催事出店の本当の価値は「売上」ではなく「認知度アップ」と「固定客づくり」


1. 社長がつい勘違いする催事の目的

「催事に出てみたけど、思ったほど売上が出なかった」――食品会社の社長から、よくこんなお話を伺います。
百貨店やスーパーの催事は、人が多く集まるので「ここで売上を稼ごう」と思いがちです。
ところが、売上だけを目的にしてしまうとがっかりしてしまうことが多いのです。

実は催事は「売上をつくる場所」ではなく、「まだ自社を知らないお客さんに出会って、覚えてもらう場所」。
ここでの認知活動が、のちの固定客づくりにじわじわ効いてきます。

2. 売上を追いかけすぎると失敗する理由

催事は短期間で多くの人に商品を見てもらえる場ですが、「今日いくら売るか」ばかりに気を取られると次のようなことが起きます。

値引きや試食に頼りすぎて、その日だけの“つい買い”で終わる。
在庫をたくさん持ち込みすぎてロスが残る。
終わった後に何も残らず「疲れただけ」で終わる。

これでは、せっかくの機会が水の泡。社長もスタッフも「二度と出たくない」と感じてしまいます。

3. 催事は「認知度を広げる広告の場」

考え方を変えてみましょう。催事は売上を競う場ではなく「広告の場」。百貨店やスーパーの集客力を借りて、
自分の商品をまだ知らない人に体験してもらうことが最大の価値です。

商品へのこだわりを直接伝える。
作り手や社長の顔を覚えてもらう。
会社名やブランド名を印象づける。

「お、この会社いいな」と思ってもらうだけで十分な成果。目に見える売上以上に、大きな資産になります。

4. 固定客を増やす仕組みをセットにする

認知してもらった後は「次につなげる仕組み」を必ず用意しましょう。ここを準備できているかどうかで、
催事の価値が何倍も変わります。

例えば、SNSやLINEの登録をその場でお願いする(QRコードをPOPに貼る)。
ネット通販や定期便に誘導する(「催事限定クーポン」を渡す)。
お礼メールやお手紙でフォローする(顔を思い出してもらえる)。

このひと手間で、ただの「一度きりのお客さん」が「繰り返し買ってくれるファン」へと変わっていきます。

5. 成功している社長はここが違う

うまく催事を活用している食品会社の社長は、最初から「広告費」と割り切って出店しています。
その場で赤字になっても「後から戻ってくる」と知っているのです。

また、多くの社長が自分で現場に立ち、お客様の声を直接聞いています。「こんな味が欲しい」「パッケージが見づらい」など、
生の声は開発にも営業にも役立ちます。

さらに、名簿づくりに本気。10回の催事で1000人の連絡先を集められたら、それだけで大きな資産です。

新潟のお菓子屋さんの事例

新潟で老舗のお菓子屋を営む社長は、催事に出るときも「極力お金をかけない」方針でした。
マネキンも雇わず、いつも自分ひとりで店頭に立ちます。最初の1回目、2回目はまったく成果が出ず、「本当に意味があるのか」と
思ったそうです。

ところが、3回目あたりから少しずつ変化が出ました。顔を覚えてくれたお客様が「また来たの?」と声をかけてくれるようになり、
常連が少しずつ増えていったのです。いまでは2か月に1回のペースで催事に出店し、安定した売上を確保できるようになっています。

この社長は「催事は種まき。焦らず続けることで芽が出て、固定客ができる」と実感したと言います。
短期の売上に一喜一憂せず、継続することで信頼が積み重なった好例です。

6. 催事前に確認しておきたい3つのこと

成功する会社は、出店前に次の3つを決めています。

目的:今回は何を覚えてもらうか?(商品名・ブランド名・社長の顔など)
導線:どうやって固定客につなげるか?(QR登録、通販誘導など)
指標:売上よりも「会話数」「登録数」「リピート率」を重視

この3つを決めるだけで、持ち物やPOP、スタッフの動き方まで迷いがなくなります。

7. 現場でできるちょっとした工夫

声かけの第一声は「いらっしゃいませ」ではなく「○○お好きですか?」で会話を始める。
試食は“一口で魅力が伝わる部分”を出す。
価格は下げるのではなく「登録特典」「次回クーポン」で魅力を伝える。
レジでは会計だけでなく「会員登録」や「次回案内」を意識する。
写真やお客様の声を許可を得て集め、後日のSNSやECで活用する。

こうした小さな工夫の積み重ねで、固定客へのつながりが大きく変わります。

8. 振り返りが次回の成否を決める

催事が終わったら24時間以内に必ず振り返りを残しましょう。来場者の傾向、よく聞かれた質問、反応が良かった言葉、
改良が必要なPOPや接客トーク。こうした記録は次回の改善に直結します。

9. 催事は未来への投資

食品会社の催事出店は、即効性の売上を稼ぐ場ではありません。目的は「認知度アップ」と「固定客の開拓」。
この視点を忘れなければ、催事は必ず会社の成長に寄与します。

短期の売上に振り回されず、長期のファンづくりに集中してください。催事は、そのための絶好のステージです。



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