地方の食品会社が販路開拓に成功するための具体的な方法【販路開拓支援の経験から解説】


素晴らしい商品を作っているのに、なぜか思うように販路が広がらないとお悩みではないでしょうか。
一生懸命営業しても商談がまとまらなかったり、大きな展示会に出展してもその後に繋がらなかったり…
そのようなご経験はございませんか?

実は、販路拡大がうまくいくかどうかは、商品の品質が良いか悪いかだけで決まるものではありません。
営業の方法や、バイヤーさんとの接し方、そしてご提案の内容がどれだけ具体的であるかによって、結果が大きく変わってきます。
私自身、数多くの食品会社の販路開拓を支援してまいりました。その経験から、地方の中小食品会社が成果を出すために、
ぜひ押さえておいていただきたい具体的な方法を整理してお伝えします。

食品会社が販路開拓でつまずいてしまう3つの理由

多くの食品会社が販路開拓で思うように進まないのには、共通の理由が存在します。
まずは、社長の営業スタイルに当てはまるものがないか、ご確認いただけますでしょうか。

1. バイヤーさんの視点が欠けている営業

商品の原材料や製造工程、あるいはこだわりの製法について、情熱的に語る社長は多くいらっしゃいます。
もちろん、それは商品の大切な魅力の一部ですが、それだけでバイヤーさんの心が動くことはあまりありません。
バイヤーさんが本当に知りたいのは、その商品がお店の売場でどのように展開され、どのようなお客様に、
どのくらいの価格で販売できるのか、といった現実的な視点なのです。

バイヤーさんは棚の限られたスペースで「売れる商品」を常に探していらっしゃいます。
「この商品が私たちのお店に並んだら、どんなお客様が、どのくらい、いくらで買ってくれるだろう?」という問いに、
きちんと答えられるような準備が非常に重要です。消費者の購買行動や店舗の利益構造に結びつかない説明は、
どれほど熱意があったとしても、実際の契約には至りにくいものです。

2. 価格提示があいまいなまま商談を進めてしまう

商談の場で「概算です」「後日改めて見積もりをお送りします」といったお話だけで持ち帰ってしまうケースが
非常に多く見受けられます。お忙しいバイヤーさんに、再度お時間をいただいて商談できる保証はどこにもありません。
バイヤーさんは、その場で即座に粗利計算ができるような情報を求めていらっしゃいます。

仕切価格、小売価格、掛率、そして納品条件については、商談の場で即答できるよう、事前にしっかりと準備しておくことが基本です。
価格の提示が明確であれば、その場で検討の対象に入れていただくことができます。逆に、条件が見えない商品は、
どうしても後回しにされてしまう傾向があります。

3. 「お願いするだけ」の営業になってしまう

「まずは試しに置いてもらえませんか」といった、お願いベースのご提案だけでは、バイヤーさんが負うリスクを
減らすことができません。売場のご担当者様は、限られたスペースを管理し、売上に対する責任を負っていらっしゃいます。

そこに新しい商品を導入していただくためには、「この商品は売れる」という具体的な理由や、販売促進のための計画をきちんと示し、
バイヤーさんが安心して決定できるような環境を整える必要があります。例えば、試食販売のご提案、SNSでの告知プラン、
販売促進用のPOPのご準備など、メーカー様ご自身が「商品を売るための努力」を見せることが求められます。

成功している食品会社が実践する3つのステップ

では、実際に販路開拓で成果を出している食品会社は、どのようなステップを踏んでいるのでしょうか。

1. ターゲットを明確に絞り込む

「誰に商品を売るのか」というターゲットが明確でないまま動いてしまうと、ご提案の内容も漠然としたものになり、
どの商談も相手に響かない結果になってしまいます。

例えば、高級スーパーであれば富裕層のお客様に向けた少量高単価の商品、道の駅であれば観光客向けの地元感を重視した商品、
ECサイト(通販)であれば冷凍、常温保存が可能で日持ちがし、ギフト対応もできる商品など、販売チャネルごとに商品の見せ方や
ご提案内容を変える必要があります。ご自身の商品の強みを活かして、誰に、どこで、どのように販売していくのかを、
具体的に絞り込みましょう。

2. 商談資料を徹底的に作り込む

バイヤーさんが求める情報は、実はとてもシンプルに集約されます。最低限、以下の3点は必ずご用意ください。
これらをFCPシートもしくはA4用紙1枚程度にまとめて、バイヤーさんがその場で素早く判断できるような情報を提示することが理想的です。

  • 商品スペックシート: 商品の規格や原材料、賞味期限、保存方法などを明確に記載します。
  • 利益シミュレーション: 仕切価格、小売価格、そして粗利率を提示し、バイヤーさんが利益を計算できる状態にしましょう。
  • 販促提案: POPのデザイン例やSNSでの拡散案、試食イベントの計画など、販売を強力に後押しする具体的なアイデアを添えます。

3. 小規模なテスト販売で実績を作る

商品をいきなり全店舗で展開しようとするのではなく、まずは1店舗限定でのテスト販売をご提案するのが現実的なアプローチです。
たとえ小規模であっても、そこで販売実績が出れば、バイヤーさんは安心して社内で拡大のご提案がしやすくなります。

テスト導入によって「売れる商品である」という実績が証明されれば、他の店舗への水平展開も自然に進むようになります。
この小さな成功体験こそが、次の大きな扉を開く鍵となるのです。

【事例】地方の味噌メーカーが百貨店採用に至るまで

実際に私が販路開拓を支援させていただいた、ある地方の味噌メーカーの例をご紹介しましょう。

このメーカーは、当初は道の駅が主な販路で、それ以上の広がりが見えず伸び悩んでいらっしゃいました。
そこで社長が最初に取り組んだのは、まさに「ターゲットの絞り込み」でした。高級スーパーの顧客層を徹底的に研究し、
これまでの商品とは異なる、少量で高単価の化粧箱入りギフト商品を開発されたのです。

さらに、単に商品を作るだけでなく、販売促進策としてSNSでの情報発信や試食イベントの企画までを具体的に提案書に
盛り込みました。お店の売場での具体的な展開イメージや、お客様へのアピール方法までを資料に落とし込むことで、
バイヤーさんが「この商品はきっと売れる」と確信できる状態を作り上げました。

その結果、テスト販売開始からわずか3か月で確かな売上実績を作り、翌年には大手百貨店のギフトカタログにも掲載されるまでに
至りました。社長は「商品自体を大きく変えたわけではなく、ご提案の仕方を変えただけで販路が開けた」と、
当時を振り返っていらっしゃいます。

行動のポイント:販路開拓を成功させるために

販路開拓は、一度成果が出ると、その後の商談でも「実績があるメーカー」として信用が高まり、まるで雪だるま式に
道が広がっていくものです。大切なのは、バイヤーさんの視点に立って「売れる理由」を明確にし、ご提案に具体的な内容を
持たせることです。

加えて、展示会や商工会のイベントを積極的に活用することも非常に有効です。実際にバイヤーさんと対面でお話しできる場では、
準備した資料を見せながら、自社商品の特徴と売場での展開イメージを簡潔に伝えられるよう準備しておくことが求められます。
短時間で要点を伝えられれば、その場で次の商談につながる確率がぐっと高まります。

まずはターゲットを明確に定め、1枚の資料に「売れる根拠」を詰め込むこと。そして、小さなテスト販売で着実に実績を積み重ね、
販路を一歩ずつ広げていくこと。それが地方食品会社にとって、最も現実的で確実な販路開拓の第一歩になります。
ご自身の素晴らしい商品に自信があるなら、あとは「売れる提案」に変えるだけで、きっと新しい道は開けます。


●顧問契約・セミナー・取材のご相談
食品会社の販路開拓支援、講演・研修のご依頼、マスコミ取材のご相談
👉 [ご相談・お問い合わせフォーム]
●食品会社の社長向けPDF教材の販売
販路開拓成功シリーズを販売中。オンライン無料相談30分付き。
👉 [教材
購入はこちら(STORES)]