食品会社の販路開拓に欠かせない営業資料があります。
それがFCPシートです。
FCPシートとは「フード・コミュニケーション・プロジェクト」の略。
農林水産省が推奨する商談用フォーマットで、全国のバイヤーが共通して使えるように整備されたものです。
商品の特徴、価格、流通情報、ターゲット層などを一枚に整理することで、短時間で商品の価値を伝えることができます。
このFCPシート、作成を求められて形だけ提出している会社が多いのが現実です。
「書いて出せばいい」と思っていませんか?
本当のFCPシートは、“提出する書類”ではなく、“売上を作る営業ツール”です。
● FCPシートは営業戦略の中心になる
バイヤーは、商談会で1日に何十社と話をします。
限られた時間の中で「ひと目で価値が伝わる商品」しか記憶に残りません。
だからこそ、FCPシートの完成度が商談の結果を左右します。
整理された資料は、会社の信頼そのものです。
展示会・商談会・営業訪問。どんな場面でも活用できる。
つまりFCPシートは、営業現場を動かす「戦略の軸」です。
● 簡素な内容ではチャンスを逃す
たとえば、ある加工食品メーカーが新商品を商談会に出展しました。
ところが提出したFCPシートには、商品名と価格、原材料だけ。
特徴も背景もない。
結果、試食の評価は良かったのに採用されませんでした。
バイヤーは会場で聞いた説明をすべて覚えているわけではありません。
商談後に手元に残るのはFCPシートです。
その一枚で「どんな商品か」「どんな想いがあるのか」が伝わらなければ、忘れられてしまいます。
口頭よりも紙。
紙よりも構成力。
この積み重ねが信頼になります。
● FCPシートに書くべき5つの要素
- 開発背景
なぜこの商品を作ったのか。地域資源や時代の流れ、ターゲット層を具体的に書くと説得力が増します。 - 商品名と特徴
味、食感、製法、競合との違いを簡潔に。数値があれば信頼性が上がります。 - 利用提案
家庭用・ギフト・業務用など、具体的な使い方の提案を書きましょう。提案が販路を広げます。 - 製造体制と品質管理
どんな環境で作っているのか、どんな管理をしているのか。安全・安心を可視化します。 - 実績または期待
「〇〇地域で採用実績あり」や「新しい需要を狙う商品です」といった情報は、判断材料になります。
この5項目を整理することで、社内でも商品理解が深まり、営業の質が上がります。
● FCPシートは「営業の型」を作る
営業が属人的になっている会社ほど、資料の整備が遅れています。
営業マンの経験に頼る営業から、誰でも同じ説明ができる仕組みへ。
FCPシートがその役割を果たします。
若手社員でも、シートを見ながら話せば商談が成立する。
経営者が不在でも、統一された営業資料が会社を動かす。
これこそ中小企業が強くなる仕組みづくりです。
● FCPシートは地域発信のツールでもある
FCPは単なる商談資料ではありません。
地元の素材や伝統を全国に伝える「地域ブランドの名刺」です。
地元の農産物を使った商品、昔ながらの製法を受け継ぐ加工品。
FCPを通じて地域の価値を可視化すれば、販路だけでなく地域そのものが元気になります。
地域資源の見える化こそ、地方食品会社の使命です。
● 作ったまま放置していませんか?
FCPシートは一度作ったら終わりではありません。
商品のリニューアル、価格改定、販促キャンペーン。
情報は常に変わります。
それに合わせて更新することが重要です。
たとえば、アレルゲン表示を明確にした、新しい販路が増えた、商品写真を差し替えた。
その都度修正することで、バイヤーの印象は大きく変わります。
“作って終わり”ではなく、“営業のたびに磨く”のが理想です。
● 行政・支援機関でもFCPが評価される時代
近年、商工会議所や自治体の補助金・専門家派遣制度でも、FCP整備が評価項目に含まれるようになっています。
「自社の強みを整理できているか」「マーケティング視点を持っているか」が問われているのです。
FCPシートを整えておくことは、単なる営業準備ではなく、支援制度を活用する“信用づくり”でもあります。
● まとめ:FCPを見直すことが未来を変える
販路が広がらない理由の多くは、伝えるべきことを伝えきれていないからです。
FCPシートを整えることは、商品の価値を整理し、自社の営業力を磨くことにつながります。
「うちは小さいから」と言う前に、FCPを整える。
それだけで、商談の手応えが変わります。
中小食品会社だからこそ、伝える力を強みに変えられます。
FCPシートを通して、取引先に“伝わる営業”を始めましょう。
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