信用金庫がつなぐ販路開拓 食品メーカーが活かす地元マッチングフェアの力

大阪府信用金庫協会が主催するビジネスマッチングフェアが、6月11日・12日の2日間、マイドームおおさかで開催されました。
このフェアは、地元企業同士の取引や連携を促すために、信用金庫が取引先企業を一堂に集めて行う商談イベントです。

食品メーカーの社長にとっても、実はこのような「信用金庫主催のマッチングフェア」は見逃せない販路開拓の場です。
展示会やバイヤー商談会と比べて、規模はやや小さいものの、内容は非常に濃い。
何より、地元企業が中心のため「商談後の距離が近い」のが特徴です。

■ 信金マッチングの強みは“信頼の橋渡し”
展示会では、出展したからといってすぐに取引が始まることはほとんどありません。
一方で、信用金庫のマッチングフェアは、金融機関が「うちの取引先です」と推薦してくれる形でつながるため、
最初から一定の信頼関係がある状態で商談が始まります。
つまり、ゼロからの出会いではなく、「紹介型の出会い」。
この“入口の温度”が高いことが、商談成立率を押し上げるポイントです。

信金は、単に融資を行うだけではなく、近年は「伴走支援型の金融機関」へと変化しています。
その一環として、取引先の販路拡大を支援するためのフェアを積極的に開催しています。
この動きは全国的に広がっており、大阪だけでなく、各地域の信用金庫・信用組合も同様の取り組みを進めています。

■ 大手展示会とは異なる“温かさ”
東京ビッグサイトなどで行われる大規模展示会は、出展社数・来場者数ともに多く、
確かに一度に多くの企業に会えるメリットがあります。
しかし、商談の成立率や、その後の継続的な関係構築という点では、信金フェアのような地域密着型イベントの方が実は有利です。

参加者の多くは、互いの顔が見える関係を求めています。
担当者レベルだけでなく、経営者同士の名刺交換が自然に行われる。

そして、「まずは一度試してみましょう」という小さな取引から始まり、長く続く関係へと発展していく。
これは、地域金融機関だからこそ作れる信頼の場です。

また、信金フェアのもう一つの魅力は「事前の紹介」です。
信用金庫の担当者が間に入り、「この会社とは話してみてはどうですか」と橋渡しをしてくれることがあります。

そのため、単なる名刺交換に終わらず、双方が関心を持って話し合える状態で当日を迎えられます。
参加した企業の中には、商談後に継続的な共同開発へ発展した例も多く見られます。

■ 食品メーカーが参加するメリット
食品会社にとっても、このようなマッチングフェアは決して製造業だけの話ではありません。
たとえば、地元の物流会社、パッケージ会社、販促支援会社など、商品づくりの裏側を支える業種とつながるチャンスです。

また、地域の観光業やホテル、道の駅など、「地元消費と観光需要」を結ぶ相手先と出会える可能性もあります。

大切なのは、単なる販売先探しではなく、「協業できる相手を探す」という視点です。
製造×観光、食品×IT、農業×福祉──
分野をまたぐ連携から、新しい事業が生まれるのがこのフェアの魅力です。

■ 参加前にやっておきたい準備
マッチングフェアで成果を出すには、次の3つの準備が重要です。

  1. 目的を明確にする
    「売りたい」だけでなく、「誰と組みたいのか」を決めておきましょう。
    パートナー企業を探すのか、OEM先を探すのか、販売ルートを増やすのか。
    目的が明確だと、会話が具体的になります。
  2. 自社の“強みを30秒で言える”ようにする
    短い商談の中で印象を残すには、「どこが他社と違うか」を明確に伝えることが大切です。
    素材、製法、味、衛生管理、対応スピードなど、強みを具体的に言語化しておきましょう。
  3. 名刺とFCPシートを整理する
    名刺交換だけで終わらせず、簡易版のFCPシートやパンフレットを添えると印象が残ります。
    信金の担当者を通じて後日フォローされる可能性もあるため、資料の整理は丁寧に行いましょう。

■ フェアは「きっかけ」にすぎない
多くの社長が誤解しがちなのは、「出展したら取引が始まる」という考え方です。
フェアは、あくまできっかけの場。
そこからどれだけ“動けるか”がすべてです。

例えば、商談の数よりも「会いたい企業にどれだけ深く話せたか」を重視する。
1社との出会いが、次の販路を生むことがあります。
出展後のフォローが早い会社ほど、次のステージに進めます。

また、商談後に信金の担当者へ「この企業に興味があります」と伝えると、
後日あらためて面談を設定してもらえるケースもあります。
こうした“ひと手間”が、成約率を大きく変えるポイントです。

■ 最後に
信用金庫が主催するマッチングフェアは、地元の中小企業にとって“地域内での信頼を可視化できる場”です。
特に食品業界の社長にとっては、東京進出よりもまず「地元での連携」からスタートするのが王道。
地域に根ざした販路開拓こそ、安定した経営につながります。

展示会や商談会の規模に惑わされず、
自社にとって一番距離の近い場所で、次の一手を考える。
それが、これからの時代の販路開拓の在り方です。

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