社長のプレゼンは、なぜ失敗するのか?
せっかく時間をかけて作った資料も、熱意のこもった説明も、食品会社の販路開拓につながらないと感じているなら、
原因は一つです。
それは、プレゼンを「パワーポイント発表大会兼商品の説明会」だと勘違いしているからです。
この間違いを正さなければ、どれだけ商談を重ねても、売上アップは望めません。
これからお伝えする3つの原則を理解し、実践することで、あなたのプレゼンは劇的に変わります。
1.プレゼンは売り込みではない。商談の目的は信頼獲得だ
多くの社長は、プレゼンを自社の商品を売り込む時間だと考えます。その考えは今すぐ捨ててください。食品業界の販路開拓で成功を収める唯一の方法は、相手との信頼関係を築くことです。
信頼がなければ、あなたの話はどれもただの宣伝にすぎません。バイヤーは、安心できない会社の商品を店頭に並べることはないのです。
では、どうすれば信頼を獲得できるのか?それは、徹底的な事前準備から始まります。
- 相手のビジネスを徹底的に研究する 商談先のホームページ、商品、ニュースリリース、すべてを分析してください。相手の事業の現状、抱える課題、そして市場における立ち位置を理解することが、信頼の第一歩です。
【具体例】- 取引先の商品棚をチェック: 実際にスーパーや百貨店に足を運び、相手が現在どんな商品を扱っているかを確認してください。競合商品や価格帯、陳列方法を観察することで、自社商品の強みをどう活かせるかが見えてきます。
- プレスリリースから未来を予測: 相手の最新のプレスリリースやIR情報から、今後の事業戦略や注力している分野を把握しましょう。「海外展開を強化している」とあれば、それに合わせた提案ができます。
- SNSをリサーチ: 商談相手のSNSをチェックし、その人の興味関心や人柄を事前に知ることで、アイスブレイクや共感を得るためのヒントが得られます。実店舗を視察に行くのが最大の武器ですよ。
- 質問で対話を支配する 一方的に話すのではなく、質問で対話の流れをコントロールしましょう。質問は、あなたが相手に真剣に向き合っている姿勢を証明する最高の武器です。
【実践的な質問例】- 「御社が今、最も力を入れている商品は何ですか?その商品にかける想いをぜひお聞かせください。」 → 相手の情熱を引き出し、共感を築くための質問です。
- 「現在、サプライヤーに最も期待することは何ですか?コスト、品質、それとも新しい提案でしょうか?」 → 相手の潜在的な課題を掘り起こし、自社が提供できる価値を明確にするための質問です。
2.プレゼンは資料でなく、あなたが「誰であるか」が重要だ
どんなに完璧なパワーポイント資料も、社長の熱意がなければ、ただの紙切れです。食品会社のプレゼンは、社長がどんな人間かを伝える場です。文字だけのパワーポイントでも内容がすばらしく、バイヤーが絶賛した場面を何回も見てきました。
社長の個人的なストーリーを語ってください。創業の苦労、商品開発のきっかけ、食を通じて社会に貢献したいという想い。こうした個人的なエピソードこそが、食品会社の営業において、相手の心を動かす鍵となります。
「なぜこの商品を作ったのか?」
この問いに、社長の言葉で、情熱をもって答えてください。社長の正直な想いは、相手に強い印象を与え、深い信頼を築きます。
【心に響くストーリーの構成例】
- 原点: なぜ食品業界を選び、なぜこの商品を開発しようと思ったのか?その背景にある個人的な体験や強い想いを語ります。
- 苦労と挫折: 開発過程での失敗談や、諦めかけた瞬間のエピソードを正直に話しましょう。人間らしい弱さを見せることで、共感が生まれます。
- 突破口と成功: 失敗を乗り越え、どうやって成功にたどり着いたのか?そのエピソードから、商品の独自性や革新性を伝えます。
- 未来のビジョン: 最後に、この商品を通じてどんな未来を創りたいのか?相手のビジネスや、社会にどう貢献したいのかを力強く語りましょう。
3.顧客のメリットを数字と未来で語る
「この商品は美味しいです」 「品質には自信があります」
これは、ただの特徴の説明です。売上を上げるプレゼンでは、顧客が受け取るメリットを、具体的かつ説得力をもって提示しなければなりません。
- メリットを数字で証明する 数字は、最も強力な説得材料です。相手のビジネスにどう貢献できるかを明確に示してください。 【計算例】
- 粗利の向上: 「当社の卸売価格は100円ですが、平均的な小売価格は200円です。貴社では100円の粗利を確保できます。」
- コスト削減: 「調理時間が5分短縮できるため、パートさん一人当たり1時間で12個多く製造できます。これは、時給1,000円の場合、年間で約20万円のコスト削減につながります。」
- 売上機会の創出: 「当社の新商品は、貴社の既存顧客のうち、これまでは獲得できなかった若い世代の顧客層を、新たに20%増やす見込みです。」
- 未来のビジョンを描く 単なる商品の売買ではなく、共に成長していく未来を語ることで、相手は長期的なパートナーとしてあなたを評価します。
【ビジョンの語り方】 「私たちは、この商品を通じて、御社と食品業界に新たな価値を生み出したいと考えています。やがて、御社のお客様からこの商品がなければ困ると言われるような、なくてはならない存在になるでしょう。」
(すこし固すぎますね)
4.プレゼンは「商談」の入り口にすぎない
プレゼンが成功したからといって、商談が終わったわけではありません。本当の勝負は、商談後に始まります。
商談後、迅速なフォローアップを徹底してください。感謝のメールを送り、商談内容の要点を簡潔にまとめ、次のアクションプランを明確に提示しましょう。このスピード感が、あなたのプロフェッショナルさを示します。
さらに、継続的な情報提供を心がけてください。 「今、市場ではこんなトレンドがあります」 「当社の新商品に、〇〇という機能が追加されました」 そういったギブの精神を持つことで、あなたは相手にとって、ただのサプライヤーではなく、信頼できる情報源となります。これが、販路開拓を成功させる最大の秘訣です。
プレゼンは「信頼」を売る場だ
プレゼンは、技術や資料の優劣で決まるものではありません。
- 売り込みをやめ、信頼を構築すること
- 商品の話より、あなたのストーリーを語ること
- 漠然とした特徴ではなく、数字でメリットを証明すること
これらの原則を貫けば、あなたのプレゼンは必ず成功します。そして、その成功が、御社の販路開拓を加速させ、揺るぎない売上アップへとつながるでしょう。
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