はじめに
中小食品会社が売上を増やすためには、まず現状を正確に把握することが重要です。
商品には自信がある、味には定評がある、リピートもある――それでも売上が伸びない。
その原因は、商品の魅力や品質の問題ではなく、売り方にあることが多いのです。
1. 誰に売るのかを明確にする
まずはターゲットを明確にすることから始めましょう。
食品業界では、誰にでも受ける商品という発想は危険です。
たとえば、都市部の共働き世帯と、地方の高齢世帯とでは、求める食品の量も質も異なります。
顧客像を具体的に描くことで、商品開発や販促の方向性も定まってきます。
2. 売れている商品の“背景”を分析する
既に売れている商品があるなら、その理由を徹底的に分析してください。
なぜその商品が選ばれたのか、どこで、どんな人が、どんな理由で買っているのか。
これはデータだけでなく、実際の店舗や顧客の声を通じて得られることが多いです。
売れている理由を再現することが、次の展開につながります。
3. 営業力ではなく販路設計がカギ
売上アップというと、営業マンを増やすとか飛び込み営業を強化するといった発想になりがちですが、
それよりも重要なのは売れる仕組みをどう構築するかです。
たとえば、商品の使い方を紹介したリーフレットを作る、
試食の機会を設ける、SNSでの情報発信を行うなど、
販路に合わせて売れる導線を設計していくことが効果的です。
4. バイヤーとの接点をどうつくるか
中小食品会社にとって、バイヤーとの接点をどうつくるかは大きな課題です。
しかし、何も最初から大手スーパーを狙う必要はありません。
地域の食品セレクトショップ、道の駅、ネット通販、小規模量販店など、
身近な販路から実績を積み上げていくことで、信頼と評価を得ることができます。
5. 地域性を活かした戦略の重要性
食品は土地の文化や気候、生活習慣と密接に関係しています。
そのため、自社がある地域の特性を強みに変えることができます。
たとえば、地域の農産物を使った商品開発や、地元の料理に基づいた惣菜シリーズなどは、
ストーリー性があり、PRにも活用しやすいです。
地元メディアへのアプローチやふるさと納税との連携も、売上拡大につながる有効な手段です。
6. SNSと連携した販促のすすめ
販路を広げる上で、SNSの活用は避けて通れません。
InstagramやXなどを使って、調理例やお客様の声を発信することで、
ブランドの認知度を高め、バイヤーや一般顧客の関心を引くことができます。
特に中小企業にとっては、広告費をかけずに情報を広められる貴重な手段です。
日常的な投稿の積み重ねが、信頼につながります。
7. 商談の前に準備すべき3つのこと
販路開拓のカギは、バイヤーとの初回商談にあります。
その際、以下の3点は必ず準備しておきたい要素です。
1つ目は、自社商品の売れる理由を端的に説明できる資料。
2つ目は、実際に売れた実績とエビデンス。
3つ目は、取引条件や納期、ロットに関する明確な提示です。
これらが揃っていないと、どんなに商品が魅力的でも、信頼を得ることは難しいでしょう。
8. 継続的な改善が信頼を生む
一度バイヤーとの取引が始まっても、それで終わりではありません。
むしろ、そこからが本当のスタートです。
定期的に納品後のフィードバックを取り、改善提案を行うことで、信頼関係は深まります。
リードタイムの短縮や包装の工夫、店頭での販促支援など、
相手の立場で考える姿勢が継続的な受注につながります。
取引先から「またこの会社と組みたい」と思ってもらえる関係を築くことが、
結果として売上の安定と拡大を支えます。
- 売れ続ける仕組みをどう作るか
売上を一時的に伸ばすことは、それほど難しくありません。
問題は、それをどう継続的な成果につなげるかです。
ここで重要になるのが「定期的な接点」と「顧客の習慣化」です。
たとえば、BtoBであれば納品後のフォローアップを定期的に行い、
小売であれば季節のおすすめ商品を継続的に案内するなど、
相手に自社の存在を忘れさせない工夫が欠かせません。
また、売上の柱をひとつに依存しすぎないことも大切です。
特定の取引先に頼り切ると、関係が崩れた際のリスクが大きくなります。
業態の異なる取引先を複数持つことや、
ECなど新たなチャネルを並行して育てておくことで、
不測の事態にも強い経営体質を築くことができます。
さらに、社内で売れる仕組みを再現できるようにするためには、
成功した取引の経緯や提案内容、相手の反応などをナレッジとして残し、
次の営業や商品展開に活かす体制づくりも重要です。
これは社長一人で営業している企業ほど見落とされがちですが、
組織としての成長には欠かせないステップです。
おわりに
売上を増やすためには、商品そのものを磨くだけでなく、
その商品を誰に、どうやって届けるかを設計することが欠かせません。
焦らず、しかし確実に、一歩ずつ着実に前進していきましょう。
中小食品会社の強みは、機動力と柔軟性です。
それを活かせば、今の時代でもしっかりと戦っていけます。
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