新しい販路を開拓したり、既存の取引先との関係を維持したりする中で、「この取引先との商談は、正直気が進まないな…」と感じることはありませんか?
ノルマ達成のために、どんなに苦手な取引先でも笑顔で対応し、我慢して契約を取る。それが営業の仕事だと考えているかもしれませんが、実はその「我慢の営業」こそが、売上を伸ばす上で大きな足かせとなっている可能性があります。
すべての顧客に同じ時間と労力を費やすことは、決して効率的ではありません。今回は、食品会社の社長にぜひ知っていただきたい、「顧客を選ぶ」という新しい営業の考え方と、それを実践するための具体的な方法を、わかりやすく解説します。この考え方を実践することで、御社の営業活動はストレスから解放され、本当に大切な顧客との関係を深め、結果として売上アップという成果をもたらすことができるでしょう。
「我慢の営業」から脱却すべき3つの理由
まず、なぜ我慢して苦手な取引先と付き合い続けることが良くないのか、その理由を3つに分けて見ていきましょう。
1. チームのモチベーション低下と生産性の低下
苦手な取引先との商談は、御社の営業チームのモチベーションを大きく下げてしまいます。「またあの取引先に行くのか…」という落ちこんだ気持ちは、商談の内容にも影響を及ぼします。熱意のない説明や消極的な提案では、たとえ商品がどんなに優れていても、その魅力は相手に伝わりません。
結果として、契約につながる可能性が低くなり、御社のチームは自信を失ってしまうという悪循環に陥ります。さらに、商談前後の準備や報告にも時間がかかり、本来集中すべき他の業務の生産性も低下させてしまいます。ストレスは、肉体的な疲労以上に仕事の質を下げてしまうのです。
2. 重要な顧客への時間不足と機会損失
苦手な取引先に費やしている時間は、本来であれば、御社のファンになってくれる可能性のある顧客や、すでに良好な関係を築いている優良なバイヤーのために使うべき貴重な時間です。
苦手な取引先とのやりとりに時間を奪われることで、本当に大切にすべき顧客へのフォローアップや、新規顧客開拓のための活動がおろそかになってしまいます。優良顧客との関係は、定期的なコミュニケーションによってさらに強固なものになります。このコミュニケーションが不足すると、競合他社に顧客を奪われるリスクも高まります。長期的な視点で見ると、これは大きな機会損失につながります。
3. 会社のブランドイメージ低下と信頼関係の構築困難
苦手な取引先との商談で生まれる「この取引先は苦手だな」という感情は、意外と相手に伝わってしまうものです。商談中の小さな仕草や声のトーン、言葉の選び方などから、相手は「この会社はあまりうちに関心がないようだ」と感じ取ります。
このような状態では、良好な信頼関係を築くことは難しく、結果として「あの会社の営業はなんだか熱意がないな」と、御社のブランドイメージを損なうことにもなりかねません。お客様は、単に商品やサービスを買うのではなく、「この人から買いたい」「この会社と付き合いたい」という感情で取引を決めます。心の底からその取引を望んでいなければ、お客様からの信頼を得ることは難しいでしょう。
「顧客を選ぶ」とは、決して傲慢な態度ではない
「顧客を選ぶなんて、生意気だと思われるのでは…」と心配される方もいるかもしれません。しかし、この「顧客を選ぶ」という考え方は、決して相手を見下したり、ぞんざいに扱ったりすることではありません。
これは、「お互いが気持ちよく取引できる相手」を積極的に見つけ、関係を深めていくという、攻めの営業姿勢です。御社の強みを深く理解し、商品やサービスに心から共感してくれる顧客との取引に集中することで、双方がより大きなメリットを得ることができます。
また、「顧客を選ぶ」ことは、御社のリソース(人、時間、お金)を最も効果的に活用するための戦略的な判断でもあります。限りあるリソースを、会社の成長に貢献してくれる顧客に集中投下することで、より大きな成果を生み出すことができるのです。
では、具体的にどのような顧客と取引すべきなのでしょうか。
成長につながる「理想の顧客像」を見つけ出す3つのステップ
ここからは、御社にとっての「理想の顧客」を見つけ出し、売上アップにつなげるための具体的なステップをご紹介します。
ステップ1:「付き合いたい顧客」の条件をリストアップする
まずは、御社が「どのような顧客と付き合いたいか」を明確にしましょう。具体的な条件を書き出すことで、理想の顧客像がよりはっきりと見えてきます。
例えば、
- 御社の強み(品質、ストーリー、独自性など)を深く理解してくれる顧客
- 価格だけでなく、品質や付加価値を評価してくれる顧客
- 新商品の提案に積極的に耳を傾け、一緒に市場を創り上げてくれる顧客
- 御社の理念やビジョンに共感してくれる顧客
- 支払いがスムーズで、良好なコミュニケーションが取れる顧客
- 会社として成長していきたいと考えている顧客
といったように、具体的な条件を書き出してみてください。この作業を通じて、御社が本当に大切にしたい取引先のイメージが明確になります。営業チーム全員でこのリストを作成することで、チーム全体のベクトルを合わせることもできます。
ステップ2:現在の顧客を「理想の顧客」と照らし合わせる
次に、現在取引のある顧客を、ステップ1で作成したリストと照らし合わせてみましょう。すべての条件に当てはまる顧客もいれば、一部しか当てはまらない顧客もいるはずです。
このとき、「どうしても付き合いが難しい」「取引を続けること自体がストレスになる」と感じる顧客があれば、その取引から「卒業する」という選択肢も視野に入れてみましょう。もちろん、いきなり取引をやめるのではなく、段階的に時間を減らしていく、他の会社に紹介する、といった方法も有効です。
すべての顧客に平等に接することは、一見すると誠実な態度に思えますが、結果的に「誰にとっても一番」ではない状態を生み出してしまいます。本当に大切な顧客をさらに大切にするために、苦手な顧客との関係を見直す勇気を持つことが重要です。
ステップ3:「理想の顧客」に時間を集中する
リストアップした「理想の顧客」候補と、すでにお付き合いのある優良顧客に、御社の貴重な時間とリソースを集中させましょう。
具体的には、
- 新商品の情報や特別なご案内を優先的に提供する
- 商談だけでなく、日頃から感謝の気持ちを伝える
- 顧客の課題を一緒に解決するパートナーとして積極的に提案を行う
- 顧客からのフィードバックを真摯に受け止め、商品やサービスに反映させる
といった取り組みをすることで、顧客との関係はより強固になり、長期的な売上アップへとつながっていきます。顧客との信頼関係が深まれば、新しい商品の開発や、共同でのプロモーションなど、さらなるビジネスチャンスが生まれる可能性も高まります。
顧客を選ぶ勇気が、御社の未来を拓く
「顧客を選ぶ」という考え方は、一見するとリスクがあるように思えるかもしれません。しかし、すべての顧客に平等に接しようとする姿勢こそが、実は御社の成長を阻害している原因かもしれません。
嫌な取引先に費やしていた時間を、見込みの高い顧客や既存の優良顧客のために使うことで、御社のチームは本来の力を発揮できるようになり、仕事に対するやりがいや達成感をより強く感じられるようになります。これは、会社の離職率低下にもつながる重要なポイントです。
また、お互いを尊重し、信頼し合える顧客との取引は、単なる売買関係を超えた深いパートナーシップを築きます。こうしたパートナーとの関係は、新しいアイデアやビジネスチャンスを生み出し、御社にさらなる成長をもたらしてくれるでしょう。
食品会社の社長である晴敏さんにぜひ考えていただきたいのは、「誰と付き合うか」という選択は、「どのような未来を築きたいか」という選択と、同じくらい重要だということです。顧客を選ぶ勇気が、御社の未来を切り開く大きな一歩となるはずです。
お客様は神様です=取引したいお客様に限ります!
まとめ
- 「我慢の営業」から脱却する:すべての顧客に平等に接するのではなく、本当に大切にすべき顧客に時間と労力を集中させましょう。
- 「理想の顧客像」を明確にする:御社にとって「どのような顧客が理想か」を具体的に定義し、それに合致する顧客に焦点を当てましょう。
- 勇気を持って「顧客を選ぶ」:苦手な取引先との関係から「卒業」し、お互いを尊重し合えるパートナーとの関係を築くことで、新たなビジネスチャンスが生まれます。
この考え方を実践することで、御社の営業はより効率的かつ効果的になり、売上倍増への道が拓けます。さあ、今日から「攻めの営業術」を実践して、御社の未来をさらに明るくしていきませんか?
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