営業は「何を買うか」ではなく「誰から買うか」

食品メーカーの社長と話していると「いい商品さえあれば必ず売れる」と信じている方が多いのですが、
実際はそうではありません。

人は論理で買うのではなく、感情で買います。これは個人向けでも法人向けでも同じです。

法人営業でも意思決定は感情で行われる

中小企業の場合、バイヤーや経営者は仕入れから決裁まで一人で行うケースが多いです。
どれだけ自社にメリットがある商品でも、担当者との相性が合わないと「今回はやめておこう」となります。

つまり、商品力だけでなく、「この人から買いたい」と思われる人間関係づくりが大切です。
特にバイヤー商談会や展示会では、短時間で信頼されるかどうかが勝負です。

感情で買うことの科学的根拠

行動経済学や心理学でも「人は合理的ではなく感情で意思決定する」と言われています。
ノーベル経済学賞を受賞したカーネマン教授は、人はまず感情や直感で判断し、

あとから理由をつけて正当化すると指摘しています。
価格が少し高くても“好きな担当者から買う”ことが多いのはこのためです。
だからこそ、商品の良さを説明するだけでなく、「好かれる」「信頼される」ことが重要です。

しつこい営業は逆効果

よくある失敗は、会社説明や商品説明を何度も繰り返し、最後は「お願いします」と懇願してしまうパターンです。
こうなるとバイヤーは引いてしまい、次の商談にもつながりません。

営業は売り込む場ではありません。
顧客にとってのメリットを一緒に考える時間です。

失敗する営業・成功する営業

ある地方の味噌メーカーは展示会で名刺を配り、商品のこだわりを10分間熱弁しましたが、
バイヤーの反応は薄く、商談は終了。後日フォローしても返事はありませんでした。

一方、別のメーカーは、最初に「どんな売場で売りたいか」「どんなお客様に届けたいか」を質問し、
バイヤーの理想像を聞き出しました。
その上で「ではこの味噌なら高齢者層に向けた減塩コーナーでテスト販売できます」と提案。
商談後に小ロットのサンプルを送り、2か月後に定番採用が決まりました。

この差は「話した内容」ではなく「相手の感情を動かしたかどうか」です。

商談会15分の使い方

商談会の面談時間は15〜20分が標準です。最初の3分で名刺交換と自己紹介、次の5分で商品の強みを簡潔に紹介、
残りの7分で相手の質問を引き出し、次のアクションを決めます。
この「残り7分」で宿題をつくれたかどうかが勝負です。サンプル発送日や見積提示日をその場で決めて、
相手に「このメーカーは動きが早い」と思わせることが次につながります。

選ばれる営業・社長がやっていること

選ばれる社長は、次の行動を徹底しています。

  • 相手の課題をヒアリングする
  • 自社商品が役立つ具体的シーンを提案する
  • 価格やロットなど数字を明確に提示する
  • その場で結論を迫らず、次のアクションを決める

これらを実践することで、「この人となら仕事をしたい」と思ってもらえます。

感情で選ばれるための行動

具体的に何をすべきかをまとめます。

  1. 商談前に相手の情報を集める
     企業サイトやSNSで取り扱い商品、価格帯、バイヤーの興味関心を調べる。
  2. 第一印象を整える
     服装、名刺、挨拶は簡潔に。清潔感が最優先。
  3. 話すより聞く
     相手が話した内容をメモし、次回商談で反映させる。
  4. 小さな宿題をつくる
     「試食サンプルを送る」「追加資料を送る」など、次の行動を必ず設定する。
  5. 感情を大切にする
     相手が嫌がることはしない、プレッシャーをかけない、笑顔で終える。

社長の実践チェックリスト

  • 名刺交換時に笑顔で相手の名前を呼んでいる
  • サンプルは翌日までに発送している
  • 価格・ロットは即答できる
  • 相手の質問をメモし、次回商談で答えている
  • 自社の強みを3つ以内に絞って説明できる
  • 商談後にお礼メールを当日中に送っている
  • 2週間に1回は取引先に情報提供している
  • 展示会でブースに立つときは必ず声をかける
  • 事務局との関係を定期的に持っている
  • 失注した案件でも次の提案を用意している

チェックが半分以下なら、改善すべきポイントがまだまだあります。

展示会・商談会でも成果を出す

コロナ禍でも成果を出しているメーカーは、展示会や商談会に出てもブースで待つのではなく、
積極的に声をかけ、短時間で相手の心をつかんでいます。
商談会は出会いの場です。大量受注が決まることは稀。次につなげるための信頼関係づくりが目的です。

次の一歩

この記事を読んだら、まずは既存取引先に「最近の売場の様子はいかがですか?」と一通メールを送ってみましょう。
感情を動かす第一歩は、相手の状況に関心を持つことです。小さな接点を増やすことで、次の商談のチャンスが生まれます。

まとめ:感情で選ばれる社長になろう

なにを買うかではなく、誰から買うか。
この原理原則を理解した社長は、販路開拓がスムーズになります。

営業や売り込みを頭から消し、顧客のメリットだけを考え、関係づくりに専念してください。
そうすれば、どんな時代でも販路開拓は前に進みます。


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