限られた時間の中で、一つひとつの商談を成功させたいというお気持ち、とてもよくわかります。
商談は、御社と商品をより多くの人に知ってもらうための大切な機会です。
もしその商談が「相手が本気で買うつもがない」ケースだとしたら、そこに時間を費やすのは非常にもったいないこと。
私は食品会社の販路開拓支援を続けてきましたが、初回訪問で「これは脈がないな」と感じる瞬間は何度もありました。
今回は、限られた時間と労力を無駄にしないために、初回商談で相手の本気度を見抜くための質問と、
その判断基準について、やさしく解説します。この記事を読んで、商談の効率を上げ、より有望な取引先との関係構築に集中できるようになっていただけたら、とてもうれしいです。
なぜ本気度の見極めが大切なのか
販路開拓において、商談は事業を成長させるための重要な機会です。もし相手が商品の購入に真剣でなかったり、
情報収集のためだけに時間を割いているようであれば、その商談に長く使うのは大きな損失。特に中小の食品会社では営業マンが少なく、社長自ら営業に出ることも多いので、効率的な時間の使い方はとても重要です。
よくある失敗例としては、バイヤーが「とりあえず資料だけください」とだけ言って、その後まったく音沙汰がなくなったり、商品説明を丁寧に行ったのに、価格や納期に関する質問が一切出なかったりするケースがあります。
また、食品会社にとって大切な試食やサンプルを求められない場合も、残念ながら本気度が低い可能性が高いです。これらの商談に費やす時間を、もっと見込みのある商談の準備や、商品そのものの改善、またはECサイトの強化といった、より生産的な活動に回すことができれば、会社の成長スピードは大きく変わってきます。
初回訪問で本気度を見抜く質問例
初回商談は、いきなり売り込みを始めるのではなく、まず相手のニーズや温度感を確かめるための質問から入るのが大切です。実際に食品業界で支援している中で効果があった質問をいくつかご紹介します。
質問1:「この商品に興味を持っていただいたきっかけは何ですか?」
この質問は、相手が事前にどれくらい情報収集をしているかを探るためのものです。本気度が高いバイヤーは、あなたの会社のホームページやSNS、展示会での情報などを事前にチェックしており、「御社の○○という商品が、当社のターゲット層に合いそうだと感じました」のように具体的な理由を話してくれます。逆に、「たまたまウェブサイトで見かけたから」といったあいまいな答えの場合は、まだ深く検討する段階にない可能性が高いでしょう。
質問2:「もしお取り扱いいただく場合、販売開始はいつ頃をお考えですか?」
この質問は、相手が実際に商品を導入するイメージを持っているかを確認するものです。もし本気度が高ければ、具体的な販売計画や社内のスケジュールを考慮して、「来期から導入したい」「〇月ごろから販売を開始する予定です」などと答えてくれることが多いです。反対に、「あればいつでもいいです」といった答えは、その商品に対する優先度がまだ低いというサインかもしれません。
質問3:「御社の顧客層や販売チャネルに合うと思われますか?」
この質問は、御社の商材が相手のビジネス戦略にぴったり合うかどうかを判断するのに役立ちます。この質問をすることで、「実は年配の顧客向けの商品を増やしたいと考えている」とか、「健康志向の商品を探していたんです」といった、相手の具体的なニーズを聞き出すことができます。もし相手がこの質問に対して言葉を濁したり、顧客層の話を避けるようであれば、まだ十分に検討していないのかもしれません。
質問4:「ご試食や社内での検討用サンプルは必要ですか?」
食品業界において、商品の味や品質を直接試すことは、契約へと進むための最初のステップです。この質問をすることで、相手が購入を真剣に考えているかどうかを直接的に知ることができます。本気度の高いバイヤーであれば、ほとんどの場合、すぐにでもサンプルを希望します。もしこれを求められない場合は、成約に結びつく可能性は残念ながら低いと考えるのが現実的です。
本気度が高い相手の特徴
長年の経験から、次のような行動が見られる相手は、商談に対してとても真剣だと判断できます。あなたの会社のホームページや商品カタログを事前にチェックしている、資料を印刷して持参している、価格や納期、ロット数など具体的な質問が多い、競合商品との違いについて尋ねてくる、社内の決裁者や担当者が同席している。これらのポイントを商談中にメモしておくと、後から相手の本気度を判断する際にとても役立ちます。
本気度が低い場合の対応策
商談相手の本気度が低いと感じたとしても、その場で関係を完全に切ってしまう必要はありません。むしろ、今すぐの購入にはつながらなくても、「将来の顧客」として関係を育てていくためのきっかけと捉えることが大切です。
たとえば、次のようなフォローをすることで、将来的なチャンスにつなげることができます。季節ごとの新商品情報をメールで定期的に送る、展示会や試食会を案内する、成功事例や導入事例を共有する。
食品業界では、信頼関係を築き、継続的に情報を届けることが、突然の成約につながることが少なくありません。今すぐでなくても、半年後に急に動き出すケースも珍しいことではないのです。
商談を無駄にしないための心得
初回訪問の商談では、まずは商品を売り込むことよりも相手の本気度を「見極める」ことに時間を使うことが重要です。そのためにも、本気度を探るための質問を必ず3つ以上は用意しておきましょう。そして、見込みが薄いと判断した相手には過剰に時間や労力を費やさず、将来の顧客になるための「種まき」に切り替えるフォローの仕組みを日頃から持っておくことが大切です。
まとめ
食品会社の販路開拓は、まさに時間と人手という限られた資源で成果を出すための戦いです。初回訪問で相手の本気度をしっかりと見抜くことができれば、無駄な商談を減らすことができ、本当に有望な顧客との関係づくりに集中できるようになります。本日ご紹介した質問例を、ぜひ次回の商談で試してみてください。
「この会社は本気だ」と感じた相手には、全力で提案を。そうでない場合は、関係を維持しながら将来のための種まきに切り替えましょう。販路開拓は「効率」と「関係構築」のバランスがとても大切です。上手に商談相手を見極めて、ビジネスチャンスを逃さない営業活動を目指していきましょう。
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