6次産業化でつまずく理由|地方の食品会社が見落とす「売る出口」

食品の販路開拓専門家・伊藤晴敏です。

北は北海道から南は九州まで、多くの社長とお会いしてきました。
その中で、ここ数年特に相談が増えているのが「6次産業化」についてです。

「自社で育てた原材料を加工して、直接消費者に届けたい」 「付加価値を高めて、利益率を改善したい」

その想いは素晴らしいものです。しかし、現実は厳しい。
意気揚々と参入したものの、数年で息切れしてしまう会社を、私は嫌というほど見てきました。

なぜ、志の高い挑戦が、結果として会社を苦しめることになってしまうのか。
その「本当の正体」をお伝えします。

「良いものを作れば売れる」という落とし穴

6次産業化に挑む会社の多くは、素晴らしい技術を持っています。「素材には絶対の自信がある」
「うちの加工技術は日本一だ」と確信して、多額の投資を行い、立派な建物を構え、こだわりの新商品を完成させます。

ところが、いざ商品が完成して世の中に出そうとしたとき、社長たちは愕然とします。

「どこに持っていけばいいんだ?」 「誰が買ってくれるのかイメージが湧かない」
「せっかく作ったのに、注文がさっぱり来ない」

これが、現場で起きている一番の悲劇です。

多くの社長は、商品が「完成した後」に、どうやって売るかを考え始めます。これこそが大きな誤りなのです。
販路開拓専門家の立場から断言しますが、商品を作る能力と、商品を売る能力は、全くの別物です。

製造のプロである社長が、そのまま「販売のプロ」になれるわけではありません。ここを勘違いしてしまうと、
せっかくの努力がすべて無駄になってしまいます。

販路を決めずに走り出した後に待っている現実

具体的な相談現場の話をしましょう。ある地方の食品会社では、地元の地域特産品を使った素晴らしい調味料を作りました。
味も抜群、見た目もプロに頼んでかっこよく仕上げました。

ところが、販売を始めて数ヶ月で、私のところに相談に来られました。「伊藤さん、全く手元にお金が残らないんです」と。

中身を聞いてみると、深刻な状況でした。まず、どこで売るべきかが決まっていない。
場当たり的に近隣の施設や地元の店に置かせてもらうものの、売れない。
かといって都会の有名店に持ち込もうとすると、今度は運送の仕組みや手数料に驚かされることになります。

結局、売れば売るほど持ち出しが増える。さらに追い打ちをかけるのが、農産加工において重要な原材料の確保です。
「安定して作らなければならない」という焦りから、無理な手配を行い、結果として在庫ばかりが積み上がる。

これらの問題は、すべて「商品を作る前」ではなく、「販売を始めてから」表面化します。
つまり、出口が決まっていないのに、入り口を広げすぎてしまった結果なのです。

出口戦略なき「ものづくり」の恐怖

皆さんに問いかけたいことがあります。その商品は、一体どこのお店の、どの場所に並ぶ姿を想像していますか?

「とにかくどこかのお店に置いてもらえれば」という考えでは、今の時代、商品は100%埋もれます。

たとえば、首都圏のバイヤーは、一日に何十もの提案を受けています。
バイヤーが求めているのは、「単に美味しいもの」ではありません。
「自分たちのお店のお客さまが、喜んで財布を開く理由があるもの」です。

売る場所が決まっていないということは、届ける相手が決まっていないということです。
相手が決まっていないということは、味の設計も、価格設定も、見た目のメッセージも、
すべて「勘」に頼っていることになります。これでは、経営を運任せにしているのと同じです。

社長が最初に考えるべき「唯一のこと」

では、失敗を避けるために、社長が最初に何をすべきか。それは「徹底的に販路を具体化すること」です。
補助金や融資を使って設備を入れる前に、試作を繰り返す前に、以下のことを確認してください。

  1. 「どこで」売るのかを特定する 地元の直売所なのか、都内の高級スーパーなのか、あるいはネット通販なのか。
    販売先が変われば、求められる品質も価格も、配送のルールも劇的に変わります。
  2. 「運ぶ流れ」を頭に入れる 地方から都市部へ送るには、送料がかかります。小口の配送を繰り返せば、
    それだけで利益は吹き飛びます。どうやって効率よく届けるか。この流れが見えていない商品は、
    最初から苦戦を強いられます。
  3. 「残る利益」を計算し尽くす 卸値、手数料、宣伝費、さらに運送費。これらを差し引いても、
    会社にしっかりとお金が残る価格設定になっていますか?「まずは安く売って名前を広める」という考え方は、
    体力のない地方の会社にとっては非常に危険な道です。

現場で見てきて思う、成功への近道

私がこれまで見てきた成功している社長たちは、皆さん驚くほど「売る現場」に詳しい方ばかりでした。
自ら現場に立ち、消費者が商品を手に取る瞬間をじっと観察しています。
そして、その光景を反映させてから、製造を動かします。

「商品開発は、売場から逆算して行うもの」

この原則を忘れないでください。6次産業化は、地域を元気にする大きなチャンスです。
それは「経営のプロ」としての冷静な視点があってこそ成立するものです。

現場のこだわりや熱い想いは大切です。それと同じくらい、あるいはそれ以上に、「ビジネスとしての出口」を
厳しく見つめてください。

もし今、新しい挑戦を考えているのなら、一度冷静になってじっくり考えてみてください。
「その商品は、誰の手に渡る物語が完結していますか?」

もしその答えが少しでも曖昧なら、いつでも私に声をかけてください。現場のリアルな数字と事実に基づいて、
御社の挑戦をしっかりと支えたいと思っています。

きれいごとの助言ではなく、泥臭い現場の知恵を、御社の未来のために使いましょう。
この記事が、御社の大切な一歩を間違えないためのヒントになれば幸いです。

まずは、「販路」を固めること。そこから、すべてが始まります。

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