今回は、営業チームを抱える食品会社の社長から寄せられる質問を取り上げます。
「うちの営業は飛び込みをしているが、成果が出ない。何が悪いのか」
この質問は全国の食品会社から共通して聞かれます。
飛び込み営業は、最もシンプルで即行動できる手法です。
けれど、方法を間違えると成果が出にくい。
その一方で、やり方を変えるだけで受注率が急に上がることもあります。
多くの営業マンがやってしまう失敗は、初回訪問でいきなり商品の説明をしてしまうことです。
「せっかく訪問したのだから話をしたい」と思う気持ちはわかります。
けれど、飲食店・小売店・問屋などは日々多忙です。
一日に何人もの営業が来て、同じようにパンフレットを渡していきます。
その中で「また営業か」と思われた瞬間、話は聞いてもらえません。
初回訪問の目的は説明ではなく、「顔を覚えてもらうこと」です。
まずは笑顔で挨拶し、名刺と資料を置くだけでいい。
説明を我慢できる人が、信頼を得ます。
この「売り込まない勇気」が、飛び込み営業で最も大切な考え方です。
二度目の訪問も挨拶だけで十分です。
「前回はお忙しいところありがとうございました。あらためてご挨拶に伺いました」
この一言で、相手の印象が変わります。
三回、四回と訪問を重ねるうちに、担当者の方から「何を扱っている会社ですか?」と聞かれるようになります。
ここで初めて、商品の説明をすればよいのです。
(ときにはクレームにもなります)
この段階までいけば、説明を聞いてもらえるだけでなく、試してもらえる確率が高まります。
営業は、押し込むのではなく「思い出してもらう」ことから始まります。
顔を出す、笑顔を見せる、名刺を渡す。
たったそれだけの積み重ねが、いつのまにか信頼になります。
ある調味料メーカーの例を紹介します。
営業3名が半年間で地元の飲食店を100件訪問しました。
最初の2か月は成果ゼロ。
それでも週に1回ずつ訪問を続けたところ、3か月目に「前に来ていた人、あのソースもう一度見せて」と声がかかりました。
そこから少しずつ注文が増え、半年後には定期取引先が10店舗に増えたのです。
やったことは単純。
商品の説明を焦らず、顔を出し続けたことだけでした。
営業活動の本質は、相手の時間を奪わないこと。
そして、相手が困ったときに「そういえばあの人」と思い出してもらえる関係をつくることです。
それには時間がかかりますが、いったん信頼ができれば継続取引になります。
社長が営業を指導する際に大切なのは、「すぐに成果を求めないこと」です。
数字のプレッシャーを強めるほど、営業は短期的になります。
「一件でも契約を取ってこい」と言えば、営業は焦り、相手を疲れさせてしまう。
逆に「半年かけて信頼を築け」と伝えると、行動が落ち着きます。
この余裕が信頼を呼び込みます。
飛び込み営業は、昔ながらの方法ですが、今の時代にこそ合っています。
SNSやウェブ広告では、地域の飲食店やバイヤーとの信頼関係を築くことが難しい。
メールよりも、人の顔を見せる。
声をかけ、笑顔を残す。
人間的な温度が伝わる営業だからこそ、地方の食品会社には有効です。
営業は、結果よりも「姿勢」が見られています。
売り込みではなく、相手の立場を理解する姿勢。
それを感じたとき、相手は心を開きます。
営業とは信頼の積み上げ。
この信頼こそが、販路開拓の基礎です。
飛び込み営業は辛抱の連続です。
1日10件回っても反応がないことも多い。
けれど、その中で笑顔を保ち、あいさつを続ける人が最後に成果をつかみます。
営業マンにとって最も大切なのは、「焦らず続ける力」です。
そして、社長にとって最も大切なのは、その努力を見守ることです。
いま問い合わせが減っている会社こそ、この基本に立ち返るチャンスです。
派手な戦略よりも、地道な訪問。
短期間で数字は動かなくても、信頼は確実に積み上がっています。
その信頼が、3か月後・半年後に大きな成果へ変わります。
私が支援してきた食品会社の中でも、飛び込み営業を根気強く続けた会社は例外なく安定成長しています。
展示会のような単発イベントより、日々の訪問で得た関係が長く残るからです。
訪問先が「あなたの会社の商品なら間違いない」と言ってくれる瞬間。
その言葉こそが、営業の最高の成果です。
飛び込み営業は時代遅れではありません。
むしろ、今の時代にこそ「人間味のある営業」が必要です。
メールやDMだけでは伝わらない温度を、直接の訪問が取り戻してくれます。
訪問の積み重ねは、やがてブランド信頼へと変わります。
今こそ、売り込まない勇気を持ちましょう。
焦らず、堂々と、相手を思いやる営業を。
その姿勢が、食品会社の未来を切り開きます。
無料の販路開拓相談では、営業の見直しや訪問計画の立て方を個別にお伝えしています。
自社の営業体制をもう一度立て直したい社長は、まず一度ご相談ください。
———————————————————————————————
顧問契約・セミナー・取材のご相談
→ご相談・お問い合わせフォーム
食品会社の社長向けPDF教材の販売
→教材購入はこちら(STORES)
