静岡県にある創業100年を超える水産加工会社の事例をお話をします。
100年企業という重みのある看板を背負い今日も地元の魚と向き合い続けています。
2代目社長に就任したのは創業者の息子
代替わりからまだ数年で40代前半の比較的若い経営者です。
代々続く家業に戻り覚悟をもってバトンを受け取りました。
しかし 最初に直面したのは数字の壁ではなく見られている壁だった
従業員の多くは創業者時代からのベテラン揃い
多くの従業員は社長よりも年上です。
社長がどう動くか見ているだけですよ
そんな言葉が現場から聞こえてくる。
表立って反発はしない けれど空気で伝わる。
「おまえに何ができる」
「親父のまねごとか」
創業者の絶対的な存在感と従業員との長年の信頼関係
その中に後継者として一人で踏み込むのは想像以上に孤独だ
よくある後継者の姿です。
会社を支えてきたのは従業員
だがこれから変えていくのもまた従業員と一緒に進めていきます。
そんな中で 2代目社長が本気で向き合っているのが信頼の再構築です。
自分がこの会社をどう導いていくのか
それを言葉で語る前に行動で見せようと決めました。
老舗企業が直面する経営課題と温暖化の影響
全国の水産業を取り巻く環境も年々厳しさを増している
特に深刻なのが温暖化による漁獲量の不安定なんです。
とにかく獲れない、売るものがない。
魚の回遊ルートが変わり?例年どおりの仕入れができません。
原料が安定しなければ製品価格も収支も見通しが立たない
長年培ってきた加工技術があっても原料がなければ工場は稼働しません。
従業員の仕事もありません。
さらに 流通や販売の現場も大きく変化している
量販店との取引単価は厳しく原価の上昇は簡単に転嫁できない。
ネット販売やふるさと納税など新たな販路への対応も求められます。
昔はこうだった
その言葉が通じない時代に老舗企業がどう生き残るか
2代目社長にとってこれは挑戦ではなく、やるしか道がありません。
従業員との関係性は改革ではなく積み重ね
従業員にとって創業者が親分、親のような存在だった
仕事を教わったのも叱られたのも励まされたのも全部社長です。
その存在がいなくなり今度は息子が社長になる。
親父のやり方とは違う
そんなことは最初からわかっている
けれど従業員の目に映るのは若い2代目が何をするかだけだ
厳しく反論する古株のパート。
そんな中で2代目社長は口ではなく足で信頼を積み上げるしかありません。
水揚げに立ち会い加工現場に入り出荷前の商品チェックにも顔を出す
ときには出張販売にも自ら出向く
従業員よりも先に出社し全員が帰るまで社内にいる
何も強制はしないただ自分が一番動く
2代目社長がようやく気づいたことがある
それは従業員は口ではなく背中を見ているということです。
ある日社員食堂で年配の従業員がふと漏らした
「社長はようやくこっち側に来たね、待ってたよ」
最初のころは会議で意見を出しても誰も反応してくれなかった
商品開発の提案をしてもそれ前もやったよと言われて終わった
自分のアイデアがことごとく否定されたように感じた時期もあった
でもそれは拒絶ではなかった
ただ従業員たちは見ていたんです。
この人はどこまで本気か
どこまで付き合える人間かを 静かに測っていた
100年企業には歴史と共に文化がある
それを無視して改革だけを急げば組織は崩れる
逆に文化を理解しそこに自分の熱を重ねていけば
少しずつ輪の中に引き込まれていく
先代のようにはできない
けれど先代とは違うやり方で同じ想いをつなげばいい
最近では若手社員との対話も増えた
昔ながらのやり方だけでは通じない相手に自分の経験や苦労を語れるようになった
実は自分も最初は怖かった
現場に入るのが正直不安だった
そんな本音を出すことで社員の目が少しずつ変わってきた
変えるのではなく次の100年のために動くという視点
老舗企業の経営者として難しいのは 過去を否定せずに未来をつくること
創業100年は 社員の努力と地域の支えによって築かれた歴史
それは誇りであり守るべき資産
しかし 同じやり方では 次の10年は乗り越えられない
2代目社長が掲げているのは変える ではなくつなぐという言葉だ
先代からの信頼や従業員からの期待、 地域からの感謝
すべてをつなげて次の100年を託せる会社へ
そのためにいま見られている自分が どう動くかにかかっています
見られていることを恐れず見せていく
2代目社長が陥りがちな最大の罠は
結果を急ぐことかもしれない
従業員の信頼は肩書きでは得られない
数字ももちろん大事だが
老舗企業においては人の気持ちが会社を動かす
いまその社長は誰よりも先に現場に立ち 誰よりも多く話を聞き
そして誰よりも静かに前に進んでいる
見られていることを恐れず見せていく
その姿勢こそが 老舗企業の未来をつくる第一歩なのかもしれない
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