世間話が苦手な営業担当を伸ばす社長の育て方


営業の世界では、「雑談ができる人が売れる」とよく言われます。
けれど、実際には多くの営業マンや営業レディが、顧客との世間話を苦手にしています。

特に食品業界の若手営業は、商品説明には自信があっても、雑談になると急に言葉が出てこないことが多い。
会話の間をつなぐ一言が出てこない。

沈黙が続くと焦り、結果として本題にすぐ入ってしまう。
そうなると、距離が縮まらず、取引が長く続かない場合もあります。

社長として、この「世間話の苦手さ」を放置してはいけません。
雑談は無駄話ではなく、商談をスムーズに進める潤滑油です。

世間話の上手い営業担当は、相手の信頼を自然に引き出します。
一方で、会話がぎこちない担当者は、どんなに優れた商品を提案しても、相手の警戒心が解けません。

営業力の差は、知識や価格ではなく、会話の温度で決まることがあります。

では、どうすれば「話が苦手な社員」を伸ばせるのか。
まず社長が理解すべきは、世間話とは話術ではないということです。

話題を豊富にすることよりも、「相手に興味を持つこと」が第一歩です。
営業マンが商品を売りたい気持ちを抑え、相手の立場に立って質問をする。

「最近、売場の動きはいかがですか?」
「今人気の商品はどんな傾向ですか?」
このような会話の中から、自然に相手の本音が見えてきます。

雑談とは、信頼をつくるための時間です。
バイヤーや仕入れ担当者は、日々多くの営業マンに会っています。

その中で「話していて楽しい人」「気持ちが楽になる人」と感じる相手に心を開きます。
世間話が得意な人は、相手の反応をよく観察しています。

話すよりも、聞く時間を多く取る。
その姿勢が、「この人は信頼できる」という印象をつくります。

社長が社員に教えるべきポイントは三つあります。
一つ目は「質問力」。
二つ目は「観察力」。
三つ目は「共感力」です。

質問力とは、相手の興味を引き出す質問を投げかける力。

たとえば「最近、売場で気になる商品はありますか?」
「お客様の声で多い意見はどんな内容ですか?」

質問を通して相手が話しやすくなれば、そこから会話が広がります。

観察力とは、相手の表情や口調を見て、気持ちを読み取る力。
「この人は今日は忙しそうだな」「少し疲れているな」と感じたら、話のペースを合わせる。

相手に無理をさせない会話は、それだけで安心感を与えます。

共感力とは、相手の言葉に対して共鳴する姿勢。
「なるほど、そういう見方もありますね」
「たしかに現場ではそうなりますよね」
この一言で相手の心がゆるみます。

営業とは信頼の積み重ね。
相手が心を開けば、商品提案は自然に受け入れられます。

多くの営業マンが誤解しているのは、「話を続けること」が大切だと思っている点です。
会話を続けることよりも、「話しやすい空気をつくること」が大切です。
ぺらぺら話す営業マンはあなたは好きですか?

沈黙があっても気まずくならない関係。
そこに本当の信頼があります。
社長が社員に伝えるべきは、「話すことより聞くことを恐れない」という姿勢です。

ある地方の総菜メーカーでは、世間話が苦手な若手営業がいました。
バイヤーとの商談になると、商品の説明を一気に話し、会話の余白がありませんでした。

社長は、その社員に「まず1分間だけ、商品以外の話をしてみよう」と課題を出しました。
最初は「天気」や「出張先の話」など、ぎこちない会話でした。

それでも続けるうちに、相手からも自然と話題が出るようになり、商談が柔らかく進むようになったそうです。
数ヶ月後、その社員が提案した新商品が採用され、定番化しました。

理由を聞くと、バイヤーがこう言ったそうです。
「話しやすくなったね。だから試してみようと思った。」

雑談の力とは、相手を安心させる力です。
人は、安心して話せる相手に心を開きます。

食品の商談は品質や価格の競争だけではありません。
「誰から仕入れるか」で決まります。
信頼を得る第一歩が、世間話なのです。

社長がやるべきことは、社員に「話し方の型」を教えることではありません。
「相手を観察し、聞く姿勢を持つ大切さ」を伝えることです。

営業会議で商品説明ばかり練習しても、雑談は上達しません。
現場でバイヤーと向き合い、少しずつ経験を積ませることが必要です。
小さな成功体験を積むことで、社員は自信を持ちます。

雑談は、営業力そのものです。
どんなにITが進化しても、人と人のつながりは会話から始まります。

画面越しの商談でも、最初の数分の会話が空気を決めます。
「声のトーン」「表情」「間の取り方」

すべてが信頼づくりの要素です。
世間話が上手な営業は、社長の顔でもあります。
会社全体の印象を左右します。

社長自身も、日々の中で雑談力を磨くことが大切です。
展示会や商談会で初対面の相手にどんな言葉をかけるか。

名刺交換のあとの一言で印象は変わります。
「最近、どんな地域の商品が注目されていますか?」
「〇〇県の加工品、いま評判いいですね。」

そんな自然な一言が、会話のきっかけを生みます。

営業は人との関係づくりです。
雑談が苦手な社員を叱るより、一緒に現場をまわり、成功体験を共有してあげてください。

社長が先に「人に興味を持つ姿勢」を見せることが、最高の教育です。
話上手よりも、聞き上手な会社が選ばれます。

社長がその文化を育てれば、販路は自然に広がります。


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