顧客をランクづけして営業効率をアップする

営業効率を高める第一歩は顧客の選別

営業活動を効率化するために効果的な方法のひとつが「顧客のランクづけ」です。
食品会社にとって営業リソースは有限であり、全員に同じ対応をすれば時間も人材も不足し、
成果が出にくくなります。

顧客を分類して優先順位を決めることは、失礼なことではありません。
むしろ会社を守り、社員の雇用や商品を安定供給するために当然必要な経営判断です。
重要な顧客に注力し、将来性のある顧客を育て、利益につながらない案件に無理をしない。
この整理ができてこそ、会社は持続的に成長します。

顧客ランクづけの基本モデル

営業効率を高めるためのランクづけはシンプルで十分です。

  • Sランク:受注確度が高く、最優先で営業すべき顧客
  • Aランク:長期的に受注の可能性がある顧客
  • Bランク:タイミングを見極めながらフォローすべき顧客
  • Cランク:現時点では積極的に追う必要がない顧客

これ以上複雑にすると現場で機能しなくなります。大切なのはランクづけを営業担当者が実務に落とし込み、
毎日の営業行動に活かすことです。

ランクを決める判断基準

ランクづけは感覚だけでなく、明確な基準を設けることで精度が高まります。

  1. 取引の実績
    過去の発注金額や継続性。安定した注文を出す顧客はSランク候補。
  2. 資金力や成長性
    財務基盤がしっかりしている会社は大型案件につながる可能性が高い。
  3. 商品の親和性
    自社商品と取引先の顧客層が一致しているか。ミスマッチがあれば優先度は下がります。
  4. 担当者の温度感
    商談中の姿勢や質問の質など、現場でしか分からない情報も重視します。

食品会社特有の顧客パターン

食品業界には独特の取引特性があります。

  • 百貨店や高級スーパー
    ブランド力があり、取引できれば信用度が増す。ただし条件は厳しく、利益率は低め。
  • 地域スーパーや中堅流通
    地元密着型で数量は中規模。継続性が高く、安定収益につながる。
  • 観光地の土産物店
    季節波動があるが、観光客ニーズに合えば利益率は高い。
  • 通販事業者やECモール
    小ロットでも全国に広がる可能性がある。成長性を見極めてAランクに昇格させるケースもある。

こうした顧客の特性を理解し、自社商品との相性を考えてランクづけすることが重要です。

北海道のお菓子メーカーの事例

北海道のある中堅お菓子メーカーは、地元でのブランドは強いものの首都圏では販路が限られていました。
展示会や商談会に出展しても、成果は一部にとどまっていました。

原因を探ると、すべての顧客に均等に時間を割き、優先順位が不明確だったのです。
そこでランクづけを導入しました。

  • Sランク:大手百貨店、全国チェーンのスーパー、観光需要の大きい空港売店
  • Aランク:地方中堅スーパーや有力商社
  • Bランク:小規模店舗や取引が不定期な企業
  • Cランク:価格競争ばかりを要求し、利益が残らない顧客

営業リソースをSとAに集中した結果、半年で大手流通との新規契約を獲得。売上は前年比15%アップし、
営業担当者の残業時間も削減されました。

顧客ランクづけは失礼ではない

一部の社長は「顧客を区別するのは失礼ではないか」と考えます。
現代は市場が飽和し、取引先も取引相手を選んでいます。すべての顧客に均等に対応することは非現実的です。

ランクづけは顧客を差別する行為ではなく、自社の事業運営を安定させるための合理的な仕組みです。
むしろ優先順位をつけることで、SランクやAランク顧客に対してより丁寧に対応できるようになります。

社長自身の関与が成果を左右する

顧客ランクづけは営業担当者任せにしてはいけません。最終的には社長自身が方針を示し、
優先順位を承認することが重要です。経営資源の配分に直結する判断だからです。

現場の声を尊重しつつ、社長が「今期はSランクの拡大を重視する」「Aランクを育成して将来の柱にする」といった方針を
明確に示せば、営業の行動は統一され、迷いがなくなります。

営業マンのモチベーションを高める

ランクづけは営業担当者のモチベーションにもプラスに働きます。優先順位が明確になることで、無駄な訪問が減り、
成果が出やすくなります。営業マンは成果を実感できると自信を持ち、さらに積極的に動くようになります。

逆にランクがあいまいだと、営業マンは「どこに注力すべきか」分からず疲弊します。
会社としても結果が見えず、負の連鎖が生まれます。

CRMは不要、Excelで十分

顧客ランクづけを始めるにあたり「CRMを導入すべきか」と考える経営者も多いですが、中小食品会社には不要です。
大規模なシステムは高額で、運用の負担も大きいからです。

実際には、Excelで顧客リストを作り、ランクの列を追加するだけで十分です。営業担当者が更新しやすく、
会議でも簡単に共有できます。半年ごとに見直す運用を習慣化するだけで大きな効果を発揮します。

重要なのはツールではなく、習慣として続けることです。
立派なシステムを導入しても運用されなければ意味がありません。

まとめ

食品会社が営業効率を高めるには、顧客ランクづけが不可欠です。
これは失礼なことではなく、事業運営上の必然です。Sランク顧客に集中し、Aランクを育成し、BやCに無理をしない。
このメリハリが営業の効率を飛躍的に高めます。

北海道のお菓子メーカーの事例が示すように、優先順位を明確にするだけで売上も利益も改善されます。
CRMに頼らずExcelで十分に実行できる仕組みです。社長が関与し、営業現場と方針を共有することで、
組織全体が同じ方向を向きます。

顧客を平等に扱う理念は尊いものですが、限られた経営資源を最大限に活かすためには、
ランクづけを徹底する勇気が必要です。食品会社の社長には、この取り組みを日常の営業活動に組み込み、
持続的に成果を生み出す体制を築いていただきたいと思います。


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