多くの社長がバイヤーや社内からどのような評価を受けているかに触れる機会が多くあります。時には、「うちの社長、もう周りが見えてないかも」「あの人がトップだと若手が続かない」「バイヤーも会いたがらないって聞いた」といった厳しい声を聞くこともあります。
これらの言葉は、いわゆる「老害社長」と呼ばれてしまうケースに見られるものです。本人に悪気がなくとも、周囲との間に生じるズレや、無自覚な言動が原因で信頼を失ってしまうことがほとんどです。
長年、多くの中小企業の現場を専門家として見てきた経験から、この記事では「老害」と周囲から思われないために、経営者が特に気をつけたい四つの重要なポイントを具体的にお伝えします。これらのポイントを実践することで、社長は社内外からの信頼をさらに深め、企業全体の成長に貢献できるでしょう。
1. 言葉遣いの節度は信頼の土台となる
社長が日常的に使う言葉は、会社の雰囲気全体を形作る上で非常に大きな影響力を持っています。「最近の若いやつは…」「昔はそんなこと言わなかったぞ」「あのバイヤーもどうせ適当でしょ」といった発言は、たとえ冗談のつもりであっても、若い社員や取引先からは軽視、否定、あるいは蔑視と受け取られる可能性があります。このような言葉は、無意識のうちに相手との壁を作り、円滑なコミュニケーションを妨げてしまうことにつながりかねません。
時代や世代が変化しても、他者への敬意をもって丁寧に話す姿勢は、どのような業界においても高く評価される普遍的な要素です。特に、会社の未来を担う次世代の社員や、ビジネスを共に進める外部パートナーとの間に強固な信頼関係を築くためには、上から目線ではなく、一人の人間としての対等な姿勢が求められます。相手の意見に耳を傾け、感謝や協調の気持ちを言葉で表現することが、組織全体の生産性向上にもつながります。
2. 身だしなみの清潔感が第一印象を決める
商品を提案する場面において、社長自身の印象は商談の成否に極めて大きな影響を与えます。
ある地域スーパーのバイヤーが「中身は良さそうな商品だったのに、社長さんの靴が泥だらけで…ちょっと残念でした」と話していた事例は、身だしなみがビジネスに与える影響の大きさを物語っています。食品を扱う会社である以上、清潔感や身だしなみの細やかさは、お客様や取引先に対する目に見える「安心感」に直結します。
チェックしておきたいポイントは多岐にわたりますが、特に以下の点には注意を払うべきです。靴の汚れや擦り減り具合、爪や髭の清潔感、シャツのシワ、汗染み、そして加齢臭対策など、細部にわたる配慮が求められます。年相応にきちんと整えられた身だしなみは、ビジネスにおける信頼感を飛躍的に高めます。派手に装う必要はありませんが、だらしなさが出ないように常に意識することが肝要です。これは個人の印象だけでなく、企業の品質管理や経営姿勢を示すものとして受け取られるため、非常に重要です。
3. 柔軟な姿勢が社内と取引先の信頼を育てる
「うちは昔からこうやってきた」「今さらやり方を変えるつもりはない」といった言葉は、新しいチャレンジを阻害し、社員やバイヤーからの貴重な提案を遠ざけてしまう原因となります。現代の市場は常に変化しており、そのスピードは加速する一方です。小ロット対応、SNS映えするパッケージデザイン、無添加やサステナブルへの配慮など、消費者のニーズや社会のトレンドは次々に新しい流れを生み出しています。
こうした時代の波に迅速かつ的確に対応するためには、「やってみよう」という前向きで柔軟な姿勢が不可欠です。年齢や経験を重ねた経営者こそ、自らの既成概念にとらわれず、柔らかい姿勢で新しい挑戦を受け入れることで、若手社員から尊敬され、取引先からも「また会いたい」と思われる存在になれるのです。
変化を恐れず、常に学び続ける意欲が、企業をさらに成長させる原動力となります。
4. 協調性と感謝の言葉が組織を強くする
「ありがとう」「助かったよ」「よくやってくれたね」といった感謝の言葉を、社長がどれだけ日常的に使っているかは、組織の文化に大きな影響を与えます。実際に、ある中小企業では、社長が社員に「ありがとう」と言う習慣をつけただけで、社内の雰囲気が劇的に改善されたという事例があります。感謝の言葉は、社員のモチベーションを高め、チームワークを強化し、企業全体の生産性向上に貢献します。
特に若い社員や外部パートナーは、従来の上下関係よりも、その人が信頼できるかどうかで人間関係を判断する傾向が強まっています。一方的な命令ではなく、共感と感謝をベースにしたコミュニケーションこそが、これからの時代に求められる社長のリーダーシップです。社員やパートナーの貢献を認め、積極的に感謝を表現することで、強固な人間関係を構築し、それがビジネスの成功にもつながります。
社長のあり方が販路を決める時代
販路開拓は、誰が商品を売るか、誰と組むかという人間関係の勝負でもあります。経営者の人柄や姿勢は想像以上に大きく作用します。社員に信頼される社長、バイヤーに安心感を与える社長、支援者や取引先に積極的に紹介されやすい社長には、共通して謙虚さ、清潔感、柔軟さ、そして感謝の姿勢があります。
人の心は、見た目や言葉遣い、そして考え方一つで大きく動きます。新たな販路もまた、そうした信頼の延長線上に自然と広がっていくものなのです。年齢を重ねた今だからこそ、経営者として磨き上げるべき人間力は計り知れません。
追伸:年齢を重ねた今こそ、光る社長で
私はこれまで多くの社長と現場で接してきましたが、年齢を重ねた経営者の中にも、本当に魅力的な方がたくさんいらっしゃいます。若い社員の意見に真摯に耳を傾ける柔らかさ、過去の経験を押し付けることなく、示唆に富んだ奥深さで語る姿勢、そして誰に対しても丁寧で、その場を明るくする言葉遣い。これらは、長年の経験と人間性が融合してこそ発揮される魅力です。
何歳になっても学び続け、変化しようと努力する姿勢を持つ人は、自然と周囲から応援され、良い縁にも恵まれていきます。年齢を重ねた今だからこそ出せる重みと人間力は、若手にはない大きな財産となるはずです。
社長が、「あの社長となら一緒にやりたい」と多くの人に言われるような存在になることを心から願っています。この記事が、その一歩を踏み出す上で少しでもお役に立てば幸いです。
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