どこでも売れる商品は、どこにも響かない
〜デパート向けと量販向けはまったく違う商品です〜
「この商品、いろんなところで売れると思うんです」
「どこでもいいから売ってほしい」
こんなふうに言われることが、多いんです。
でも、はっきり言います。
「どこでも売ってほしい」というのは、「どこにも売れない」ということです。
なぜなら、売り場によって、お客様の価値観も、買う理由も、求めているものも全然違うからです。
すべてに対応しようとした商品は、結果的に誰の心にも響かなくなります。
バイヤーも自分のお店にあった商品かどうか選定します。
デパートと量販店は、まったく別の世界です
たとえば、あなたが食品メーカーの社長だとして、
「この焼き菓子、デパートでもスーパーでも道の駅でも売れるんじゃないか」と考えていたとします。
でも、売り場ごとに見ているお客様の「気持ち」は、まったく異なります。
デパートのお客様は「気持ちに余裕」がある人たちです
特別感や高級感を求めている
自分へのごほうびや、誰かへの手みやげ
見た目・ブランドイメージを大切にする
値段よりも「納得感」や「意味」で買う
安心、安全、無添加、国産で買う
たとえば、税込800円のチョコレートが、「京都の抹茶を使った限定品」
「和紙風の高級パッケージ」となっていれば、ギフト用として十分に売れます。
量販店のお客様は「日常の買い物」に来ている人たちです
すぐに食べられる手軽さを求めている
値段が安くて買いやすいことが大前提
見た目より、実用性や“わかりやすさ”を重視
比較されるスピードが速く、判断は一瞬同じ焼き菓子でも、税込198円で小分けにされていて、
家族で分けられるパッケージなら手に取りやすくなります。
よくある間違い:「どこでも売れるようにしたい」
営業や商品開発の現場で、よくこんな相談を受けます。
「とにかく、どこでもいいから売ってもらえませんか?」
「この商品、どこでも通用すると思ってるんです」
その気持ちはわかります。
どこか1社でも採用してくれれば、という思いで言っているのかもしれません。
でも、そういう商品はたいてい売り場に合っていないことが多く、
結果として採用されにくくなってしまいます。
商品は「売る相手」が決まらないと売れない
商品開発でいちばん大事なのは、「誰に、どこで、どうやって売るか」を最初に決めることです。
「誰に食べてもらいたいか」、ペルソナです。
デパートで売るなら、高級感を強調する
スーパーで売るなら、手軽さと価格を重視する
道の駅で売るなら、地元感や親しみやすさを表に出す
これらは同じ商品では成立しません。
いろんな場所で売るなら、場所ごとに「別の商品」として売る覚悟が必要です。
「中途半端」は、一番避けるべき
“誰でもいい”“どこでもいい”という中途半端な商品は、売り場では埋もれます。
たとえば、
デパートのバイヤーから見れば「なんか安っぽい」
スーパーのバイヤーから見れば「なんか高そう、意味がわからない」
と、どちらにも採用されません。
高いのか安いのか、なんかよくわからない商品ほど、実は「売りにくい」のです。
現場では、「はっきりと振り切った商品」ほど、選ばれやすい傾向があります。
売れる商品は「誰かの顔が見える」
たとえば、
「40代女性が、自分へのごほうびで買う焼き菓子」
「60代の祖父母が、孫に出すために買うアイス」
「30代共働き夫婦が、冷凍庫にストックしておく惣菜」
このように、「誰に買ってもらうか」が明確な商品は、強いです。
ターゲットが明確だと、パッケージ、ネーミング、価格、販路、売り方、
すべてが自然に決まっていきます。
さっきもいったようにペルソナです。
商品を「削る」ことが売れる近道になる
売れない商品ほど、「あれもこれも」と機能を盛り込みすぎています。
幅広い年齢層に対応
ギフトにも普段使いにもOK
量も味も、バランス重視
作り手からすると「万能」に見えるかもしれませんが、
買い手からすると「特徴がない、選ぶ理由がない商品」に見えてしまうのです。
だからこそ、あえて“ターゲット以外を切り捨てる”覚悟が必要です。
現場を見ずに、商品はつくれない
販路支援をしていると、「商品はできたので販路を紹介してほしい」という相談が多くあります。
でも、その商品の“売れる根拠”が曖昧なこともよくあります。
実際に、どの棚に置かれる想定か、競合と比べてどこが違うか
お客様が手に取る瞬間はどんな状況か
このあたりを見ていないと、「売れる設計」にはなりません。
まとめ:売り場は「ひとつひとつ、戦場が違う」と心得る
最後にもう一度、はっきりお伝えします。
「どこでもいいから売ってほしい」という発想では、どこにも売れません。
売る相手を決める。
売る場所を絞る。
そして、その人にとってベストな形に商品を作り上げる。
これが、販路開拓の一番の近道です。
● 顧問契約をご検討中の企業さまへ
貴社の商品に合った販路開拓戦略をご提案し、営業の動き方までサポートします。
● セミナーを企画中の支援機関・団体さまへ
展示会営業や販路づくりをテーマに、全国各地で講演実績があります。
● メディア・取材ご担当者さまへ
中小企業の営業現場を事例とともに紹介できます。ご相談はお気軽に。
