことで、
どのように顧客の心を掴み、利益を上げているのか。その秘訣を、具体的な取り組みとともに深掘りします。
鮮魚卸売の厳しさと新たな挑戦
これまで、多くの水産加工会社は、漁港で水揚げされた鮮魚を市場へ卸すことが主な事業でした。
このビジネスモデルは、大量の商品を安定して流通させる点では効率的ですが、同時にいくつかの厳しい課題を抱えています。
市場価格の変動リスク
魚の種類や漁獲量、季節、さらには社会情勢によって、市場価格は大きく変動します。豊漁であれば価格が下がり、
不漁であれば価格が高騰するなど、自社ではコントロールできない要因によって売上が大きく左右されるリスクが
常にあります。これは、経営計画を立てる上で非常に大きな不安定要素となります。
そもそも温暖化の影響かわかりませんが、不漁が多い。
競合との価格競争
多くの卸売業者がひしめき合う市場では、わずかな価格差が取引の決め手となることも珍しくありません。
結果として、過度な価格競争に巻き込まれ、本来得られるはずの利益率が圧迫される事態に陥ることも少なくありません。
品質やサービスで差別化を図ろうとしても、価格という大きな壁に阻まれるケースも散見されます。
顧客ニーズの多様化への対応の難しさ
近年、消費者の食に対する意識は大きく変化しています。
「本当に良いものを選びたい」「安心安全な食材を手に入れたい」
「加工の手間を省きたい」といった、よりパーソナルなニーズが高まっています。従来の大量流通を前提とした卸売では、
こうした個別の声に応えきれないというジレンマがありました。
この環境で岩手県の水産加工会社は、これまでのやり方にとらわれず、思い切った転換を図りました。社長の大きな決断。
単に「魚を売る」のではなく、「魚を通じた体験や価値を提供する」という視点に切り替えたのです。
それが、「鮮魚のセット販売」と「要望に合わせた加工」という、二つの大きな柱でした。
顧客の「欲しい」を形にするセット販売と個別加工
この水産加工会社が目をつけたのは、既存の取引先だけでなく、これまでリーチできていなかった新たな顧客層、
特に一般の消費者や小規模な飲食店です。彼らが本当に求めているものは何か、
どんな「不便」を感じているのかを徹底的に考え抜きました。
鮮魚のセット販売
顧客は「その日一番おいしい魚を詰め合わせにしたいけれど、どれを選べばいいか分からない」
「家族構成に合わせた量で欲しいけれど、スーパーでは大容量すぎる」といった悩みを抱えていました。
これに応える形で、数種類の旬の魚をプロの目利きで厳選し、バランス良く組み合わせた「おまかせ鮮魚セット」を開発し
販売し始めました。これにより、顧客は手間なく様々な種類の新鮮な魚を楽しめるだけでなく、
新しい魚との出会いも体験できるようになりました。
単なる商品の提供ではなく、「魚を選ぶ楽しみ」と「調理のわくわく感」という付加価値を提供することに繋がりました。
要望に合わせた加工
「魚をさばくのが苦手で、つい敬遠してしまう」「仕事から帰ってすぐに調理したいから、
下処理済みの魚が欲しい」という声も多く聞かれました。このニーズに対し、購入者の要望に応じて、魚を開きにしたり、
三枚おろしにしたり、内臓を取り除いたりといった個別対応の徹底した下処理サービスを提供。
鱗取りやエラ・内臓の除去といった基本的な処理に加え、煮付け用、焼き魚用といった具体的な調理法に
合わせたカットにも対応することで、顧客は購入後すぐに調理に取り掛かれるようになり、大きな支持を得ました。
このサービスは、特に共働き世帯や料理に時間をかけられない人々から絶大な支持を集め、
リピーター獲得の大きな要因となっています。
単に魚を売るだけでなく、顧客の「不便」を解消し、「喜び」を提供するという視点から生まれました。
顧客は、自分たちのニーズが理解され、それに応えられていると感じることで、この会社への信頼を深め、
価格だけではない「価値」を感じるようになりました。
結果として、顧客満足度は飛躍的に向上し、
口コミによる新たな顧客獲得にも繋がり、リピーターも増え続けています。
鮮度への徹底したこだわりとスピード配送
この水産加工会社のもう一つの、そして最大の強みと言えるのが、その徹底した鮮度管理と驚くべき配送スピードです。
水産物の鮮度は、味や品質に直結する命。だからこそ、ここには一切の妥協がありません。
「朝どれ」の鮮魚を、その日のうちに経験豊富な職人が手早く加工し、丁寧に梱包。
鮮度を保つための最適な温度管理を徹底し、鮮魚が最高の状態でお客様のもとへ届くよう細心の注意を払っています。
梱包された鮮魚が、なんと当日中に東京の顧客のもとへ届くという、類を見ないスピード配送を実現していることです。
これは、単なる物流網の整備だけでは成し得ません。産地と市場、物流会社との信頼関係、顧客を結ぶ物流ルートの最適化、
協力会社との密な連携、そして何よりも「とれたての味を都市部の顧客に届けたい」という強い信念と、
その実現に向けた惜しみない努力があるからこそできることです。
顧客は、まるで漁港から直送されるかのような新鮮な魚を、自宅や店舗で味わうことができるのです。
この「産地直送の鮮度」と「圧倒的なスピード」は、他の追随を許さない大きなアドバンテージとなり、
ブランドの信頼性と魅力を決定的に高めています。
新たな販路開拓で得られるメリット
この岩手県の事例から学ぶべき点は、鮮魚卸売という既存の枠組みにとらわれず、
柔軟な発想で新たな販路を開拓したことです。
単に売上を増やすだけでなく、経営全体の安定と成長に繋がる多くのメリットをもたらします。
利益率の向上
従来の卸売では薄利になりがちでしたが、セット販売や個別加工といった付加価値のあるサービスを提供することで、
単価を上げることができ、結果として利益率を大幅に高めることができます。
単なる「モノ売り」から「価値提供」への転換が、高収益化を実現します。
顧客層の拡大と多様化
これまでアプローチできなかった一般の個人消費者や、小規模ながらもこだわりの強い飲食店など、
新たな顧客層を獲得できます。顧客層が多様化することで、特定の取引先に依存するリスクを軽減し、
経営の安定化に繋がります。
競合との明確な差別化
他社にはない独自のサービス、例えば「朝どれ当日配送」や「個別加工対応」といった強みを持つことで、
価格競争に巻き込まれることなく、市場における優位性を築くことができます。
これは、単なる商品の差別化に留まらず、ビジネスモデルそのものの差別化を意味します。
ブランド力の強化と認知度向上
「鮮度が良い」「便利」「顧客の要望に応えてくれる」といった具体的な評判が広がることで、
会社のブランドイメージが向上します。SNSや口コミを通じて自然と認知度が上がり、さらなる新規顧客獲得へと
繋がる好循環が生まれます。
(さきにホームページやロゴマークを作り直しても顧客は見つかりませんよ)
あなたの会社も新たな販路を見つけませんか?
今回の事例は、水産加工会社に限らず、様々な食品会社さんに共通して言えることです。
自社の強みを活かし、顧客の隠れたニーズを見つけ出すことで、既存のビジネスモデルを越え、
新たな売上を生み出す可能性は無限大に広がっています。
「うちは鮮魚を扱っていないから関係ない」そう思われたかもしれません。
重要なポイントは「顧客が本当に求めているものは何か」「どのような価値を提供できるか」という視点です。
できない発想ではなく、ゼロベースでやるにはどうするか発想が大切です。
今一度、貴社の事業を多角的に見つめ直してみてください。
貴社の商品に、どのような付加価値をつけられるでしょうか? 例えば、加工方法の工夫、食べ方の提案、
特定のターゲットに特化した商品開発など、考えられることはたくさんあります。
貴社の顧客は、どんな「困った」を抱えているでしょうか? 貴社はその「困った」をどのように解決できるでしょうか?
例えば、食材の準備の手間、賞味期限の短さ、特定の調理器具がないことなど、日々のささいな不便の中に、
大きなビジネスチャンスが隠れているかもしれません。
顧客にもっと便利に、もっと喜んでもらうために、貴社には何ができるでしょうか?
例えば、定期購入サービス、レシピの提供、アレルギー対応、環境に配慮したパッケージなど、
顧客体験を向上させるためのアイデアは尽きません。
これらの問いを自社に置き換えて深く考えてみてください。そこに、新たな販路開拓のヒントが隠されているはずです。
もし、新たな販路開拓でお困りのことがあれば、ぜひご相談ください。
貴社の強みを最大限に引き出し、新たな顧客層との接点を作り出し、持続的な成長へと導くお手伝いをさせていただきます。
(このお話しはフィクションです)
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